【詩】ポルノ


カメラマンの目がレンズ越しに視ている  女体の人は五感で感じて演じている  何がしかの触覚があり嗅覚があり味覚があり視覚があり聴覚がある  撮り終えた物を画面に写し  更に綺麗になるように手を加える  口で咥えたものは不明瞭にする  幾つもの場面をカットして現実のような虚構を創りあげる  誇張した声で誘ってくる

俺はそれをまた別な画面から  自分の目を通して視て興奮している  虚構は虚無につけ込む  感じられるのは減衰した視覚と聴覚だ  他三つは画面に隔てられて感じない  楽しんで果てても一時の興奮で深い充足はない 自らの手で体を撫ででも足りずどこか虚しい

社会規範はどうであれ  あの女の人は生きたと言えるだろう  自ら選んで行動して価値を生み出した  五感を使った 見事に目を惹いた 女体の物語を幾つもの画面を通して見ている俺の目は画面になって機械的な反射を繰り返す

ここで満足して果ててはならない  虚構から目覚める時だ  自らの目を自らの意志の下に戻す時だ  自らの物語の筆を進めよう  無様な姿すらも文字に変えよう キーボードを打つ手の感触と 耳に入るエアコンの駆動音 唾液の味 花粉でムズムズする鼻 見ていて疲れるPCの明かり それらと言葉で 不感症で無感動な凍てついた心を解かすんだ 生きることは六感で感じること


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