THE BOYS&GIRLSというバンド
北海道札幌を背負ってくれているバンド。
THE BOYS&GIRLS。ボイガル。
彼らのことを知ったのは、たぶん、2013年の札幌バンドが集まる企画ライブ。うす汚ないスピリチュアルラウンジはタバコの匂いに満ちていて、いかついお兄さん方もたくさんでちょっと怖かったから、一緒に行った人にくっついてライブを見ていた。
だからライブのことはちゃんと覚えていないけれど、ボイガルのことはなんだか好きだなと思った記憶がある。
そこからCDがリリースされて、アルバムがリリースされて、メジャーデビューもして。そういう情報が入ってきたらチェックはする。だけど、追いかけてるわけではない、不思議な距離感のバンドだった。
狸小路で路上をしていたのも、ライジングサンの日に豊平川の河川敷で歌っていたのもうっすらと知っている。
ちゃんと聴くようになったのは、就職で地元を離れてから。北海道がとてつもなく恋しくなったとき、ボイガルの歌を夜中に聴いていた。歌の中にはわたしの知ってる街の景色があった。東豊線、ラフィラ前、4プラの地下、カナリヤの鳩。
なかなか北海道に帰れなくても、歌を聴いたら頑張ろうと思えた。わたしにとってボイガルの歌はお守りみたいになって、それからライブにも行くようになった。
アルバムのリリースツアーにも、台風でライジングが中止になったときにしていた弾き語りライブにも、メンバーがボーカルのワタナベシンゴさん以外全員脱退したときのライブにも、シンゴさん1人になってから出演したサーキットイベントにも行った。
ライブに行けば行くほど、ボイガルが好きになった。地元に帰ったら今までよりもたくさんボイガルのライブに行こうと思っていた。だけど、コロナが流行って気軽にライブハウスに行けない時代になってしまった。
2020年。シンゴさんは頻繁に配信ライブをしていた。バンドを、ライブハウスを、音楽を守ろうとしているように見えた。メンバーがいなくなって一人になっても、時代がこんなふうになっても、今やれることを、ひとつひとつ積み重ねていっているように見えて、カッコよくて勇気をもらえた。
2022年の夏。久しぶりにライジングサンロックフェスティバルが開催されることになった。大好きな夏フェス。意気揚々とチケットを取った。ただ、開催直前になって、コロナに罹ったアーティストたちの出演キャンセルが相次いだ。わたしが一番楽しみにしていたカネコアヤノさんもキャンセルになってしまった。
ガッカリしていた次の日、SNSには「ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS)出演」の文字。
シンゴさんがライジングで見れる。カネコアヤノさんの代わりだった。 まさかこんなことが起きるなんて。ボイガルをずっと見てきた人間からすると、これはとてつもなく歴史的なことで、何としても絶対に目撃しないといけないステージだった。
ライジング当日。ヒュッゲステージのトップバッター。真っ青な空。緑の芝生。黄色いフラッグ。キラキラのシャボン玉。シンゴさんの歌。最高の空間で、最高の音楽。
一番最初にこんなステージを見てしまったら、心が掴まれて離してはもらえなかった。いろんなアーティストを見たけれど、ライジングのナンバーワンは結局シンゴさんだった。
これはもう、久しぶりに行くしない。
そう思って札幌でのワンマンライブのチケットを取った。
2022年11月19日。土曜の夜。会場はペニーレーン24。時間だいたいぴったりに始まった。久しぶりに生で見るバンド形態のボイガル。
ボイガルは音源もいいけど、その何百倍もライブがいい。そんなの前からわかっていたけど、この日もやっぱりそうだった。
ピカピカの照明がなくたって、楽器が何種類もなくたって、ただただ音楽の力そのものでぶん殴ってくるようなバンドだ。実際にライブで使っていたギターは平岸のハードオフで8000円で買ったものらしい。誰も使ってるやつはいないって言っていた謎のメーカーのギター。こんなプロミュージシャン、わたしはボイガル以外知らない。
ライブのMCでは今年の夏の話をしていた。ライジングに出演できたけど悔しい気持ちになったこと、バンドでちゃんと出たいと思ってることをシンゴさんは喋った。そうか、そうだよな、と思った。
あのステージは最高だったけど、ボイガルはこんなにいいバンドだけど、認知度自体はそんなにあるわけじゃない。「ライジングサンで一番良かったのは?」って聞かれたら、必ず「ワタナベシンゴさん」って答えるようにしていたけど、知ってる人にはなかなか出会わない。
シンゴさん自身も、今回リリースしたアルバムやツアーについて、「最高のアルバムが出来たけどYouTubeの再生回数も伸びないし、今日だってペニーレーンのキャパが埋まらなくて、悔しい」と素直に気持ちを吐露していた。だけど、それに続いてこんなことも言っていた。
「もっとやれることあったよなって思っている。それは今回のツアーだけじゃなくて、コロナが流行って潰れていったライブハウス、いなくなってしまった大事な人、それに対して自分がもっとできたことあったのにってずっと思ってる。だけど、この悔しい気持ちや後悔もひっくるめて、ここが現在地だから、またここから始めたいと思います」
こんな言葉の後に歌ったのが新曲の「ボーイ」。
それがこの日一番よかった曲で、今のボイガルの曲。
シンゴさんの言葉には嘘がないと思う。そして、不器用な生き様をずっと見せてもらってるような気がする。だからこそ、不器用な自分を肯定できる気持ちになる。このままの自分でもう少し生きてみていいかなと思える。
そんな力をもらえるバンドがTHE BOYS&GIRLSだ。
わたしは、やっぱりこのバンドが好きだ。
もっともっとボイガルが広まってくれるといいなと思って、今回この記事を書いてみた。
心をぐっと掴まれたライジングサンの映像も、12月10日まで見れるので、ぜひ見てみてほしい。
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