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80年代の過小評価されている洋楽アルバム②

なぜ過小評価になるのかの考察

前回の記事もご参照ください。
で、今回はパート2なんですが、そもそも何で過小評価になってしまうのかについて考えてみると次のようなことがあるかと。

①前作がめちゃくちゃ売れた
…こりゃどうしてもビッグセールスを浴びた作品とは比べられますから、致し方ないですね。期待値も高まりますから、それを超えるというのは並大抵なことでないわけで。メン・アット・ワーク(「ワーク・ソングス」「カーゴ」からの「トゥー・ハーツ」)やエイジア(「詠時感」「アルファ」からの「アストラ」)を思い出します。

②路線変更が受け入れられなかった
…アーティストの性として、たとえ前作が大ヒットしようと「二匹目のどじょう」は狙わない、同じようなものは作りたくないというのはやはりあるでしょう。前回紹介したリック・スプリングフィールドの「Tao」はその典型だと思いますが、ドラスティックな路線変更は一種の博打のようなもので、受け入れられるかどうかは本当にわからない。リックのような過激化もあれば、ローマン・ホリディのように1st(「ローマの休日」)のジャイヴ路線が受けたものの、2nd(「涙のラスト・クルーズ」)では割と普通のロックになった結果ヒットせず、いまだにCD化も一度もされないという憂き目にも。

③地味になった
…これも意外とあるんですが、前作がヒットした結果、プレッシャーもあってか考えすぎてより曲が複雑になったりしてそのために曲自体がこじんまりとしてしまったり、クリアなポップさが失われるケース。Mr.ミスターの「Go On」はその典型のように思います。「キリエ」の大胆さはどこに行ったのだろうと。

ポール・ヤングの「ビトウィーン・トゥー・ファイアーズ」、コリー・ハート「フィールズ・オブ・ファイア」、ブライアン・アダムス「イントゥ・ザ・ファイア」という「炎」3作品もそのパターンのイメージ。
さて本題にいきましょう!まずはこの作品から。

ABC "Beauty Stab"

83年作。デビュー作にして大ヒット作となった「ルック・オブ・ラヴ」(The Lexion of Love)の余勢を買って登場したセカンドアルバムですが、そこそこ売れたにも関わらず、当時も今もあまり評価が高くない。CD化もなかなか再発されず、やっとリンクのように廉価盤として再発されたと思ったらなんとマスターは1991年のまま(やる気あんのか、ユニバーサルは)。評価が低い理由は前記で行けば「路線変更が受け入れられなかった」例ですが、オーケストラル・ヒットの前作からロック色を濃くした本作が今ひとつウケが良くなかったようで。とはいえ、曲自体は相当充実しており、シングルにもなった「そして今は…」「SOS」をはじめ、他の曲も良く、あえていうなら「ルック・オブ・ラヴ」並みのキラーチューンがなかったことが弱点ですが、総合的には良作。
注目曲:Default by Design / That Was Then But This Is Now / Unzip

John Waite "Mask of Smiles"

85年発表。これもなかなか再発されず、再発されたと思ったら前作「ノー・ブレイクス」との2in1だったり(現在は単独作として再発)。
前作からの「ミッシング・ユー」が大ヒットした後の作品で、当時ジョン本人も「最高傑作だ」と言っていたにも関わらず、微妙なセールス結果に。以後、ジョンも複数のコンピ盤などにもこの作品からはあまり収録したがらなかった模様。
内容はといえばジョンらしい哀愁さをどこか秘めたガッツあるロック・アルバム。捨て曲一切なし。そもそも「ミッシング・ユー」をそれほど好きでもなかった私は、ここからの1stシングルだった「明日へのステップ」でジョンにハマったわけで。
そもそもですけどね、ジョン本人が過小評価されすぎなんですよ。ベイビーズ、ソロ、バッド・イングリッシュとそれぞれのキャリアでヒット作を産んだ人ですよ。ヴォーカリストとしても非常に魅力的だと思います。
注目曲:Every Step of The Way / Just Like Lovers / Lust for Life

Electric Light Orchestra "Secret Messages"

83年発表。私のELO初体験がこのアルバムなので思い入れが深いことは抜きにしても大傑作。これも路線変更が嫌われた例かもしれません。彼らの個性だったオーケストラはすでに79年の「ディスカバリー」で終わり、続く「タイム」ではシンセ中心の作品へ、そして本作ではギターサウンドを中心に置いたものですが、ジェフ・リン自体が元々ギターロックが好きだったんじゃないかと。
本作は本来2枚組で製作される予定だったのが結果的に1枚になったもので、そのコンセプトはリンクの35周年盤で再現(完全に再現されたわけではないが)されており、もしこれから手に入れるならそちらをぜひ。
曲はいつものジェフ節でアレンジもよく整理されており、聞き応えは全キャリアの中でもトップクラスと思うんですが…。
注目曲:Secret Messages / Bluebird / Hello My Old Friend

Clark Datchler "Raindance"

90年発表。「シャタード・ドリームス」「反逆のヒーロー」などヒットを連発したジョニー・ヘイツ・ジャズをあっさり抜けたフロントマンであるクラーク・ダッチェラーの1stソロ…なんですが、当時は結局日本でしか発売されず(なぜ?)もちろんいまだに再発はなし。Amazonにはジャケ画像すらないわ。
所属レコード会社のヴァージンも目をかけて、めちゃくちゃ豪華な予算で製作されたと言われた本作。ジョニー・ヘイツ・ジャズが好きな人は文句なく買うべし。ちなみに本作は何度かクラーク自身も再トライをしたようで、現在ではデジタルのみで再録音(なのかリミックスなのかわからない)で1992年ヴァージョン、2010年にも数曲入れ替えて発表されています。流麗でセンチメンタルな彼らしさ満載のアルバムで、特にXTCのデイヴ・グレゴリーがギターで参加した「ドローイング・マイ・ソロウズ」は必聴。
あ、ジョニー・ヘイツ・ジャズは現在再結成しており、クラークも復帰して良作を出し続けてますのでそちらも是非。
注目曲:Drowing My Sorrows / Crown of Thorns / The Last Emotion

Todd Rundgren "A Cappella"

85年発表。このアルバムに関しては決して評価が低いわけではないんですが、全曲アカペラで「演奏」されたために異色作・お遊びとされてしまった感があります。再発もちっともされない。おまけにジャケットではトッドの顔がお面に入り切れておらず、ただでさえ「顔が長い」だのとリック・オケイセクと並んで言われていた人なのでそのことをバカにされたり。
内容はというと前述の通り前編アカペラですが、山下達郎の「オン・ザ・ストリート・コーナー」とは全くコンセプトが違い、コーラスだけではなく楽器演奏部分的なところまで人声を編集して作ったもの。後にアカペラ・ツアーをやるほどトッドはこのコンセプトにハマっていたことがうかがえますが、曲も文句なし、アカペラにしてしまったのがむしろ勿体無い曲も。
注目曲:Blue Orpheus / HoDja / Something to Fall Back on

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