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『火車』宮部みゆきの傑作!あらすじと読書感想文を書いてみた

宮部みゆきさんの作品『火車』この物語を読み終えて、放心状態になりました。

やっと犯人を追い詰めて、これから面白くなってくる…と思ったんですけど、不完全燃焼。

もちろん、そんな気持ちがあったのは確かです。しかし、そんな単純な理由で放心状態になったわけではありません。
物語の中盤くらいから、犯人は確定的になりました。ところがそこから犯人不在の展開に…

犯人は分かっているのに、犯人の所在が分からない。そんな展開に違和感を覚え、ラストは読者の想像に任せる感じ。
なぜ放心状態になったのか自分でもよく分かりませんが、逮捕後の展開を考えていたのかもしれません。

いや、何も考えられない状態に陥っていたのかも…

いずれにしても、完全に宮部ワールドにハマってしまったことだけは確かです。

ここから読書感想文を書くのですが、その前にあらすじと登場人物を掲載しておきます。

□あらすじ

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。

Amazon商品ページより出典

□登場人物

本間俊介:捜査一課刑事(休職中)
本間智:俊介の息子
本間千鶴子:俊介の妻、故人
栗坂和也:千鶴子のいとこの息子、銀行員
碇貞夫:俊介の同僚
関根彰子:和也の婚約者、失踪中
本多保:彰子の幼なじみ
本多郁美:保の妻
関根淑子:彰子の母、故人
溝口悟郎:弁護士
片瀬秀樹:ローズライン管理課課長補佐
新城喬子:ローズライン元社員
須藤薫:喬子の友人
木村こずえ:フリーター
倉田康司:喬子の別れた夫


「火車」と「火の車」

さっそくガッツリ書いていきたいところですが、タイトルである『火車』について説明しておきます。

『火車』の本編で『拾玉集(しゅうぎょくしゅう)』という和歌集の中から

「火車の、今日は我が門を、遣り過ぎて、哀れ何処へ、巡りゆくらむ」

という和歌が出てきます。

「火車」とは妖怪のことです。

しかし「火車」には2種類の妖怪が存在していて…

「火車」と「火の車」

このうちどちらが『火車』のタイトルに使われているんでしょうか?

「火車」=猫の妖怪
「火の車」=炎に包まれた車を引いた妖怪

どう考えても「火の車」が『火車』のタイトルに引用されていると思います。

地獄に連れていく「火の車」を引く妖怪…
やはり『火車』は、とてつもなく怖いミステリーです。

失踪したのは関根彰子ではない女性だった

『火車』の物語が進むにつれて、本間俊介が探している失踪した女性は…

関根彰子(しょうこ)ではないことが分かってきます。

ですが、ここで本当に失踪した女性の名前を書いてしまうとネタバレになってしまいます。
古いミステリーなので、書いても問題ないと思いますが、あえて名前は書きません。(すでに書いている登場人物の中にいます)

本間俊介は徐々に失踪した女性に近づきますが、なかなか本人に出会うことができない。
ハッキリ言って犯人は分かった状態。犯人捜しよりも犯罪に至った過程の方がメインの物語です。

普通の人間が、どうやって借金地獄にハマるか

『火車』は犯人を捜すミステリーではなく、トリックを暴くミステリーでもないと思います。

そうではなく、犯人がどのように犯罪に至ったか。普通の人間が、どうやって借金地獄にハマっていくか。
そして借金地獄にハマった人だけが悪いのではなく、誰でもそうなる可能性があることを訴えている作品です。

無担保、無保証人で簡単に借金ができてしまう。そんなカードキャッシングの怖さが書かれています。

なぜ犯罪に至ったのか?犯人不在のミステリー

『火車』の犯人は、なぜ犯罪に至ったのか?

父親の借金で一家は夜逃げ。母親は薬物に溺れ、若くして亡くなっています。
犯人も、取り立て業者により売春を強要されました。

そんな中、とある御曹司と結婚することで本籍地が変わり、取り立て業者から逃れることに成功します。
しかし長くは続かず、取り立て業者に見つかり離婚。

まさに地獄のような人生を送ってきました。

『火車』は、途中から犯人の地獄の人生が書き綴られます。しかし、現在の犯人が物語に登場することはありません。
犯人不在のミステリーで、ようやくラストになって犯人が現れます。

そして、その後の展開は読者が想像するしかありません。
でも『火車』の主題は犯人捜しではなく、犯人が犯罪に至った過程ですので、最高の終わり方じゃないでしょうか?

まとめ

今回は『火車』の読書感想文を書きました。

宮部みゆきさんの傑作ですし、佐々木希さんが出演したドラマを見たことがあったので、いつかは原作を読んでみたいと思っていたんです。

原作を読んでみて、放心状態になりました。

犯人捜しよりも、犯罪に至った過程を主題にする犯人不在のミステリー。個人的には最高だと思います。(賛否両論あるでしょうけど…)

『火車』をきっかけにして、宮部みゆきさんの作品を読む機会が増えそうです。いまさら何を言っているのかって感じですが、宮部みゆきさんの作品をあまりを読んでこなかったので…

これからはガンガン読んで行きたいと思っています。

最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。

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