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タロット鑑定士のMystiquecapraです。 父の遺品整理をしている中で見つけた古…

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タロット鑑定士のMystiquecapraです。 父の遺品整理をしている中で見つけた古い写真や戸籍謄本などから、ご先祖様の人生に大変興味を持つようになりました。 現在、時間を見つけては彼らの歴史を手探り中です。

マガジン

  • レトロ

    ご先祖様の歴史を調査中

  • 香港

    香港を舞台にした恋愛小説です。1-48話 完結。

  • ショートストーリー

    様々な都市や場所から得たインスピレーションを中心に、ショートストーリーを書いています。皆様の想像力で、頭の中でどんどん物語が膨らんでいってくれたら嬉しいです。

最近の記事

香港 #48

まもなくしてスタッフのスマートフォンに連絡が入り、私はブーケを手渡された。 今日は特別な場所での撮影になると説明され、連れて行かれたのはホテル内にあるチャペルの入り口だった。するとどこから現れたのか、アンディがカメラも持たず、凛々しいタキシード姿で私の右横にすっと立った。 私は全く状況が飲み込めていなかった。 「アンディ、カメラは?撮影は?」 「愛してる、優亜。これから僕たちの結婚式をあげよう」 彼の言葉が済むのと同時に木の重厚そうなドアが開けられた。 パイプオルガンの音色が

    • 香港 #47

      翌日、七人全員で集まり食事会を行うことになった。 急な話だったので、場所はアンディが日本で撮影する時にいつも利用しているホテルでという事になった。 アンディが、私の写真をまた撮りたいから、約束の時間より二時間ほど早く来てと言ったので、私は祖母より一足先に家を出た。 ホテルに着くとアンディが、撮影用のいいウェディングドレスが何着も入っているので、リハだと思って着てみてと言い出した。 私が躊躇しいる間もなく、彼はドレスのある部屋へ私を連れて行くと、沢山あるウェディングドレスの

      • 香港 #46

        30分程、時が過ぎた。 どんな話が行われたのかはわからない。でも、おばあさまに呼ばれて階下に行くと、祖母の表情は先程の険しいものとはうってかわり、いつもの柔らかい優しいものに戻っていた。 「優亜、さっきはごめんね・・・」 「うううん。私の方こそ悲しませて、本当にごめんなさい」 と私はすぐに謝る。 「アンディ、優亜の事をどうぞ宜しくお願いしますね。二人とも、おめでとう」 私が一番聞きたかった言葉を聞けた瞬間だった。そして私とアンディは喜びのあまり声を上げ抱き合った。すぐ側で兄

        • 香港 #45

          退院して数日後、私、アンディ、お兄ちゃんそしておばあさまの四人は日本行きの飛行機に乗っていた。 私とアンディの結婚を認めてもらうコト、兄とおばあさまが私の祖母に再会するコト、そして全員で母の墓参りをするコトと言う重要な用件を抱えての帰国だった。 あらかじめ電話で祖母には、今回三名の大切な人と一緒に帰るとだけ伝え、詳しい事は会ってからとしか言わなかったので、祖母は困惑して電話を切った。 香港を出て約五時間後、家に着いた。 玄関で四人がそれぞれ深呼吸した後、私がドアを開け「おば

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          9本

        記事

          香港 #44

          アンディは、私の目覚めに狂喜した。 「優亜が僕の元に戻ってきてくれた、もうそれだけで十分だ。 どんなに君が大切か身に染みたんだ」 と掛け布団の上から私に覆いかぶさったから、私は彼の背中を左手でさすった。 彼が言うには、一時は私との永遠の別れを覚悟しなければならない程、私は非常に危険な状態に陥っていたらしい。しかし、当の私は勿論何も覚えていなかった。ただ、私の中には、母と再会して得た満ち足りた記憶と、アンディと共に幸せに生きていくという、以前よりもさらに強い決意が刻まれており、

          香港 #43

          私の側に腰かけていた先輩の事も、まるで目に入っていない様に私の元に駆け寄ったアンディ。 「優亜、大丈夫か?」 その言葉を全部聞き終わらない間に、突然先輩が後ろを振り返った。 「兄貴?兄貴がどうしてここに?」 「お前こそ、何で?」 私はその一瞬でアンディとラム先輩が兄弟であると知った。 驚愕する二人の男性に、事実を受け止められない私。 「どうして。いやぁー!!」 私はそのまま気を失った。 「優亜、優亜ーーー!!」 アンディの叫び声が耳に入っていた。 ナースコールで呼ばれたド

          香港 #42

          問題から逃げて、アンディと暮らし始めた私はとても浮かれていた。 愛する人と共に時を刻む幸せ。世界中の幸せを全部手にした気持ちだった。 そして、怖くなった。 幸せが極まるとその反動で何か悪い事が起こるかもしれないなんて事、考える必要はないのに。長い人類の歴史の中でそんな事が多々あったのだろうか、そのせいで刻まれ続けたDNAのせいなのだろうか? 私は、ただ怖かった。 その日は強めの雨が降っていたが、私は仕事を終えたらアンディと映画を見に行く約束をしていた。 少し鼻歌交じりで階段

          香港 #41

          一番の身内である祖母が、きっと私達の結婚を許さない。母を苦しめた人達の子であるアンディを受け入れてくれないだろう。 また、私が母と同じ目にあうのではないかと心配し反対するのが容易に想像出来てしまう。それに、私がいつかこの国を離れ、日本に帰る日を楽しみに待っている、そんな祖母にはあまりも酷い仕打ち。 そして、母がもし生きていたら。 喜んでくれないのだろうか? 許してくれないのだろうか? 一度は愛した人が、別の女性との間にもうけた息子と私が結婚するのは受け入れ難いのか?それとも

          香港 #40

          「私は優亜さんとアンディ、貴方たち二人を祝福します。幸せになって欲しと心から願います。でも貴女のご家族はきっと・・・・」 アンディも、やっとこの複雑な状況が見えて来た様で、最高の笑顔は消えていた。 「私の息子、王俊明は美英と結婚して一人息子、羊英をもうけました。私達は四人一緒に仲睦まじく暮らしていたのですが、いつの頃からか俊明は他所に何人か女を作っては遊び歩くようなり、そのせいで美英と離婚してしまったんです。 当時、私は何もできなくて、本当に申し訳なかったと思っています。

          香港 #39

          アンディのおばあさまの家の前につくと、緊張がますます高まった。 とにかく、第一印象が大切だと笑顔を作った。 アンディがベルを押すとすぐにおばあさまが扉をあけ、幸せそうな表情で彼とハグをした。その後で私が、 「こんにちは。優亜です。はじめまして」 と挨拶すると、おばあさまはとても驚きの表情を見せた。 私は理由もなく胸のざわめきを感じた。 「あの」 「ごめんなさい。あまりに知りあいに似ていたものだから、とても驚いてしまって。さあどうぞ。どうぞ、中へ」 そういう彼のおばあさまの顔は

          香港 #38

          更衣室で着替えた後、一刻でも早く帰宅したかったが、ラム先輩がどこかで待ち伏せしているんじゃないかと気になり、ビクビクして鼓動が早まった。 部屋から出るのを暫く戸惑っていたが、やがて私は、細心の注意を払い、外に出るとすぐさまはタクシーに乗りこんで、アンディの部屋へ向かった。 走り去るタクシーの中、それにしても先輩は何故あんな事を言ったのか?とふと疑問が頭をよぎる。でも、それだけで、もう私は身の毛がよだつ思いをして震えた。 待ちに待ったアンディが撮影旅行から戻って来る夜だった。

          香港 #37

          香港に帰り、仕事に戻った。 忙しいお陰で気分の悪さは多少まぎれたが、一日が終わって帰る前にはぐったりしていた。自分の中に子供が宿るというのがこんなにも大変な事だったのかと、母や祖母、そして世の中の母親達に頭が下がる思いがした。 皆、こんな風に辛い時期を乗り越えているのなら、私も我が子に会う日の為に頑張らなきゃいけない。そんな風に自分に言い聞かせ毎日を過ごしていた。 その日も、あまり体調がすぐれず無理をしていた。 仕事を終えほっとしたせいか、思いがけず倒れそうになったところを

          香港 #36

          母の満中陰法要は6月になるのだろうと思っていた。 しかし、4、5、6と3か月跨ぎは縁起が良くないから、法要はを5月末に執り行うと、祖母が早い目に電話をかけてきてくれていた。 私は、帰国中に診察を受けられないかと考えた。だが、母の法要の為に帰国するそのタイミングを利用してはたして良いのだろうかと躊躇もした。 しかし、どう考えてみても日本で病院に行くのが一番安心ができる。そして、その好機を逃す手はないと考え直し、スマホで病院を探した。 シンガポールに居るアンディからは毎日のよ

          香港 #35

          ラム先輩の噂話も聞かなくなった頃、やっと先輩が出社してきた。 知らぬ間に3週間ほどの時が流れていた。 先輩は、髪を短く切り、奇抜なデザインで有名なブランドの服を着ていた。また頬はこけ、眼光が鋭くなったように見えた。 久しぶりに、廊下ですれ違う瞬間、声をかけようとした私を完全に無視して、通り過ぎた先輩には、もう私にいつも見せてくれていた、温かい笑顔はなかった。 ちょっぴり寂しさを感じたが、先輩が休暇中、顔を全く見ずに済んだ事で、私の心がさらにアンディにまっすぐ集中出来た事を心

          香港 #34

          先輩が何か違う人の様だと気づいた通り、わずかな期間に、私の中に眠っていた私の知らない私自身が目覚た様だった。それには、当人の私が一番驚いて戸惑う事があった。 これまでの人生で誰かに溺れた事なんて一度もなかった。誰かを好きになる事があっても、いつもどこかで冷めていて、自分が傷つくのを一番恐れ、それを避けながらずっと生きてきた。なのにアンディには違ったのだ。 彼の為なら何もかも全てを犠牲にしても、たとえ自分自身が傷つく事になったとしてもよかった。彼の事をまず第一に考え、彼と過ご

          香港 #33

          出社して一番先に上司の元に向かい、突然長いお休みを頂いたお詫びとお礼を述べた。その後に先輩や同僚たちにも。皆は、それぞれお悔やみや、私への労りの言葉をかけてくれた。そして、最後にやっとラム先輩を見つけたので、彼の元に駆け寄り、昨夜の電話に出なかった件を深く詫びた。彼はまず他の人同様に言葉をかけてくれたが、続けてとても鋭い言葉を放った。 「今朝はどうしたの?迎えに行ったけど、家に居なかったよね。それにたった一週間会わない内に、何か君がとても遠くに感じるよ」 それは、私をとてもド