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お客さんと出会い、関係を育むための広報・情報発信【講座レポート】

「自分らしい仕事を見つけ、つくること」を応援する、MyWork わたしの仕事プロジェクトの講座「広報・情報発信」のイベントレポートをお届けします。

第4回目となる今回の講座は、2023年11月29日、鳥取市にあるスペースソラで開催。会場参加10名、リモート参加1名(アーカイブ視聴含)のみなさんにご参加いただきました。鳥取県西部にお住まいの受講生2名も会場入りしてくださり、これまでで最多の10名が会場に集い、受講生同士の明るい声であふれていました。

講師を務めるのは、MyWork わたしの仕事プロジェクトの運営を担当するNPO法人bankupの藤吉 航介さんです。またプロジェクトを主催する鳥取県 地域社会振興部 人権尊重社会推進局 女性応援課 係長の竹内 香菜江さん、企画運営を担う合同会社cocoto代表の佐々木 よしみさんにも出席いただきました。藤吉さんの「おはようございます!」という元気な声から講座がスタートしました。

自分たちのことを知ってもらい「読み手を“動かす”」

藤吉さんは、子育てや介護などでライフステージが変化しても在宅を中心に働くことができる「YELL FOR」をマネジメントし、Webメディアに掲載する記事やプレスリリース、SNS投稿テキストを制作するなど幅広く広報・情報発信を行っています。鳥取に住む受講生にも馴染み深い「森のようちえん まるたんぼう」や「汽水空港 森 哲也さん」の記事から、全国の企業や団体の広報まで、数多くの情報発信に関わっていらっしゃいます。

今回の講座のポイントは、お客さんを見つけたり、応援してくれる人を見つけるために、どう伝えるのか、どう発信するのかということ。そして、情報発信に馴染みのない人も「苦手意識がちょっと小さくなる!」ことが目標です。情報発信について、次の3つに分けて考えていきます。

1.情報発信の目的、「なぜ」発信するか
2.情報発信で「なに」を伝えるか
3.「どこで」「どうやって」書くか

【1.情報発信の目的「なぜ」発信するか】

ーー読み手にどう行動してほしいのか意識するーー

情報発信で重要なのは、自分たちの思いを発信し、取引先やお客さんなどステークホルダーとの望ましい関係や信頼を作ることだと藤吉さんは説明します。

藤吉さん:情報発信や広報もコミュニケーションのひとつ。事業を開始すると、お客さんや応援してくれる人を見つける必要があります。知ってもらわないと関係も始まらないので、そこには、絶対にコミュニケーションが必要になると思うんです。

情報発信の目的について「読み手を“動かす”ため」と藤吉さんは定義します。

藤吉さん:一つ目のステップはまず自分たちのことを認識してもうこと。「こんな商品やサービスを提供して、世の中をこう変えたいです」と知ってもらうことです。そして読み手にどう行動してほしいのかを意識して発信してほしいと思います。

実際にワークに取り組みながら「誰に行動してほしいか?どんな情報をなぜ届けるのか?」を整理しました。自分のMyWorkをふりかえり、「届けたい相手」「届けたい理由」「届けたい内容」を書き出す作業です。 書き出した後、3人の受講生が全体に共有してくださいました。

受講生 Sさん:道の駅で、自分の制作した小物を販売したいと思っています。届けたい人は、雑貨を見て癒されたいなと感じている人や、誰かへのプレゼントを探している人、届けたい理由は、旅のことを振り返ったり、癒しを感じたりできる小物を提供したいからです。「道の駅に雑貨屋さんがあるんだ、楽しいな、これいいな」と思ってもらえたら嬉しいですね。

受講生 Kさん:届けたい人は、美容や健康に関心がある人、自分を見つめ直し大切にしたいと考えている女性です。仕事と家庭を両立する中で疲れている女性が多いと感じるので、自分をゆっくり見つめてケアできる場所を提供したいと思っています。心と体の状態を知って自分らしく元気に過ごせるように「リラクゼーションや薬膳など、心と体を“まるっと”ケアできる場所がここにありますよ」と伝えたいですね。

受講生 坂本さん:地域おこしに関わっていて、地元特産の工芸をテーマにしたカフェで出すお菓子を作っています。伝えたいことは、お菓子が新しい生き方の入口になるということです。バターや砂糖のたっぷり入ったお菓子を食べてもらって、「元気が出た、がんばろう!」と感じてほしい、そして小さな町の持つ良さや、くらしも知ってもらうことができたらと思っています。

情報発信の仕方について考えることで、受講生それぞれが自分のMyWorkを別の角度からとらえ、新たなヒントを得るきっかけになっていました。

【2.情報発信で「なに」を伝えるか】

ーー気持ちを素直にメモし、相手の悩みに耳を傾けてーー

「なに」を伝えるかを決めるとき、藤吉さんがおすすめする方法は、「自分が伝えたいこと」「読み手が知りたいこと」「社会の関心があること」の3つの円の重なりを意識するということです。

藤吉さん:「自分が伝えたいこと」と、「読み手が知りたい」と思っていることが重なると、事業の話を聞いてもらうことにつながるので、ここは大事なポイントですね。そして「社会の関心があること」とも重なりがあると、情報の広がりがさらに出てきます。 

つづいて、「どのような切り口」で伝えるかを考えていきます。「なにを書いたらいいのかわからない」、「ネタがない」という受講生に向けて、解決法を提案してくださいました。

藤吉さん:自分しか知らない身の回りのことや、日常の中で疑問に思うことを日常的にメモしておくのはとても有益な発信のヒントです。ほかにも「わあ、すごいな」と思ったり、違和感を感じたり、自分の感情が動いたことを書くと、周りの人の共感を呼ぶことがありますよ。 

情報発信は自分から相手に伝える行為ですが、その際にも周りの人の思いを受け取ることが必要です。

藤吉さん:みなさんのMyWorkの活動について、ご家族や友人知人、MyWorkの受講生に、「どう思う?」と意識的に聞いてみるといいと思います。「どんなことに困っているかな」「知りたいことってなにかな」「辛いと感じていることはなんだろうか」と聞いていくことで、活動を届けたい相手の姿がどんどん見えてきます。すると、情報を発信しやすくなったり、その人に伝わる言葉を選べるようになったります。

【 3.「どこで」「どうやって」書くか】

ーー大前提は、論理的であることーー

発信した情報によって人を動かすためには、論理的であることが前提にあります。自分の主張を支えるしっかりとした理由を書いた論理的な文章でなければ、人に伝わらず行動してもらえない状態に陥ってしまいます。事業規模が大きくなるほど、土台をしっかりと作る必要があります。 

そして 「文章を書き出してもなかなか先に進まない」という人のために、藤吉さんがアドバイスしたのは、「読者の存在をイメージする」ことと、「自分の中に情報をもつ」ことです。

藤吉さん:相手がいない文章は、「あれ?これってどう伝えたらいいのかな」と不安が勝って先に進まないことがあります。読者がどんなことに困っていて、どんな情報を届けて欲しいのかというイメージが頭の中にあるといいですね。読者一人をイメージして、その一人に喜んでもらうことや、届けることを考えながら書くといいと思います。また、過去の自分に向けて書くことを意識すると、文章を書きやすくなりますよ。困りごとや悩みごとを抱えていた当時の自分に届くように書くことがポイントです。

一方で、「自分が必要な情報を知らない」から書けないという可能性もあります。

藤吉さん:「ほかとどう違うのですか?」と聞かれ、ドキッとして答えられないときは、自分の中にまだ答えるための情報を持っていないという状態なのです。論理的に説明できる情報が不足していると、「自分はいいと思っているけど、ほかの人もいいと感じるものなのだろうか」と迷いも生じてしまいます。

それを解消するには、例えば、ほかの人の作ったものを食べてみて自分のものと比較したり、食べ比べをした人の体験談を聞いたりして、自分の中に知識を取り入れておくことが大切です。 

「苦手意識をちょっと小さくする!」

ーー表現の引き出しを広げ、自分なりの軸を見つけるーー

講座の後半は、「情報整理シート」に沿って書き出すワークに移りました。講座の前半で書いたものをもとに、さらに具体的に考え、解像度を高くしていきます。書き出す項目は、「届けたい相手はどんな人?」「何を求めている?伝えたいこと」「読むことで“こうなってほしい”状態」「ネタ帳:伝えたいテーマ・キーワード」の4つです。

グループで考えを伝え合う時間になると、どのグループからも熱のこもった声が途切れることなく、ときどき楽しそうな笑い声も聞こえてきました。その後、全体で共有する場を持ちました。

受講生 Yさん:届けたい相手は、アレルギーのある方とご家族、友人、ビーガンの方です。普段アレルギーのない子と同じものを食べられない子どもたちが、お菓子を食べて「おいしいね」と共感したり、あったかい気持ちになったりする瞬間はとても重要です。そして毎日アレルギー対応の食事作りをがんばっているお母さんが子どもの様子を見て「嬉しいね、これからもがんばっていこうね」と安心を感じられるお菓子を届けたいと思っています。

受講生 水根さん:届けたいのは、アレルギーのある子の食事に悩んでいるお父さん・お母さん、添加物の含まれていない体にやさしい食べ物を求めている方、米粉パンのもちもちとした食感が好きな方などです。そして今回グループで話す中で、米粉パンの腸内環境を整える良さを活かして、アレルギーのない方にも情報発信できることに気づき世界が広がりました。

受講生 木山さん:届けたい人は、片付けで困っている人です。「片付けの正しい手順を知ることで自分の時間を有効に使ってほしい」ということと、「心地よい空間作りのお手伝いができますよ」ということが伝えたいこと。「読むことで“こうなってほしい”状態」は、片付けや探し物に悩む時間を、自分の時間を大切に使うことに転換するきっかけをつかんでほしいと思っています。もう一つ考えているのは、教育機関の方に向けて情報を届けることです。幼少期からの片付け教育の大切さや、片付けが人生の選択や自立につながるということを伝えたいですね。

受講生の発表を受けて藤吉さんは、読み手に合わせて情報を分けて発信することは大切なことだとコメントしました。

藤吉さん:届ける相手によって伝え方も変わります。片付け教育であれば、保護者会や子ども会などに情報が広がっていく可能性がありますね。そしてみなさんのお話に共通して感じたのは、「聞いてもらうことの大切さ」です。自分の考えてることを聞いてもらうことで、世界が広がったり、自分にない視点に気づいたり、嬉しくて自信にもなりますよね。

ここで藤吉さんから、SNSの運用についての提案がありました。

藤吉さん:ぜひ、実際に情報を発信してみてほしいなと思っています。すでに発信している方は継続して、受講生同士で参考にし合えるといいですね。これから挑戦するという方は、考えていることや興味があることを投稿してみたり、SNSは気が引けるという場合は、まずは友人や知人など身近な人に思いを話してみたりするのもいいと思います。 

初めての情報発信では、共感できるモデルを見つけ真似することが役に立ちます。文章を書く時に参考になる本として、「二十歳の自分に受けさせたい文章講義」(古賀 史健・著、星海社)を紹介していただきました。

藤吉さん:人によってスタイルが違うので、いろんな人のSNS、noteやX、Instagramなどを参考にしながら、自分のスタイルを作ってください。参考にする人を5人から10人くらい見つけると自分の表現の引き出しが広がり、発信を続けることで自分なりの軸が見つかっていきます。

今回の講座で事業への思いを伝え合ったように、まずは身近な人に伝えることから情報発信は始められます。講座を通して「苦手意識をちょっと小さくする!」ことができたのではないでしょうか。次回講座は、12月6日開催の「お金・資金計画」です。

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講座の合間や終了後も、藤吉さんや佐々木さん、竹内さんに相談する声や、受講生同士で事業について話し合う活気のある声が響き、自分の作った食品を試食してもらうなど、受講生同士のつながりも深まってきました。お互いの事業を尊重し、その人がその人らしくいられる場所にMyWorkは成長しています。鳥取にMyWorkのような場所があることを誇らしく感じました。


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