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現実?それとも架空?~イーハトーブのカクテルをどうぞ~感想文

偶には、いつもとは趣?を変えてnoteのお題募集に載っかって、音楽仲間で小説家な友人が書いた小説「イーハトーブのカクテルをどうぞ」の感想文を書いてみようと思います。たしか、「読書の秋2022」の募集は11/30までなので、それまでには書き上げられる、はず?

小説の紹介

 東京都の国分寺在住のOLさんが、仕事帰りの地元で不思議な雰囲気のバーに遭遇。おそるおそる入ってみたらその先は現実世界から続いている異世界であった。そこで色々な不思議な体験をするだけでなく、ずいぶん昔に起きていた事件の解決にもかかわる、というのが、ざくっとしたストーリー。
 小説そのものは2019(令和元)にamazon書籍にて電子出版されていたものを、2022(令和4)年から紙媒体の書籍としても出版開始された。
 作者の星詠エマさんは、「彩葉永華」名義でシンガーソングライターとしても活動しており、noteにはこの名義でいる。

 で、彼女の過去記事を、あらためて一通り読んでみたが、この小説が紙媒体で出版されたことに触れた記事がみつからない(??)ので、あらためて、こちらで紹介しておこうと思う次第。
 ちなみに、ISBN 9798780793496 というコードがある。 

感想文本体

 異世界が主な舞台となる作品ではあるが、最近流行りのいわゆる「異世界転生モノ」とは異なり、向こうの世界に行くのに、崖から落ちたりトラックに跳ねられたりギロチンで首を落とされたり(!!)などの痛い思いをする必要はない。正確に言うならば「異世界転移モノ」になるのであろうか。
 そして、主人公のOLさんは、向こうの世界とこっちの世界を行ったり来たりする。行くときは、街を歩いて(もしくは彷徨って)いて、不思議な雰囲気のバーをみつけ、そこに入ってみたらそこが異世界だったというパターンである。帰ってくるときは、最初はバーから出たらいつもの街並みだったというパターン、2回目は異世界で問題を解決したらいつのまにか国分寺駅のホーム(!!)にて気絶した状態で発見されるとか、そういうパターンである。この時に異世界の住民から、とあるものを借りたまま戻ってきてしまったので、3度目は彼女の意思でこの異世界へ行く方法を探し、そして行くことになる。このときだけは、ちょっとだけ派手目(??)な演出が入るが、ネタバレにならぬよう、紹介はここまでにしておく。
 というわけで、分類的には「ローファンタジー」ものになるかもしれないが、現実世界は異世界からの浸食や干渉を全く受けておらず、異世界を崩壊から救わないと現実世界も崩壊してしまう、なんて大袈裟な話はない。現実世界は異世界の存在の有無にかかわらず、何の変異もうけずに普通に存在している。作者自身も述べていた(ような気がする?)が、現実世界のすぐ隣にある異世界、といった、そんな感じに好感を持った。

 そして、異世界に転移したOLさんは、特別な能力を持つこともなく、異世界の一般住民と共に協力して、異世界で発生していた問題や事件を解決する。これも卓越した推理能力を駆使するわけではなく、異世界の住民たちと普通に会話をして、そのなかから解決の糸口を見つけ出し、一緒に行動して問題を解決に導いている。主人公のOLさんは、スーパーヒーローや魔法少女ではなく、あくまでも、普通の市民として活動している。異世界側の参加者も、やはりずば抜けた才能や特殊能力はもっていない人たちとして描かれている。まあ、主要登場人物の中には人ではない方々も含まれているが、行動などは人間そのものであるように描かれている。
 こういった、「普通」感(??)により、自分もいつかはそんな体験をすることがあるのかも?、という錯覚を持つほどで、非常に好感が持てた最大の理由である、かもしれない。

 もう1つ好感が持てる点は、ほぼすべての登場人物が最終的にはハッピーエンドに導かれている、という点である。死人が出ることはなく、事件が解決することによって不利益を受ける人もいない。この異世界ならではの法則による手段、つまり、現実世界ではまず不可能な手段によってハッピーエンドへと結びついている部分もあるが、この異世界ならではの制約条件もいろいろとあってそれをクリアしていて、ハッピーエンドへと進んでいる。
 ぶっちゃけ、異世界についての諸々の設定は、作者の匙加減(??)にゆだねられている部分である。自分も(まだ公表したものはほとんどない?が)作品を書くときにも、「架空の世界だからこそ、自分の作品の登場人物は、誰も不幸にさせない」というポリシーを持っているので、非常に共感できる。

 昨今の小説やTVドラマなど、作品としての完成度は高いが、鑑賞すると非常に疲れたり、素晴らしい出来栄えだとはおもうけど、心のどこかになんか引っかかるものが残る(それが作者の狙いでもあるのだが)という作品も多い。
 そういった風潮の中、疲れることなく気軽に読め、しっかり感動ももらって、心の癒しになるようなこの作品は、心が疲れ気味の皆様に非常におすすめ、である。

おまけ:聖地巡礼?

 物語の中で、主人公のOLさんが、満月の夜に多摩センター駅から続く階段をパルテノンの丘へと登るシーンがある。たまたま、11月のとある満月の夜、現場に行ってみた。

パルテノンの丘への階段の上から見たイルミネーション
ほどなく姿を現した満月
池の水面に移るパルテノンの明かり

 もうちょっと明かりがある場所はないか?、と付近を散策していたら、突如、園路脇の茂みから、野良の三毛猫さんが出現。挨拶する間もなく、ついてこい、っていうような仕草をしたように見えたので、つかずはなれず、彼猫の行方を追ってみると…

野良の三毛さんに導かれてたどり着いた場所
右上の輝点は土星?木星??

…こんな風景の場所に到達。
 気が付くと野良の三毛さんはいなくなっていたが、作中の主人公のOLさんも、こんな光景をみたのであろうか? 野良の三毛さんは、実は、異世界に住む副主人公さんの使いの者、だったのかもしれない。

 なお、この後、皆既月食が始まる、と知ったのは、帰路の電車の中、知人とのSNS上でのやりとりで、である。

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