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動画感想文

 (春先のブログ拝見して、二回連続で使われている曲を演奏会用のものと思い込んでしまい、余計なことを多く書いたと思うので、そこは削除しました。加筆修正あり。2022.10.01)
 もう動画から何ヶ月か経ってしまったので、練習の進み具合も随分変わっているだろうと思いますし、中途半端ですがここで終了にさせていただきますね…ごめんなさい。
 毎度のことですが、よく分からないままに実情に合わないことを書いていることがあるので、もし役に立ちそうなことがあったら拾う程度で、よろしく。

「合奏できるようになった」あと、もう一歩踏み込んで作り込むために

 曲を練習していく時に、気をつけたいこと。スタートは個々の「奏」から始まり、全体の「奏」へ、徐々に「演」の部分を作る順序になると思います。
 動画の状態、合奏ができるようになったところから、もう一歩踏み込んで作り込むのなら。

・リズムのサイズ感を考える
・ハーモニーの作り方を考える
・メロディの形をどう強めるかを考える

 このあたりを課題とすると、もっと足がかりが作れそうかな。

 音楽の三大要素については別記事で書いたけれど、人に聞かせることを目的の主とした時には、「生きたリズム、整えられたハーモニー、複層から突出したメロディ(リズム)ライン」を作ることを意識します。
 もし行き詰まり感が出た時に、この要素を意識して自分の曲をさらってみると、突破口が作れたり、するかもしれないししないかもしれない。
 特に、曲数の多い演奏会では、印象が強い方が評価が高くなる傾向があるので、曲の特徴を押さえること、差違の出し方を考えてみる。そして、強めに作るように。
(お客さんが学生邦楽に求めるもの=技術力ではなく爆発力。客受け=満足感につながるので、そこを外さない方がいい気がします)

 └ 拍に関して

メトロノーム使うと機械的な拍取りになるから、合奏に入ったらテンポ確認以外のときにに鳴らさないこと。
 
機械的な拍は、ノリ、動感や情感、豊かさとは真逆になるので。
 合奏中に鳴らしてそれに合わせる練習は、互いの繋がりや呼吸を読めないプレイヤーが育っちゃうから、対面の練習時間ではやっちゃいけないです。

 ノリ、動感や情感、豊かさを求める練習、といっても難しいかもしれない。どうやるのか?というと、自然に任せる。よく「歌え」、と言われますが、自分の声でハミングしてみた時の流れの作り方、強調の仕方、あれを楽器に反映させる努力をしてみましょう。(みぞおちあたりに手を当てて、腹筋がぐっと支える音、それをよく感じ取るようにする。楽器の音の並びにも同じような立体感が出るようになりますよ)

 そうすることで、メロディの自然なスライド感(加除加急)、拍の揺れ、息継ぎ、そういったものを取り込むことができ、より「明彩」感が出てくる。そして、ここがそのメンバーなりの曲の個性につながるので、育てたいところ。毎年やる曲でも少しずつ違って聞こえるのは、こういう部分も大きいかと思います。
(曲に対してあまりに速度が変わりすぎるとか、おかしくなっちゃった場合だけ、リーダーさんが止めてあげて下さいね。ほどよく、ですよ)

 └ リズムの「サイズ」

 曲はだいたい、静的な場面、動的な場面、とはっきり分けられています。その「~的」を作るのが、リズムであり、リズムの「サイズ」なのです。そこを見極めて、どのくらいのアクセントを置いた刻み(リズム)をつくるかを考えてみよう。

 たとえば「とんたんたん」と「ドン!カッカッ」。同じ楽器、同じ速さと拍子であったとしても、違ってくるのは分かると思いますが、これを作るのは、パワーよりも気迫ですかね…なので、気持ちを強く、音に出せるように頑張るというか…
 この「サイズ感の調節」、どこでどれくらいやるのか。どう使ったら印象操作ができるか。曲中での効果を考えてみると、いいと思います。
 特に、動感は、リズムで作る。これは特に伴奏側が大きな役目を果たします。リズムを担当しやすいパートは絃が多いかな。がんばって。

 └ ハーモニー、場面の「和音」感

 これは混声合唱をイメージしてもらうといいかもだけれど、別々のパートで出す音を組み合わせた時には「和音」を意識する。
 
滑らかさ、またはリズムのはね感など、場面で必要な物は変わってきますが、曲に要求されるそれらをどうそろえるか。(ここ、意外と意識できないので、聴き役の上級生は強めにチェックを入れて下さい)

 和音、特に意識するべきなのは伴奏パートです。異なる物の組み合わせを、どう整えるのか。

 音の整え方ですが、揃える場合、例えば「尺の音だけど三絃のようにパツパツと粒感を出す」とか、そういった工夫で、劇的に変わることがあります。
 合奏がなんかごちゃつく、というときに「音量を押さえて」という指示ではなく、形を整えるようにするといいこともあるので、何を変更するのか、いろいろ試そう。
 伴奏側を整えると、メロディが引き立つことが多いです。
 だからどんな場所でも「伴奏だし、まあこんなもんでいいだろう」って気を抜いた音を出さないように。パーツとして組み合わさった時の面白さと美しさを、背景として置けるように、がんばってみて。

 └ メロディ

 メロディラインの作り方。音、曲線状に紡ぐイメージをもっと強く持つと、表情が出せる気がします。

 例えば、声を張って歌う時の、音を伸ばす場合に出るわずかな膨張感(語尾部分で拍が自然に緩んだりする)、それを楽器でも出すようにしてみるとか。いろいろやってみると面白いから試してみよ。
 ミュージカルやオペラの歌い方を真似すると劇的になるよ、と私はよく言ってたんですが、「場面の華としてトップに何(どこ)をもってくるか」を意識する、「どんな歌い方でやると強く印象づけられるのか」を研究すると、場面変化がつけやすくなるかも、特に動的な場面。

 静的な場面でも、キレイめの抑揚のつけ方とか、もしかしたら参考になるかもなので、ジャンル違いのいろんなものを見てみるのはおすすめかな。私はバイオリンが好きだったけど、何でもいいと思います。他の人が練習の時に何を材料にしたかを聞き回ってみるのも面白いかもですね。

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☆ なだそうそう

 配置は、一二箏共におなじくらいの前後のズレ幅を作ると、バランスがいいと思います。今の形からだと、二箏の前を中央へ入れる。(ここは演奏会の舞台配置の位置取りが自分たちでやれるようになる練習だと思っといて)そうしてもらえると、二箏後ろの手が見えてよかったかな。
 礼は、倒すとき・上げるときで「いちにいさんし、いちにいさんし」と唱えるようにすると、頭を上げるタイミングが合いやすいので、事前にみんなで合わせてやっておくといいですよー

└ 合図の出し方

 合図は本当は、お客さんに分からない程度がよいです。理想はね。
なので、身体ごと振る大きな動作は、やめといた方がいい気がする。そして、あの柔らかい動きだと、どこが拍の位置なのかが分からない。つまり、どこが「(イチ、ニ、)サン、ハイ!」の、拍=「点」なのかが、伝わらないです。
 プロがやる動きは全然違うので、見て。今の時点で参考になるかどうか分からないけれども。

 「フッ、ハッ」って上記は書いてあるけど、もちろん柔らかい拍感で出たいときは「ふぅ、はっ」ってくらいでいいですよ。とにかく、点でとる、手拍子の感覚を身体で表すことをやってみよう。
 以下は上級生向けだけど、「カウントの雰囲気で音が変わる」のところを見ておいてほしいな。一応気をつけて使い分けをしてね。

└ 「ツ」と「ヲハ」の違いについて

 ここ、楽譜にバツやナナメ線引いてあるのは変更の意味なのかな?ヲハに変更したのであれば、べつにいいかなとは思うのですが、一応書いておきます。

 「ツ」は、細かいトリル「タララン」、たとえば「B♭CB♭」が「一音に聞こえる」ように、動作は押さえの手(*人差し指と中指だけの形です)で、右手で弾いた瞬間に、左手で箏柱のきわに近いところを一撃突くように、鋭く押して放します。深さとしては、見た目、ほぼ絃へは入らないです。
 (一撃突く=だからツキ、なんですね。この場合、真ん中の音が半音=Cまで全然上がらなくて可。聞こえ方は、どちらかといえばB♭の音が強く残ります。一回だけのユリに近い。
 *ユリはビブラート的な奏法ね、絃に触れてほんの軽く押し放しを繰り返して音の余韻をゆらゆらさせる)

 「ヲハ」は、ほぼ現状の弾き方です。「タラ(ラ)」、とフレーズとして聞こえるように奏でる方法。ヲハの場合は、Cがきちんと音になっているくらいは深く押す。

 どっちがより装飾的かと言えば、ツです(装飾音=サブ的な聞こえ方)。そこまで強調されないツの方が、左手の指は楽だったかもしれないな、とちょっと思ったりしました。ただ音の入れ方が揃うか、という点を重視したら、奏者が複数だと難しいのかな?
 なので、ここ、この曲ではどうするべきという話ではないです。奏法の違いについての解説でした。
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 一箏の二人のピッチカート、弾く手が右手・左手とたまに別れているのは、片方の人は指の皮が破れてて無理とか、そういう理由だと理解してもいいのだろうか。
 ここは本当に仕方ないことなのだけれど、できれば、動作の手を同じくした方が、同じ事を二人でやっていますと見る側に伝えられるので、より綺麗に聞こえるかな。と思います。
 視覚情報ってけっこう馬鹿にならないので、同じ音なら動作の揃っている方が評価されやすい。ってのは、舞台を前提にしたときには注意ですよ。
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└ 中指の入れ方。中指からフレーズが始まる時は特に注意

 爪、中指一音を弾くとき、上から絃を押さえつけるように弾いていることが多いので、この夏は中指の入れ方を覚えた方がよさそうかも。
あの入れ方だと、ほぼピアニシモの弱弱しか出せないのよな。最初は指の力がないから、あれが一番楽だとは思うけれど。

 とりあえず、中指で強音を出したいとき。まずは1.3の指遣いから始めますよ。ここは基礎の奏法(="型”の習得のための練習だと理解して下さいね)の教本にも入ってるはずだけれど、やり方分かってないと身につかないから、もしペタペタの指弾きしてたら、やり方を変えてみよう。
(①親指1スタートの振りと、②中指3スタートの振りと、2パターンあるので注意。中指スタートのときの形は特にマスターすべき。後述。)

 1.3の指遣い、親指側から見て手を「コ」形に開いて、指先までをコの形で固定して、親指が絃に向かって立つように手の向きを直して、絃の上へもっていきます。一の絃(中指)と五の絃(親指)とか、練習しやすい場所で試してみよう。
 そこで、前後に往復させて振るように使います。動作する関節はほぼヒジだけです。ヒジ下を一部品として、ロボットのように動かして、まずは原理を把握。手首などはそうクルクルグニャグニャとは動かさないです。

 指先と爪が安定していさえすれば、その振り動作だけで二音とも質のそろった、大きくて強くてまっすぐに飛ぶ音になる。そうならないときは、指のかかり方を調整して練習して下さい。
(絃って曲面に張られているので、水平に振ったら上手く爪がかからないとか、いろいろ微妙にあるので、最初は難しく感じるかもしれない。工夫してがんばって。)
 で、それを応用して、中指だけの一本で入れる振り込みの練習にしていくと、早いかも。

特に、「中指から始まるフレーズは多い」ので、ここは全員押さえておきたいコツ。
 なぜなら、一拍目には強めのアクセントがないと、フレーズが締まらない、ダラダラに聞こえてしまうのですね。これ聴く側は面白くないんです。

└ * アクセントがないと、何が良くないか。

 これ、例えば朗読で句読点「、」「。」をまったく声の表現に表さない機械的な発声に近いのです。

 人を楽しませる朗読、特に読み聞かせなどの時には、声の表現ってとても大事になると思うのですが、
「むかしむかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんが、すんでいました」
よりも、
むかーしかし、あるところに、おじいさんと、おばあさんが、んでいました。…」
って読まれる方が、聞く方は楽しいんです。
 これ、音楽も一緒。フレーズを一個ずつ並べていく、そこの処理を丁寧にやるために、一拍目と、一拍目ではなくてもフレーズの開始、頭をはっきりと出す。
 これ、細かい部分を上手にできるようになると、格段にレベルが違って聞こえるので、演奏会のためには気をつけてほしいな。
(伴奏も、美しい伴奏を添えるために、こういう方法は意識して使ってほしいです。)

 ヒジを使って楽をして弾く方法はけっこうあるので、というかヒジが使えないと指の力だけでは大変すぎるから、だんだんと肘(動力源)と肩(位置調整)、大きな関節を使えるように、上手な人の弾き方を観察して真似してみてね。(指先だけ見ないように注意です。)
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└ 休符の時の手の形は「つ」程度のひらきっぱ

 手を上げたときに、親指が閉じて(手が平面に戻る形)しまいがち。一々の動作へ移るときに、閉じた親指をもう一回開き直してから指を絃へおくので、自然とワンテンポ遅れてしまいます。
 今のテンポだと全然それで間に合っているので、そう必要とも思わないだろうちょっとしたことかと思うんですが。ここは、「手は開きっぱ」をクセづけるようにして。たぶん演奏会レベルの曲になったら手のパタパタがあるとしんどくなってくるはず。「コ」までいかなくていいので「つ」程度に親指はひらきっぱなしのままで。
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└ 成果発表についての余談(もしの話)

 (ここ、もしも、の仮定の話を書いたので、全然違っていたら飛ばして。)

 トレモロ、上手ですね。今の時期にしてはびっくりするくらい形になっている気がします。
 人によりトレモロをやる/やらないの選択があった理由は何かあるのかなと思って見ていたのですが。できるのであれば、チャレンジした方が良かったんじゃないかな。

成果発表って何のためか。というところかな?
 成果発表って、どれだけ練習したか、上手にできるようになったか、を披露する場所ではなくってよ。

 成果発表=より良くなる方法を聴者から引っ張り出せる場。もっとえぐい表現をすれば、成果(実になる経験値)を「てっとりばやく他人からごっそり獲るため」の会、なのですわ。笑
 そういう意味では、成果発表の場では「下手であるほどよい」んです。OBからがっつりフォロー入れてもらえるチャンス、ここではド下手ほどリターンが大きい。

 だから、もし、ですが、「いま上手にできないから、みんなの足を引っ張るから、やらない」としたのだったら、全く逆だったかもと思います。
*もし、の話ですよ、負傷中だとか理由が別にあってのことだったら、ここは飛ばしておいて。実情をよく分からないまま書いているので、ごめん。

 経験値をより多く獲得する、そのためには「やらない=ゼロ」を出すべきではない、と思います。たった「1」であっても、あえての仕掛けをしておけば、たまに100万がけの経験値を落とすレアモンがかかるときがありますからね。
 なので、「できない無理」ってときほど、そのまんまで出そう。これ重要。

(私の時は「ここ上手くできんけど、あとで教えてもらえばいいよね。成果発表はてきとーにやっとこ」って言ったりしてました。それくらいで構えておくのが気楽です。教わる予定で、現状報告レベルを出しちゃうの。そんな感じでいいと思います)
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☆ 遊郭

 多分本来はもっとテンポ指定からすると軽くてキビキビした曲なのかな、と思いつつ。
 だから、本来のテンポだったら曲にそぐわないことを以下で書いてるかもしれないけれど、現状に合わせての感想なので、ご容赦。もしこの曲を引き続きやるのなら、取捨選択をして下さいね。

└ 出だしの終わりについて

 余韻のない気のせいた場面遷移をしているのは、楽譜の解釈が不十分だからだと思います。

 まず、出だしの最後に「ゆるむ」の指定があるのは音として表現してもらわないと、分かりにくい。聴者は楽譜もないし、その余白を読むことができないので。
 箏は、アルペジオのうち爪を「五…七……、八、………」って感じに三音の速度を落とすと、よりゆったり感が出ます。今は、聴いた感触はさらりとしすぎて、場面の締めとしては、あまりよいように聞こえないです。もっと出していいですし、もっとしっかり弾いていいです。
 アルペジオの速度が速すぎるのは、一気に弾かないといけないという意識があるからかな。この場所では、「聴かせる」方がいいので、ゆっくりでいいです。
(ここデクレシェンドをつけられてるのは十七だけなのは注意、箏はアルペジオの音量は落とさなくていいし、むしろ十七が抑えた分、綺麗に響くように、とても注意してやるべき見せ場だと思います。)

 なので、箏はもっと聞こえる音にして弾いて、演出に凝るんだったら、少し内側(柱側)へ向けて五七八を位置をずらしつつ弾いて、八をぽーんと弾いて、ユリを足すと、より特別な質感が出ます。(微妙にクレシェンド気味でもいいと思う、真ん中上げて八だけ音量落とすとかもきれいかな)
 次へ期待を持たせるような雰囲気は、それで作れます。
(ぽーん、八だけ、手を浮かせて空中から親指を落とすようにぽんと軽く入れると、ぽんとした音が出ます。絃上の左右位置によっても音質って変わるから、いろいろやってみて)

 で、三絃。箏のゆるんだ拍にもっと合わせて、「てん、……てん………」と箏の音に余白のある影を落とすように、ゆーったり静かに入れる。
 構成的には、その1.5小節、十七が柔らかくフェードアウト、箏アルペジオからゆるんで三絃までの一続きでゆったりとした曲線を作る、という流れ。意識してきちんと一線にのせること、別々にやらないように。
 そこを楽譜から拾えると、演出的には的確に聴者の心を掴む演奏ができるようになるから、どこまでが一場面、ひとまとまりなのか?という部分の把握をがんばろ。
 場面展開を美しく。

└ フェルマータ


 フェルマータは「音の長さを適度に伸ばす延長記号」。

「フェルマータ fermata
音楽用語拍子運動の停止を意味する。「延長記号」とも呼ばれる。休止の長さは特に制限がなく,演奏者の解釈や,楽曲中の記号の付された場所によっても異なる。」

https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BF-123339

 その適切な長さってどれくらいでしょう。
 体感、楽譜上の表示の拍で、2倍から3倍は欲しい気がする。
 この場所のように、速度がゆるんでいる+場面の切れ目なら、三絃後の楽譜上の指定はフェルマータ、拍ひとつに納めてありますけど、そこ、間を含めてそのゆるんだ拍で4つ数えるくらいないと、「延長されている」のだと気づけないと思う。(後述 <フェルマータ=余白の美、欲望のフック> の項も参照して)

追記。
* 聴く側って、拍の変化には鈍感なのです。本当に、1/10程度しか伝わらない手法なので、これを用いる時には大変に注意すること。
 速度変化をもってして表現とする部分は、誰か聴き役の人を頼み、楽譜なしでその場において聴かせ、「分かる?このくらいなら分かる?」と訊きながら何パターンか試すようにすると、確かな境界線が分かってくるはずなので、やってみて下さい。

 で、ここがフェルマータっぽくないなと思うのは、長さに加えて、手の動きが全員早すぎるのが一因ですね。
 ここ、前回の感想文でも書いたのですが、伸ばす休符は「黒丸・二重丸」なのです。表現とは、音だけではなく目で見せるものでもあるので、フェルマータで延長された分を、弾き終わった手のままで拍数分を見せることを、忘れないように。

 弾き終わってそう長く留めずに、ささっと次の準備を始めてしまうのが、私の感じた「気がせいて見える、余韻と雰囲気に欠ける」と思わせてしまうもとだと思うので、演出まで考えるのであれば(もう夏なので、演奏会に向けてこういう部分を要求してもいいよね?)、細部には普段から気を配りましょう。
(三絃が入ったところで箏の黒丸休符が解除されてあるのは、意味があるんです。この辺でさり気なく次の準備をして、という作者からの配慮。だけど、ここでササッ!と動くと、動作で悪目立ちしてしまうから、本当にさりげなく手を下ろす感じで、左手は押さえの場所へ、右手もスタート位置へ、セッティングしましょう。
他パートはそう移動させずに弾けると思うのですが、ここも雰囲気を壊さないように、すっと。

 で、演奏の切り替わりは、他の二人のフェルマータが終了した手の動き(多分三絃の右手右腕あたりの緩み加減で分かると思う)を読んでから。ここの読みの瞬間だけでも、いい感じの間ができるはずなので、フェルマータをそこまで頑張らなくてもいいかもしれない。
 読んでから、ひと呼吸して次を一気にフォルテで弾く。そうすれば、ガラリと雰囲気を変えられると思う。

└ フォルティシモの出+親指上昇フレーズ

 場面変わっていきなりf、フォルティシモ。というのはよくあります。
 その場合、思い切りはもっともっとないと、fだと聴者が分からないし、差違でもって新鮮な驚きを与えられるくらいには、鮮やかにくっきりさせたい。
 特に、一人で先行するのにfだと示さねばならない場合は、演奏の総人数分をフォローしてあまりあるくらいは音量(感)が欲しいのですよね。パート人数が三人の場合は、かける3、300%以上の音量を出したいところ。
(この辺りは、合奏のパーセンテージの記事の「パートの入れ替わり」を参考にすると、音量の分担について意識がしやすいかも。記事は、全体曲、大合奏を前提にしてあるので文脈としてちょっと分かりにくいかもですが、要は「全体として欲しい音量のうちどれだけを出す意識を個々が持つべきか」、ということです↓
https://note.com/myoddsandends/n/nfa47381bf24a

 でもここ弾きにくいんですよね上昇の親指。薬指を絃へついて支えにしていると、親指・上昇フレーズのフォルテの音は出しにくいのです。どうしても爪の面で絃をぺちぺち叩きがちになる。

 でもここはコツがありまして。
 箏は親指を立てて、薬指を突かず重心を全部親指に移して、絃をつつくように弾きます。これの練習は、机に親指を立てて、手を浮かせたまま、トントントン!ってつっつくように叩いて音を出してみると、感覚が分かりやすいかも。

 このやり方は、速いテンポでの単音の連続で押せ押せのフォルテ、などの時には必須になるので、覚えておくといいです。けっこうよく使います。リズムを刻む十七絃とかはよくやるかな、楽なので便利。

*これに限らず、薬指を突いているとフォルテは出せないものなので、二年生以降は薬指をつく基本から早く脱却しましょう。ほぼ手を浮かせて弾くのは制御面では不安かもしれないけれど、自由度が大きく、表現に幅がぐっと広がります。薬指は手の位置決めの感覚くらいで、添えて使う程度です。
一年生はまだ手の使い方に慣れるまでは、やらなくてもいいですよ。

└ ヲハのコツ。押しのスピードと留め+柱と手の位置。

 P5 L3、箏の余韻のヲハヲハはきちんと「G・(A♭・G・A♭・G…)」と聞こえるように、明瞭に押したほうがいいですね。今はちょっと曖昧で音として違和感があるかな。
 進行のテンポに対して、押しの手の動作スピードがやや遅いのが原因かなと思います。テンポには乗ってはいるけれど。動画では、音が少し変化しているのはわかる、でも上げきったところで手が止まっていずに戻ってしまう状態になっていると思います。止まっていないせいで、押しで変化させたその目的の音が何なのかを示せていなくて、結果、あやふやになってしまっている。
 押さえ自体が浅く、音としても微妙に上げ切れていないのも、動作の改善で直せるはず。
 動作の改善としては、スパッと押し、一瞬留めて、スパッと完全に離す。音の移行はもう少しギザギザを意識。
 余韻に入れるヲハはどうしても柔らかく聞こえ、普通にやるとフニャフニャになりがちだから、奏者としては、出す音に若干のエッジを持たせるように意識するといいと思う。

(ここの「八(ヲハヲハ)」、押しの時の音の高さにこだわって欲しいのは、音として「ヲ=九(A♭)」が必要だからです。なぜかというと、その直前に「ヲ十  八 (ヲハヲハ)」と爪での音がはっきり存在しちゃうので、音が外れてしまうと、聞いてわかっちゃうんですよね。だからかなり気をつけるべきポイントかと)

 スパッとした動作、スピードを稼ぎたければ、もっと柱に近い位置を押すように、手の位置を変更して下さい。そっちの方が、深さを必要としないので、よりテンポの速いヲハの時は形になりやすいです(上下の移動距離が短くなる=タイムロスが削れる)。
 ただし絃を硬く感じられると思うし、押しに慣れていない場合、指は痛いかもです。その辺は自分なりのよい加減のところを探してみて。
(あまりに近いところを使うと、強く押した時に柱を倒すことがあるので、そこらへんも加減して下さい)

└ 中指3で作る音のあれこれ

 P7、箏のソロっぽい部分。
 今のように中指で絃を上から押さえるように弾くと、平面的な音になります。のっぺり、平べったく、味気のない音。あまり響かないので、この音の出し方はソロ向きではないと個人的には感じます。もっといい音出せるかな。

 方法としては、手を丸めて垂直に近いくらい爪を立てて、その形のまま固定して、手前に引っ張るようにすると、粒が丸めで開放感のある音になるので、弾き方を変えられるのならそっちが私はおすすめです。小さく弾いても、ぐっと華やかになります。
 この弾き方は、中指だけでは支えにくいから、両側の人差し指と薬指を挟んで添えて、三本で一本の指のように扱うと、安定するかも。人差し指の爪が絃に触らないように、少し中指だけが沈む感じで、他二本は少し上目から爪輪を押さえる感じ、かな?
 その形で、中指の爪は薬指側のへりで絃に触るように、ななめに当てます。接触面が小さいほど音の粒は小さく締まって、よく飛ぶ澄んだ音で鳴るからきれい。(もし音質として柔らかめがいいのなら、弾く位置でも調整がききます。いろいろ試してみて)

 で、そうやると、ここの初めのピッチカートの堅めの澄んだ音を、爪がうまく引き受けるようになって、場面のバラバラ感が少なくなりそうかな。
 爪の指定からテンポ変わるけど、一応両方が [8] のまとまりのうちなので、つながった雰囲気での異素材での変化を出すようにすると、ちぐはぐにはならずに持って行けると思います。
(ここ、後の場面で堅めの音質を使いたいのなら、逆に柔らかくした方が差違がつけられるのかな?曲の前後との関わりをみて、演出はいろいろ振り方を考えておきたいところですね)

ついでに。
★ 中指一本で上昇する音の作り方。 ★
 動作は、ヒジを後ろへ引くように意識して引っ張ると、音の間隔が安定します。手だけを引くように動かすと、ヒジが動作を吸収しつつ向きが微妙に歪むので、ヒジごとまっすぐに後ろへ引っ張りますよ。これけっこう隠れたポイント。
(同様に、親指一本で引き下ろすときも、ヒジごと真っ直ぐに押すと、音の間隔が安定します。)
 一~巾までの長い距離とか、上下を長く繰り返すとか、そういうときに楽だと思うので、これもコツとして覚えておいてほしい。

 続き。
 この短いフレーズをよりソロっぽくするのなら、最後の一音は、引っかけるように上に上げると、響きがすごく残って、より華やかで美しくなると思います。この弾き方の音質は、ピンと上げるとピンと鳴るし、ふわっとあげるとふわっとするから、タッチの違いを試して、自分の好みの音にして欲しいかな。
 フレーズが複雑ではない分、見せ方を工夫すると一気に変化が出て、楽しいかもと思います。

 └ 休符黒丸3つにフェルマータ。仕掛けとして使える部分は使おう!

 ソロっぽい部分の後、違和感があるので考えてみました。
 [8]、ソロっぽい中にもフェルマータはこれでもかと付いていますけれど、ラストのは特に特別に扱うべき。ここも楽譜の読み込みをもう少し頑張ってほしかった部分かな。

 Q.何拍伸ばすべきでしょうか?表記は、rit.あり、1音+休符が黒丸3つ+フェルマータです。

 A. rit.かけたそのままのテンポで、1音+黒丸3つ分=拍4つを数え、+αをフェルマータとして数拍加える(その間、弾いた手をキープしておく)。

 弾いた手をキープする、これがポイントです。
 だけど動画では、音で作ろうとしている情緒的な部分が、手を即移動させる動作一つで完全に消されてしまっている。聴者の視覚を利用して作る部分ですから、ここは意識して留めておこう。

 └ フェルマータ=余白の美。そして、欲望のフック。

 なぜそこ、場面の切り替わりに特にフェルマータを置かれてあるのかって。最初の方にも意味として解説を書いたけど、これを使う狙いは、明確にあります。

意図:
音が聴者に届いて、
②心の中に響き渡って、
③消えていく減衰感までを雰囲気として味合わせてやって、それから、
④生じた空白の中、目を覚まさせるようにして次を渡す、
この工程を用意するため。

 場面に登場したものがフェードアウトして消える、その時間こそが一番美しいの。美の本質とは、音自体ではないのです。余白こそが一番美しく、それがあるからこそ、音や曲を美しいと思わせられる。余白は飾りではないのだ!!(これはデザインにおける基本でもあります)

そして、その美しさが「ただひたすらに消えていく」からこそ、聴く側は「追いかけたくなる欲求を膨らませる」のです。
 
いいですか、そこで「待て」をかけて、欲求を縛る。ここがキモです。ドSでしょ、いいんですよ奏者はドSで。わざとお腹をすかさせるんです、お腹減った生き物って、次にはいわゆる「入れ食い」状態になりますから。ここが演出の主目的です、利用しない手はないですよ。
 だからフェルマータのある時には、即・動作を入れて、次を提示してはいけないのです。止まっておけ。獲物がかかるように。

 で、そこのフェルマータのその次が、この曲の場面の変わる部分で、f、フォルティシモでの開始。これは食いつきますよ。鮮やかです。
食いつかせる演出のためには、意図的な「引き」を用意する。
メリハリってよく言いますが、打算的に曲を作る、これができるようにこの曲は仕立てられている気がします。曲の仕掛けを余さず使っていこうね。

└ [14]六八九のフレーズトップ

 ここフォルテで弾くフレーズですが、フレーズのトップは九ですね。六が強いだけなので、凸凹感だけがあって、上昇フレーズに聞こえないのは形を変えたいところですね。ここも記事内「フォルティシモの出」にも書いた親指の使い方で改善しそうかな。
 手は浮かせたままで、六へ中指(にそろえた人差し指から薬指まで全部の形で)を振り込むように入れたら即、高音の方へ手の甲を傾けて八九を突っつくように弾く、と書いてわかるかな…薬指は最初からつかずに全部浮かせて弾く感じ?
 ここの場面、動きを作っているのは箏だけなんですよね、だからけっこう上昇感をだして盛り上げるの、大事だと思う。
 同様に、以下も同じく。

└ [15] 斗八十斗 の弾き遅れから考える、フレーズの分解方法(本来の目指してほしい音の形について)

 ここの箏、一応、楽譜指定の「3.2」の指遣いの方が速度対応しやすいはずなので、できればそうして欲しいな。ただ、指の力がないと弾ききれないとは思うので、指トレするか、弾き方を変えるかの二択ですね。
 一応楽譜には、指遣いは厳密な物ではないように書いてありますが。

 そもそも、なんでこの指遣いでの指定なのか。これ、意味があるんですよ。この指ですると、何がいいのか。説明します。

 ここ、実は箏が担当しているのは半分リズムなんです。メロディだけど。ノリがいいっていうのは、グルーヴともいうけれど、波のようなリズム感の繰り返しで効果をつける、それに上昇感とかを加えてある。
 そのリズムとして、絶対におもてに突出しないといけない音が、「斗」のみ、一拍目が正拍・あとから裏+裏ときて、という、たたみかけ方。たたみかける、突出させたい音だけ、強く出せる親指の指定がされてある。のです実は。
 そして、位置づけとして、3.2で持ってくる音は、複層の下位。それはそれで上昇音として聞こえるようには出したいところではありますが、あくまでサブです。

 動画のように3.1に変更して親指を入れてしまうと、「斗」は、一音だけの突出感を持たされない状態になってしまい、本来の音楽の形を指遣いによって崩してしまうことになっている、と思います。だから、指遣いにも少し注意をした方がいいなと。

 で、楽譜。そうやって作られた先を見ると、二小節目の後半、一小節目は後半「斗」が 裏 でリズム来てたのに、変わって 正拍 の「ヲ為、為」でめちゃくちゃ押せ押せで下りてくる。そこのリズムの反転も、たぶん意図的な作られ方をしてある感じ。裏でもってくる一小節目は、この強い下降、本フレーズ「ヲ為、為」のための、上昇繰り返しとリズムなのかと思います。

(リズム、フレーズの原形として、「たーん・たーん・んた!/(んたらら)たん!たん!」の形、この二小節目(んたらら)を一小節目へ展開して入れ込んであるから難しい構成になっている。曲がもっと難易度の低い構成なら、ここの展開部分はパート分けしているかもしれない、と思います。
 ここのリズムをもっと出すと、インパクトがあって聴き映えします。ここ動画ではわりと、動的な音の作りの割にすごく平面的に聞こえるんですが、それも改善できそう。伴奏もその動感を活かせれば、もっと華やかになるかな?)
 なのでここは本当はできれば、箏の指遣いは楽譜通り「3.2」が結果としては形になりやすいのでは…?と思います。弾きやすくはないとは思う!ごめんw

 (こんなふうに、「フレーズの形を分解する」=形を保てるギリギリのラインまで削るように考えると、作者の意図がそこで読めたりもする。ので、分解と分析はやっておくといいです。とりあえず理解の深度、深められる方法として、てっとりばやいのがこれ。と思う)

└ ラストのシメ感

フレーズの繰り返しで終わる場合、「とどめの一言」的な重さとインパクトを作りましょう。
 ラストは、熱狂感があって、思わず聴者が手を叩いちゃいそうになる、そんな引きずりこんだ雰囲気があるといいですね。
 実は、フレーズの繰り返しって、熱狂感を植え付けやすいのですよ。トンボ獲る時の古典的な方法として、トンボの大きな複眼の前で指をクルクルさせて目を回させる、というのがギャグのように言われますが、あれと一緒。くらくらさせるの。

 ここ、最後だけフレーズがバリエ変えてある。ここ、たった四音だけだけど、もっと押し出すと、終わり感が出せると思います。動画の状態だと、ちょっとなだれ込みすぎかも。
 箏は一音ずつ押し込むように、強アクセント気味に「お!わ!り!」ってやると、特別感が出せそう、三絃さんは強音難しいかもだけど、その雰囲気に合わせられるといいな。十七絃はラストの一音に、最低音「一」が入ってる。ここバルトーク並みに「バァン」ってやるとオチが付きやすいかもしれないな。

 楽譜を見ると、十七絃が一番変化があるので、ここはメインの役割がありそうに思います。そして、そこまでかなり使用音、高音部が多かったのに、最後に段々音が下がってくる。それだけの厚みと迫力を出したいという意図がある気がするのですよね。その意図を演出にいかせるといいな。
 で、最後の八に3,中指の指遣いがつけてあるのは、これもやはり、意図があると思います。
 1-3の指遣い「コ」の手の形、これにすることで八をかけて跳ね上げる奏法になります。これの意図は、左手ピッチカートと音質が揃うようにしたかったのでは、爪でもピッチカートに動作が近いので丸い音になります。
 華やかになると思う。(ごめん、自分の手で実際にやってみないとわからないから、出しにくいかもしれないな。けど、でも指遣い3の指定があるのは、作者のこだわりがそこにあるんだと思うので、音の違いを検証してみて。)

└ 役割の変化を、楽譜から読み解こう。

 この曲の動画では、十七絃さんが前半後半を単一的な調子でやり過ぎてるように思いました。
 前半の曲調と後半の曲調の差は、たぶん、リズムの作り方の変化で出せると思います。そのあたりは、楽譜を読解して、書かれた音を出す以上のことをできるとよかったかな、上級生だし。

 感じた部分を書くと、アクセントつけられる場所、リズム感をもっと意識的に出すのと、箏・三絃の頑張りを支える演出、波を合わせてあげるような感じで、抑揚をつけてあげてほしいなと。他のパートに勢いがあっても、十七絃だけ音が変わらないので、メインパートとの温度差がちょっとあるかな…。

 十七絃って、半分打楽器なので。司令塔として「行け!」ってケツ叩いて勢いつけるような、強い一音もあっていいと思います。
 例えば[9]の、出だしのワンパン。後半、けっこう動的な構成になる気がするけど、その「ここから後半です!雰囲気変わりますよ!」の提示としてとても弱いですね。ここ一音だけはアクセント強くつけて、強めにバンと出すと、インパクトが出せそう。あとはそう出さなくてもいいけど、一応後半のスタートで、さらに f の出だしだから、もっともっと派手でいいかと。
 ここ箏の中指スタートなので、 f の提示が難しいはず。
 …という感じに、他の人のパートの内容まで楽譜を広く読んで、行き届いたサポートができるといいですね。

 [12]、メインパートなのに聞こえづらいのは何でだろう、薬指付いてるからかな。
 十七絃は基本指付かない方がいい音で鳴るので、手を浮かせてみるといいのでは。(薬指を突いていると、手のひらの開閉と指の関節のみを使うので、そう大きな音では鳴りません。あと薬指に力が入っているから、使った力が100%で音にのらないので、必然的に弱くなる)
 薬指へ寄せる=引き寄せる形よりも、親指を手首から押し込む方が、力が楽でアクセントをのせやすい強さと、音の芯をはっきり作れる気がする。ここは、親指に全部のせて、ひじの動きで手首と親指を押して入れるように、個人練習を。
 それができれば、強音の叩き込みができて、もっと厚みと迫力、きっぱり感も出せそう。

 この曲は十七絃、他の曲に比べて、やりやすい曲ではないと思います。
 高音部での演奏が多いのがこの曲の特徴、つまり、十七絃の魅力である低音の迫力が使えない構成なので、とても難しい。そして、ドスのきかない分、芯があってきっぱりキレのある音をこの曲は要求していそう。
 そこをどう攻略するか。アクセントなどはそのフォロー的に、意識して強めに入れるいとか、細かな技術が必要になりそうです。

----ここまで加筆修正済み(2022.10.01)

エピタフ

 エピタフって何…と思って調べてみました。

エピタフ(epitaph)とは墓碑銘を意味する語である。語源はギリシャ語で「墓の上に」を意味するエピタピオス(ἐπιτάφιος)から。 死者の生前の功績をたたえて墓石に刻まれ、古よりの形式をとっている。優れた詩人は生前に自分のエピタフを詠んでいることもある。
古代エジプト紀元前3千年紀)からある風習である[1][2]

引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/エピタフ

 墓碑銘、もしくは辞世の句ともいえるのか。詩、とあるので、雰囲気はありそう。別離、悲嘆、残されるものへの思いやり、色々想像できそうです。どんな部分をクローズアップするか、で、音の出し方も変わる難しい曲ですね。

 音の出し方、箏は三絃と合わせる時/尺と合わせる時で、音質を微妙に調整した方が、「聴いてて合ってるように感じる」という馴染んだ雰囲気をつくれると思う。尺も三絃と合わせる時など、場面展開も含めてですが、微妙に調整すると、ずっとふわふわしっぱなし、という状態を変えられるかも。

 楽譜を見てない状態で書いてしまうけれど、箏について。
1パート内に複層(主役と装飾音or伴奏的なサブ)が存在することを意識して、どの部分をどう弾き分けるか?を考えると、もっと立体的になります。
 メインフレーズと伴奏が入り交じる時、全部同じ音で出してしまって、時々意味が無いことになってたりする。
 例えば、以前にピッチカートと爪との組み合わせの時には、「手を一直線上において同じ線上を使う」と書いたのを覚えていてくれたのだな、と思ったのですが、それは「同じ役割をする音が均質に欲しい時には」そうする、それは正しいです。でも、今回私が言いたいのは逆で、「メインフレーズと伴奏、違う役割が入ってくる時は、メインをハッキリ出したいから、そこだけ変える(爪なら少し外側へ戻す)」という、応用的な使い方です。メインがピッチカートで入ってくるなら、音をよく通るようにタッチを変える。
 今は全体的に内側のふわふわした感じで音を作っていると思う、これは悪くはないけれど、押し出しが弱すぎるな。ここ一辺倒では、同じ味付けのメニューがずっと続くようで、すぐ飽きちゃう。他のパートもそうですけれど。たまに食感の違うものがあると食べるのが楽しい。そんな感じに組み立ててみて。

 ふわふわ感についてもう少し書くと。
 曲というものはメロディ+伴奏の二層になって聞こえる、その組み合った感じがいいので、演奏がどっちつかずのあやふやな状態になっていると、曲の描きたい風景が伝わらないぼんやりしたものになってしまうよ。もちろん、場面として意図的にメロディを消して客を煙に巻くとかならいいですけれど、そういう意図が曲に特にない場合は、わかりやすくするのがいいでしょう。(←この一文、意図が曲にない、がポイントね、意図=奏者側の解釈演出ではなく。過去に何かでそう言い張られて難渋した記憶があるからつけておくだけだけどもw)
 特に演奏会だと「お客さんは初見で初聴」が前提、そして他のインパクト強い曲に挟まれたら、エピタフの柔らかさは「なんか綺麗げだったけどよく覚えてないわ」ってことになりかねない。ここは曲順にもよる。
 なので、まず①メロディラインだけを見て、「どうつなぎ合っていくのか」を楽譜上で線・丸をつけてパートをつなぎ、②そこを「どうサポートするのか」、伴奏を音同士でどう組み合わせていくか、を曲のみんなで考えると、より距離の近よせた・または遠ざけた・音作りができるようになると思います。

 └ 出だし、4/4→3/4→4/4→… の、拍子の違いをきちんと出す

 ここ、4拍子と3拍子を行ったり来たりする、その区切りと差違とを気をつけて、明確にリズムの取り方を変えて下さい。特に三拍子、リズムで区切る意識がないと、聞いている方へは拍子の変化についてはその差違がわかりません。ここらへん、楽譜通りに普通に一連を弾いたら何となくでもわかるでしょ、ってなっている状態は、少し傲慢ではないかしら。と思います。

 拍子の変化は伴奏側が特に気をつけて付加するべきです。
 3/4になったら、三拍子の一小節分を「たーん・(たん)」って、大・小をきっちりつける。優しい音でであっても、三拍子の形式は崩さないように。
(そして、ここは二人で一つの音を作る構成です。箏三絃がぴったりとするように、三音構成の和音の内容、音のバランスにも気をつける。動画だと、最初の出だし二つほど、箏が音として聞こえないのは少し小さすぎるようだし、その後も、音質が揃っていた方がもしかしたら綺麗に聞こえるかもしれない。箏がやんわりしすぎなのかも?と思ったりしました。静かに美しい音でやってもいいのでは)
 この拍「たーん・(たん)」の取り方は、三拍子の間はずっと統一して一貫させて下さい。小節頭の一拍目に柔らかめのアクセントを置く形。そうすれば、4/4になってそのルールを逸脱したときに、「あれ?今面白いことになってる?」って勝手に聴者が気がついてくれるはずなので。
 変化って、「正統」⇄「逸脱」、このギャップでも出せるので、どこから何処までがどう(何)なのかを、きちんと見せるといいと思います。
 楽譜、行頭意外は二重線で区切ってある、作曲者的にはパッキリ分けてほしい表示かもですよ。

 (で、これは私の主観なんですが、三拍子って、どちらかというと動感のある拍子なんですよね。ワルツ。
 ワルツの拍子で冒頭のメインモチーフが展開されるのは、何を意味するんだろうな?って考えると、優しい靄のうちで繰り広げられる走馬燈のイメージが湧きました。ワルツはくるくると回りながら移動していく舞踏なので、激しくはなく穏やかではあるけれど、どこかへどうしようもなく運ばれていくような、そんな感触。もっともこれは解釈によるので、なんとも言い難い部分ですが。
 で、ワルツって舞踏なのですが、一拍目、足を出して踏みしめる、そこから流れて、くるり、という感じみたいで。つまり、一拍目が微妙に長い、二拍目以降で詰め気味に回収、「ずん…チャッチャ」というのが「ぽい」らしいですよ。つまり、一拍目にちょっとタメが入る。つまり少しのバウンドだったり重さだったりが入る感じっぽい。これを取り込むなら、少しの滞空感がメロディに生まれそうです。
 それはおいておいても、三拍子、もっと三拍子らしくやってもいい気がするな。と思います。)

 で、もう一度4拍子に戻ってくる、この部分も、少し変化をつけるべき部分。楽譜上は、アクセントが付いているだけの演出なので、奏者側がどうやっていいかが分からないんだろうなと思います。でももっと変化が欲しいなぁ。
 というのも、同じフレーズがフェイク気味にそのまえに入っているんですよね。そことは「似てるけど違いますよ」って出さないと、「…え…なに…同じ形でしょ気持ち悪いな」って困惑されてしまう。w
 [3]直前の「七(九)六(九)五(九)/四…」の三拍子と、[4]直前の「七(九)六(九)五(九)四(九)/二…」の四拍子の展開、ここは多少しっかりめに弾き分けたいですね。さらりとやり過ぎるのは危険。
 ここは、四拍子の方も同じに弾いて+末尾三音だけがっちり強調するか(難易度高)、それとも頭から弾き方を変えちゃうか、または途中で音量変化入れたりして強調度を変えるか、色々あります。さて何が一番美味しいかな。
 繰り返しの隙間って、サンドイッチでゆうたら「具材」なんですよ、ぜひはみ出ないようにしつつも美味しくしたいところ。

 ([4]前の三小節くらいについて。
 ここ、聴者へわかりやすく「わからせ」るんだったら。
 たとえばの方法ですが、なんだかテンポアップしている今の動画と逆にして、4/4直前の下りてくる四音のところでゆるくrit.かけ(終わり感を演出)、4/4以降にアクセント付いてる中で、爪一音目にアクセント+タメを最初だけにいれてもったいぶって、4拍目「四」に強アクセント気味に落として、ってソロみたいな雰囲気に弾いた方が華やかかも。そのあと三絃さんがタメを入れつつさらりと回収してrit.し、次の繰り返しに入る…かな。あともっとやるんだったら、音の粒感を、4/4入ったところから、わずかに三絃(ピンとした音)側へ寄せて、より変わった感を出してもいいのかも。二小節間での三絃との一体感も出せそうかな…まぁこれも私がやるのならこう考えるなって感じな奴ですけれど。)

 今の状態だと、三絃さんのrit.気味に弾いている末尾部分だけがちょっとトロリとした感じで浮いてしまっているんで、そこ妙に気になります。
 なので、箏、楽譜上はアクセントだけの指定ですが、ここのもう一工夫を色々チャレンジしてみて下さい。
 

 └ 弾く位置と、ピッチカートを綺麗に鳴らす方法について

 箏、弾く位置がちょっと内寄り(柱に近い)方へ寄せすぎて、高音ほど響かないですね。もしや絃の中点を過ぎているのでは?

 低い方からまっすぐタテ一直線で使って同じ音質を維持するのは、楽器の構造的に無理があるので、中点から右~やや右をキープするには高音に行くにつれ右へ寄ってくる、斜めのライン取りになると思います。ここを外すと鳴らなくなるから、よく鳴る位置を探して使いましょうね。

 特に、ピッチカートの位置。よく響く場所を外している気がする。十以上の絃が綺麗に鳴らないのはそこじゃないかしらん。[10]とか。

 で、もっと綺麗に響かせたいのなら、かける指の量を今の半分くらいに減らしてみようか。
 かけるのは指先1㎜、これくらいの意識で、堅めにピンと瞬間的に弾く。スピードも大事です。絃にもっさり触れないように注意。絃へ触って・力入れてかけて・引きあげる、という三段階を一瞬でピンってやる。
 これ、気をつけてても、二音以上の和音の時ほど指入れるのが深くなりがちなので、指先でもしっかり掴めるように、たくさん練習して下さい。
 この量と取り方の調整で、メロディとして聴衆の心情へ刺さるような立ち加減のいい美しい音と、伴奏など調和を主とした柔らかい音と、差のある音作りができるようになると思います。
(方向で例えると、メロディとして作るなら音がまっすぐ前に飛ぶ、伴奏は横方向へ飛ぶ、そういう感じの音の差ができるかな)

└ 尺のメロディラインの作り方(尺以外にも)

 尺、半音上げのときにピッチが下がり気味になることけっこう多いのですが、フレーズのトップに来るときは目立ってしまうから注意。
 で、フレーズのトップの作り方にも、ちょっと注意かもしれない。

 「折り紙の折り線を、角を合わせてきちんと折るように」って言ったことがあるのですが、フレーズの角が丸いので、音質の柔らかさにプラスして形の曖昧さが加わり、なんか変に聞こえてしまう。やりすぎ柔らか感というよりは、いい加減な感じがしてしまうのは勿体ないな。

 最初の方、ちょいアゲで下りてくるフレーズの「A♭C A♭ A G F E ~」(であってるだろうか)って場所を例にしてみる。

 フレーズの綺麗な作り方については、

フレーズのトップ(最高音)、ここを一番クリアに聴かせる
② フレーズ、上下があるときは、上/下 の境目を分ける感じに
③ 上・(頂点)・下、ここへ表現の演出をつける時は、加急加除、頂点の押しor引き(ポジティブ感情orネガティブ感情)、音量的加除、その他を意識して使い分ける

 このくらいが考えられるかなと思います。
 (やりがちなのが、初心者さんは③のみを重視することが多いのですけど、基本的には形を整えてから装飾を入れるので、③は後回しです。)

 で。「A♭C A♭ A G F E ~」のところは、①トップ「C」、②「A♭C/ A♭ A G F E ~」?、③ 頂点「C」をどう扱うのか、がポイントなのかも。
 動画の状態だと、あんまりここの「C」に重きを置いていない感じするけど、この一音の扱い一つで与える印象が全然変わってきちゃうから、大事にしてね。w
 一音目にアクセント、二音目が頂点、そこからきれいに下りる。なだらかに滑らかにするのは、下りる部分だけでも十分伝わるのでは。

 他のパートもそうだし、たぶん他の曲もそうだと思う、フレーズの形の取り方をもっと意識すると、音楽の形がより綺麗に見えるので、より良く聞こえるはず。と思います。

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まだ視聴が途中なのでかけてないよ~

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