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書きかけの小説

殺人的な暑さなんて表現が使われだしたのはいつからだろう。


僕が幼い頃は子どもは外で遊んで、なんて言っていたが今じゃこのクソ暑い中外で遊ぶ子どもを見ると少し心配になる。それぐらい暑い。こんな暑い日には家にいても何も捗らないと思って図書館に来た。
自宅の書斎にはエアコンがない。扇風機を回したところで熱風が漂う。この熱風を回避しようと思って濡れタオルを扇風機の後ろに装着してみた。ちょっとした知恵袋的なやつだ。さぞかし冷気を送ってくれると思いきや、これがなんのそのちっとも効果がない。かと言ってリビングでは視界にいろんなものが目に入り集中できそうにない。


そんなわけで図書館に来た。
図書館の良いところは静かで、学習スペースには余計なものが視界に入らないように囲いがしてあるところだ。それでいて近頃の図書館はwifiが通っていて、コンセントもある。当然ながら空調も良しだ。そして一階にはカフェスペースもある。こんなに環境が良くて無料なものって他にない。コワーキングスペースが無料で利用できるのだ。


これに気づいたおいらはとても天才だと思い、今朝は7時半に目覚めて朝食を作り、開館の10時に向けて支度をした。
余裕を持って行動をしたいA型の僕は開館15分前に図書館についた。少し早かったかなと思ったが、駐車場にはすでに多くの車が停まっていた。もしやと思い、入り口付近まで行くとすでに50名ほどの利用客が列をなして開館を待っている。学生はもちろん、社会人、お年寄りの方まで千差万別だ。図書館を利用するのってコスパ最強、これに気づいたオレ天才と思ったがそんなことはなかった。こんなにも図書館のメリットに気づいている人がいたのだ。


図書館てなんだか好きだ。
こんなことを言うと根暗な感じがするかもしれないが、文系男子のもやしっ子の僕だ。これが事実なんだから仕方がない。本を読むのは遅い僕だが、本は好きだ。本に囲まれている空間がとても落ち着く。この気持ちわかるだろうか。



ずっと書きかけの小説がある。
大学生の主人公、大学受験の時に図書館通いを始めるのだがそこで距離が縮まった同級生の女の子。進学をして東京に行った彼女に会いにくという話なのだが、書けないでいる。物語に没頭するだけの十分な時間がない。十分な時間を得るための作業もしなければならない。だから先延ばしにしている。


そんなジレンマと戦いながらこうして図書館にて作業をしていたのだが、隣に座ったカップルを見ていてふとその書きかけの小説を思い出した。


宏明に促されて東京行きを決めた悠。
物語の続きはまだ少し先伸ばしにする。

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