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闘う人たちの物語が動く壮絶な瞬間を目撃した日(2024年5月6日、ALL TOGETHERを観戦して思ったこと)

 私がプロレスを観に行くようになって2年半の間に、プロレスの物語が動く瞬間をそれなりに見てきた。
 林下詩美選手の金網マッチ、鹿島沙希選手のゴッズアイ加入、風城ハル選手の自力初勝利、イッテンヨンの衝撃の数々。
 これらは、よかったーとほっとしたり、そうなったかーと驚いたり、感情は前向きに落ち着いて次の試合への期待感になる。

 それらとは異なる衝撃を受けたのが、5.6のバッドエンド。
 メインイベント後の記念撮影が終わった矢先、清宮海斗選手のGHCヘビー級のベルトがゲイブ・キッド選手によって強奪された。
 何て酷いことをするんだと思うのと同時に、なぜこんなことになったのか、答えが欲しくて私の頭はフル回転した。
 そして脳裏に閃いたのは、「計画通り」と某漫画の如くほくそ笑むジェイク・リー選手の姿だった。

 5.6に至るまでに、謎はいくつか散らばっていた。
 なぜ唐突にジェイク選手が内藤に絡んできたのか。
 なぜジェイク選手がWAR DOGSと手を組んだのか。
 GLGメンバーを引き連れずに展開された一連のジェイク選手の動きに、なぜ? と疑問符が浮かぶばかりで、私は落ち着かない気分でいた。

 ジェイク選手はNOAHに来て清宮海斗選手を降してGHCヘビー級王座を戴冠し、防衛を重ねるも、拳王選手に敗れベルトを失った。
 無敗から無冠へ。だがGLG総帥としてかえってのびのびと振る舞い出したようにも見えた。むしろ無冠になってからの方が私は面白いと思うようになったくらいだ。
 その間にGHCヘビー級のベルトはイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.の手に渡り、再挑戦の権利をかけてジェイク選手は清宮海斗選手と戦い、敗れた。
 GHCヘビー級のベルトは清宮選手の手に戻った。
 ここからジェイク選手がどう動くのか。
 GHCヘビー級のベルトを狙っているのだろうとは思うものの、挑戦者決定戦から間をおかずに挑むような前のめりさは、私の個人的な感覚では「ジェイク選手らしくない」気がする。

 一方で、清宮選手は拳王選手との絡みで覚醒してゆく。
 ジェイク選手はどうするだろうかと思っていたら、新日本プロレスのリングに現れ、内藤哲也選手に宣戦布告。
 デビッド・フィンレー選手率いるWAR DOGSとの共闘というか、ジェイク選手がGLGメンバーを連れて来なかったので、WAR DOGS臨時加入のようにも見える。
 ジェイク選手は新日本プロレスのタイトルを狙っているのだろうか。絡みに行った内藤選手は現状、無冠だけれども。何かフィンレー選手は楽しそうだけれども。

 何もかもが謎で、しっくりこなくて、モヤモヤする。人は〈できごとの因果関係を「わかりたい」〉性質を持つので、「わからない」状態は落ち着かなくて苛立ちすら覚える。

(こうした物語の作用について書いたnoteはこちらです)

 そんなモヤモヤを抱えて迎えた5.6、セミファイナルで内藤選手を破ったジェイク選手はいい笑顔をしていた。
 でも、そこからどうするのだろう?
 やっぱり、まだ「わからない」……そのモヤモヤが、メインイベント後のWAR DOGS急襲とゲイブ・キッド選手の行動で一瞬晴れ、「わかった」気がした。

 WAR DOGS、特にゲイブ・キッド選手は、IWGPヘビー級王座を海外流出させてしまった内藤選手への戦意が非常に高いと思われる。そこに同調したかのようにジェイク選手が現れ、共闘。
 新日本プロレスの選手が内藤選手を倒すよりも、外敵のジェイク選手が倒す方が衝撃的ではある(ベルト流出の制裁としては弱まるかもしれないが)。
 裏を返せば、NOAHの選手が清宮選手に直接つっかかるよりも、外敵のゲイブ選手が襲撃する方が劇的である。
 覚醒した清宮選手への逆風として、この状況を作り出したのはジェイク選手なのではないか……?

 というのが、5.6のバッドエンド目撃直後に私の脳裏に浮かんだ推測だ。
 頭をフル回転させながら、鳥肌が立つ思いがした。ジェイク選手はいつからこの企てを考えていたのか、どこから仕組んでいたのか。

 ああ、これもまたプロレスの物語が動いた瞬間で、物語が見えた(気がする)その時に、こちらの感情は前向きに落ち着くとは限らないのだなと思い知った場面だった。
 ベルトの行方や選手たちの関係性が、本当にこれからどうなるんだろう。私の感情は落ち着いてはいないが、どうなるんだろうという怖いもの見たさも含めたワクワク感でいっぱいだ。

 さて、次はどんな試合を観られるかな。

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