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いい夢を。

23歳の目標は、「幸せで、充実した一年を過ごす」ことに決まった。

きっかけはなんであれ、私なんかのために時間をさいて、「お誕生日おめでとう」という言葉を伝えてくれる人のことを、心の底から尊いと感じる。私を喜ばせるだけ喜ばせておいて、なんの見返りも求めず、私の返信には返信してくれない人たちの妙なやさしさ――と、あえて言わせてもらう――が心地いい。だからといって、耳にタコができるくらい「おめでとう」と言い続けてくれたり、次から次へと小さくて大きなプレゼントを渡してくれたりする人たちの溢れ出ている愛が、どうしたってうれしい。一年に一度くらいは、うっとうしくても我慢する。

「夢の世界へようこそ!」と、私の中で永遠になっているアイドルグループの、赤レンジャーが声高らかに手を広げているライブ映像を観た。途中でやめようと思ってたけど、けっきょく最後まで観るんだから……アイドルのパワーはすごい。ほんとうにすごい。最大のエンターテイナー。

夢は希望で、希望は過去で、過去は夢だ。目を閉じなくても夢を見れるようになってしまったこの頃は、未来への希望なんて過去だけしか持ちえず、私は過去に生かされていると実感するだけの毎日だ。確かに誰かと共有した、たった数分の過去があるから、私はこうして目を開けていられると確信している。そして、その過去を、いつかまたそっくりなぞるように、もう一度過ごせるような日々が来ることをただ待ち焦がれているだけ――と、文学的に書くと聞こえはいいものの、実際過去をそっくりそのまま繰り返すことなんてできないのである。たとえ私が、彼やきみやあなたにもう一度会える日がきて、言葉を交わし合い、抱き合えたとしても、それはもう過去の私たちではないのだ。あの頃の、小さくて、幼くて、未熟だった私はもうどこにもいないし、あの頃の、大きくて、頼りになって、私の世界の全てだった彼やきみやあなたはもうどこにもいない……のかもしれない。今の私が彼やきみやあなたに会って何を感じるかはわからないが(恐らく、失望や幻滅やがっかりなんて感情は地球が反対周りにならない限り、わいてこないだろう)、逆を言うと何を感じられたとしても、何も感じられなかったとしても、何もかも、あるいはほんの少しだけ変わってしまったふたりでは、どうにもこうにも、昔のようにはいかないのである。それがわかっているから、わざわざ見せつけられるのに行くのが、こわいのだろう。だとしても、楽しかったよ。ほんとうに、出会えてよかった。いまもずっとそばにいられたら、もっとよかったなあ。

夢も希望も何もない! と私はよくこの世の全てを理解して諦めたかのように嘆いてはいるけれど、こう、持論に沿って客観的に振り返ってみると私には夢や希望だらけなのである。私が今もこうしてせっせと生きているのは、過去を愛する時間が、思い出す時間が、過去のために生きている時間が、あんがい好きだからだろう。なんのために生きるのか? そういうことを考えて、自分で決めてしまうと、明日の仕事も怖くない。ぜんぜん大丈夫。いける。私には世界でいちばん愛すべき人たちとの時間でできた夢のような過去が、ついているのだから……!

それでも、今日見た夢のないようでさえもはっきりと思い出せない。呪術廻戦を過去編➡映画で一気見したから、願望からか、五条悟が生き返る夢を見た気がする。(何回目かわからない夢である)が、詳細は不明。まあ、こんな感じに、のんびりと緩やかに、それでも確実に消えていく夢たちである。

私のことを、永遠のように長く短い人生の中で、一瞬でも想ってくれたことのある人たちが、これからもずっと、いい夢を見続けられますように。そして、いい夢に出会えますように。できればそれを、できるだけ長い間、覚えていられますように。

とは言ってみたものの、ぜんぜん、覚えていなくてもよくて、ほんとうに大切なものは自分の身体の奥底のいちばん頑丈なところに大事に大事にしまっていて、大事にしまいすぎて中々取り出せないでいるけれど、いつか、きっと、取り出せる日がくるから。来なくてもそれは、永遠に大切にできた証拠だから、別に、どっちだっていいのかもしれない。要はタイミング、タイミング。でももう一度思い出せるタイミングがなかったんだな自分には、って思うとちょっと切ないかもしれないけれど……。そしてこれもほんとうに切ないことだけど、いつか大丈夫になる日がくるから、大丈夫。自分をゆるすための、準備をしながら生きていよう、生きているうちは。

でも私もまだ全然思ってるから。こんなに幸せな一日だと、「こんなに幸せでいいのかなあ」って落ち込むから。いつか、って、全然いつかわからないけど、だけど本当に、いつか、「もういいよ」って言われてしまうんだろうなあ。

眠くなってきた。そろそろ眠ろう。みんなも、おやすみ、いい夢を。

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