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白ウサギの話1

メモ:白ウサギの話

大黒様が、意地悪ロッテンマイヤーさんの所へワニ鮫に毛をむしられた哀れな”赤むけ白ウサギ”を連れてきた。以前から意地悪ロッテンマイヤーさんが”可愛くて白い子ウサギ”を欲しがっていたのを知っていた大黒様は「哀れな赤むけでも、まあ、白ウサギは白ウサギだ」と寛容な心でウサギには安全な住処と保護者を、ロッテンマイヤーにはウサギを与えたのだ。

意地悪ロッテンマイヤーさんは彼女の流儀でウサギを迎えた。
鞭をピシピシ鳴らしながら哀れな赤むけ白ウサギを怒鳴り、乱暴な言葉で殴りつけ、時には本当に鞭でウサギを打った。
「きちんとなさい。きちんと。あなた、白ウサギでしょ?白ウサギらしくなさい。何ですか、そのみっともない赤むけの様は。」
「ヒリヒリするですって?大げさなことを言うんじゃありません。下らないことを言うのは今すぐにやめて、私の言うことをしっかりお聞きなさい。いいですね?」
「きちんとなさい。私があなたに望む通りに、きちんとなさい。白うさぎらしくなさい。他の白うさぎと同じになさい。何ですか、そのみっともない赤むけ!まるでミミズね。」
「赤むけウサギ、無力で醜いあなた自身を恥じなさい。私、本当に迷惑してるのよ。あなたみたいなウサギがこの世にいるなんて、本当に迷惑だわ。私の目の前にあなたがいる。
ああ、こんなの、本当にうんざりだわ!」

哀れな赤むけ白うさぎは、一生懸命に意地悪ロッテンマイヤーさんの言うことを聞いた。
意地悪ロッテンマイヤーさんは意地悪なんですけど、時々女神さまのように優しい笑顔と声で何者かと話をしていることがありました。ウサギは意地悪ロッテンマイヤーさんの望む通りにきちんとしたら、いつかあの優しい笑顔と声で「私の可愛い白ウサギよ。」と言ってもらえるだろうと希望を持ち、何を言われても赤むけのみっともない自分が悪いのだ、と反省し、一生懸命に自分に向かって投げつけられる言葉を集め続けた。

そうこうしているうちに、赤むけウサギの皮膚はどんどん荒れてますます哀れな様子になってきた。あまりに身体がヒリヒリと痛いのでウサギが泣いていると、そこへ何だか目つきの悪い”星一徹段平”がやってきた。
星一徹段平がガラガラした声でウサギに怒鳴る。
「お前は何者だ?元ウサギか?立て。痛みなど何だというのだ。痛みを嘆いてものの役にたつか?」
「ものの役に立つのは根性だけだ。泣くのはやめろ。」
「お前を痛い目に遭わす奴はお前を愛しているからなんだ。それを嘆くとは、性根が曲がっておる。鞭で打たれたらありがたく思え。それがこの世で得られる唯一絶対の慈悲だ。」

哀れな赤むけ元白ウサギは、一生懸命に星一徹段平の言うことを聞いた。
さもなければ、鮫のいる川へ捨てられてしまうかもしれない。白ウサギが赤むけウサギにされた鮫のいる川へ捨てられるほど恐ろしいことはない。赤むけウサギが鮫の川に捨てられたら、今度は”骨だけウサギ”になってしまうかもしれない。

それに、だいたいが「大黒様の言付け」ですからね。そのままそこにいなくちゃいけないような気がしていたわけよ。

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