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【取材記事】森の中からリモートワーク。身近に自然を感じながら暮らしを営む場所。多くの人に「自然の中にあるもう一つの家」を届けたい

セカンドホーム・サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」を運営する株式会社Sanu。2022年3月4日には、「SANU 2nd Home - 山中湖 1st」を開業し、「自然の中にあるもう一つの家」を順調に増やしています。
CEOの福島さんに、mySDGの小林が事業の沿革、事業を展開する上での課題や展望について聞きました。

プロフィール

株式会社Sanu CEO 福島弦(ふくしま げん)様
2010年McKinsey & Company入社。日本、アジア、北米、中東にて、グローバル企業の戦略立案、政府関連プロジェクト、特にクリーンエネルギー事業に従事。
2015年、プロラグビーチーム「Sunwolves」創業メンバーを経て、ラグビーワールドカップ2019日本大会の運営に参画。
2017年 株式会社 Backpackers’ Japanに非常勤役員として、事業戦略立案を担当。
北海道札幌市出身。雪山で育ち、スキーとラグビーを愛する。


株式会社bajji 代表取締役CEO 小林 慎和(こばやし のりたか)
ビジネス・ブレークスルー大学教授 大阪大学大学院卒。
野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に海外進出支援を数多く経験。2011年グリー株式会社に入社。
同社にて2年間、海外展開やM&Aを担当。海外拠点の立ち上げに関わり、シンガポールへの赴任も経験。
その後、シンガポールにて起業。以来国内外で複数の企業を創業しイグジットも2回経験。
株式会社bajjiを2019年に創業し現在に至る。
Google play ベストオブ2020大賞受賞。著書に『人類2.0アフターコロナの生き方』など。



■都会の中で忙しく働いている中で、生まれ育ってきた自然に思いを馳せ、二拠点生活の場所を創造

小林:まずは、SANUさんについて、創業のきっかけをお聞かせください。

福島さん:創業のきっかけには、私のルーツが大きく影響していると思います。私は北海道の岩見沢というところで生まれ育ったのですが、ずっと小さい頃は自然の中で育ちました。20代前半に東京で働き始めてからは、都会の高層ビルに囲まれたなかで過ごし、自然に触れ合うよりも飲みの席が社交の場となっていることに気づき、自然との接点を増やしたいなという思いが芽生えてきました。
共同創業者の本間は福島の会津若松出身で、同じく自然に囲まれた中で育っています。そんな二人で議論するなかで、人が自然と触れ合うための場づくりが必要なのではないかと考え始めたのが、きっかけです。

小林:なるほど、その気持ちはすごくわかります。私も東京、ニューヨーク、シンガポールと都会ばかり移り住む中で、日本に帰国してきた際に、田舎がいいなと、現在はつくばの田舎に住んでいます。
人が自然と触れ合うための場づくりが必要というところで、なぜセカンドホームのサブスクリプションサービスなのでしょうか?

福島さん:通常の旅の場合、例えば旅館にいけば、当然ながらチェックインとチェックアウトがあり、ある意味時間に縛られるところがありますよね。また、最近では、グランピングのように、美味しい料理を提供してくれてキャンピング用品を持たなくとも気軽に自然の中での時間を楽しむ場所も増えてきましたが、
もちろん、旅館やグランピングも素晴らしいとは思うのですが、もっと、時間に縛られず、自然の中で「暮らしを営む」ということができる場所が必要なのではないかと思い、セカンドホーム・サブスクリプションというモデルに至っています。

小林:自然の中で時間を忘れるというのは非常に重要ですね。実は私もキャンパーなので、その実感が湧きます。この事業を興されたことは、コロナも大きな影響があったんでしょうか?

福島さん:コロナはもちろん大きな影響はありましたが、それがきっかけ、というわけではありません。やはり、自然の中で過ごすことができる場所を作る、それが先にありました。でも、コロナによってリモートワークが当たり前になり、SANU CABIN(サヌ・キャビン)から森や山中湖を眺めたりコーヒーを淹れたりしながらビデオ会議に参加する。そんなワークスタイルも非常に良いと思っています。なので、コロナによるリモート社会への変化は大きな追い風になっていると言えますね。

■月額5.5万円のサブスクにすでに2000名以上がウェイティングしている状態。事業を急拡大してきた秘訣とは?

小林:SANU 2nd Homeの利用料金は月額55,000円(税込)ということですが、55,000円で追加費用なく泊まれるということでしょうか?

福島さん:基本料金は月額55,000円なのですが、土日や祝日には5,500円の追加費用をいただいています。また、利用が終わる日に清掃に入るのですが、その清掃代も別途いただく形になります。

小林:すでに白樺湖、山中湖など複数の拠点で展開されているわけですが、それらの場所のキャビンの数も限られているかと思います。そこでサブスクリプションモデルなわけですが、会員人数の上限値はあるのでしょうか?

福島さん:そうですね。実は現在(2022年5月)は、会員枠はすでに満席の状態とさせて頂いております。やはり、せっかく会員になったのにほとんど使えないのでは、お客様へのサービス提供としては心苦しいので。現在、2000名以上の方が「ウェイティング登録」をしてお待ちいただいています。

小林:それほど多くの方が待っているとは、やはり大きなニーズがあるということですね。創業から2年半ほどで、矢継ぎ早に、凄まじいスピードでの展開だと感じるのですが、何か秘訣のようなものはあるのでしょうか?

福島さん:ありがとうございます。そうですね。弊社のアプローチとしては、セカンドホームを使いたい人の声をまず集めることを大事にしています。一定のコストはかかっても、自然の中で過ごす時間を大事にしたいと思うお客様がどれくらいいるのか。それを集めることから始め、その結果、資金調達をさせていただき、拠点数を増やしてきています。

小林:なるほど。その結果、2000名以上のウェイティング登録者がいらっしゃるということはやはり大きなニーズを感じます。そんな順風満帆な事業展開をされておられる中かと思いますが、現在の課題などはあるのでしょうか?

福島さん:そうですね。私たちの事業はリアルな場所作りです。サービスに適した土地を探しSANU CABINを建築するプロセスには、相当の時間が必要です。
また、どこでもいいから森を切り開きキャビンを建築するのではなく、地元の方々に受け入れていただくことも非常に重要です。さらには建築したSANU CABINも10年、20年という短期間ではなく、メンテナンスしながら50年以上サステナブルに使い続けたいですね。
現在、多くの方に待っていただいている状態なので、できる限り展開のスピードを早めたい思いもありますが、各地の地元の方々とコミュニケーションをしながら、そして、森を自然な状態で維持しながら開発を行うバランスの取り方が課題だと感じています。

■夏休みを自然の中で過ごす北欧のサマーハウスのような場所を日本に増やしたい

小林:話を伺っていて、私自身会員になりたくなってきたのですが、事業のスケールを考えた時、いまの日本において自然の中に二拠点目を持ちたい母集団はどのくらいいるとお考えですか?

福島さん:私たちが参考にしているのは、北欧スウェーデンのサマーハウスです。大学4年生の時に留学していた経験があるのですが、スウェーデンでは夏休みを家族とサマーハウスで過ごすことが一般的です。調べたところ、15%の家庭が、森の中にセカンドホームを持っているのです。子供が小さい頃は、夏休みの間中、その森の中のログハウスで生活するという家庭が多くいます。サマーハウスを持っていない家庭も、友達のサマーハウスに滞在して過ごすということもよくある風景です。

日本で15%はさすがに大きい数字ですが、母集団の最大値はそのぐらいのボリュームがあると思っています。また、現在日本で別荘を持っている方はわずか0.6%ほどで、ほとんどが富裕層の方です。なので、平均で300m2くらいある大きい別荘ばかりの状況です。

スウェーデンのサマーハウスは50~60m2と割と小ぶりの家が多く、自然と共に過ごすことが重視されています。日本でも3%、100万世帯くらいがポテンシャルターゲットになるのではないかと考えています。

また、別荘をお持ちの方でも実際にそこで過ごすのは1年間のうち1ヶ月ほど、という方が多いんです。せっかく森の中に拠点を作ったのであれば、最大限その自然に親しんでほしいですよね。そのため、サブスクモデルにより共同利用という形がマッチしていると考えています。

小林:SDGsの目標という文脈で、今後の事業展開、目標はありますか?

福島さん:そうですね。私たちの事業は、リジェネラティブ・ツーリズム(Regenerative tourism:再生型の観光)であるべきだと考えています。つまり、SANU CABINを100から1000へと増やすほどにいたずらに森を切り開いてしまうというわけではなく、増やすほどに自然を再生する事業でありたい、ということです。

例えば、SANU CABINに使っている木材は、樹齢50〜80年くらいの国産の杉をメインとしています。なぜ50年以上かと言いますと、二酸化炭素を多く吸収するのは樹齢10年から20年の若い木で、50年以上の成熟した木になってくると徐々に二酸化炭素の吸収量が少なくなります。

そのため、50年以上の木材だけを使いキャビンを建て、その分の植樹をしていきます。そうすることで、森全体での二酸化炭素吸収量を高めるサイクルを生み出そうとしています。

小林:私たち人間が自然の中で過ごすことができる場所が増える度に、森が若返っていく。素晴らしいサイクルですね。最後に気になっていたのですが、社名のSANUとはどういう意味なのでしょうか?

福島さん:SANUはサンスクリッド語で「太陽、山の頂、思慮深い人」という意味合いがあります。私たちは、太陽であろう、ということを大事にしています。人と自然が調和する場所を照らす、それを応援する存在であろうという意味を込めています。

小林:なるほど。素晴らしい社名の由来ですね。今日はどうもありがとうございました。

〈mySDG記事〉
https://www.mysdg.info/top/104


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