疑似的生命だった、 / 20200920

どうぞ、席について、つまらない話しか出来ないけれど。僕の黒い充電コードはまだそこらに転がっているのかな。ソファの裏とか。あ、この家にソファはないんだっけ。失敬。でも、痕ってなかなか消えないから、黒い机とか、黒い窓とか、黒い羊とか、ガラス越しに見ていたミイラみたいに、いつかこっちをフイと向きそうで、怖いんだよね。展示硝子、埃っぽいなんて思っていたけど、沢山階段を昇ったら、楽しかったよ。天国に一歩一歩と近づいている気がした。気にしないでね。今僕は引っ越しをしようと思って、きみには古い本しかないけど、よければ。きみと僕は何故か仲が良かったから、ひとつくらいは心が通じるものがあったのかもしれない。それももう切れそうだけど。きみは悪くないんだ、僕が、此処に居てはいけなかっただけで。午前4時になると、息が苦しくて、ベッドが心地悪くて、気味悪いよ。何の仕業だろう。きみに分かる訳はないか。お医者様にも分かってもらえなかったんだ。健常者のきみには…。ごめんごめん。本はもう選べた?僕を気持ち悪いと思ったとしても、本には何の罪もないから。最初からきみと出逢えていれば良かったのにねえ。苦し紛れに、ああ、咳が止まらなくなっちゃうんだ。紛い物の身体には、こころが合ってないみたいなんだ。ゆるしを得たい時だけ得に来て、その態度が気に入らなかったらしい。僕に悪気はなかった、いつだって誠実に生きていたはずなんだ。それが、この世では間違いだったらしい。ずっと空回りしていたんだ、ずっとね。きみとか、きみじゃないひととか、沢山僕を止めてくれた。それが僕を如何に生き永らえさせたか、素晴らしい慈善活動だって、今後のリレキショに、あぁ…なんでもないよ。ああ、気を付けて。そこは床が弱っていて、そう…本をたくさん積んでいた所為で。広い家だろう?それももう、僕のものじゃなくなる。こんなお化け屋敷みたいな家、誰も買い手が見つからない。いや、対価なんて要らないから、この家を僕よりも永く生き永らえさせる手段って、無いものか。きみだって市街地の便利さを手に入れたら、この辺鄙な場所は、不便で仕方ないだろうから。相当の覚悟がいる。裏庭では、猟銃で野生生物を仕留めてね。生命って、本当に脆い。僕の意袋の中にいくつの魂が眠っているんだろう。ぼくは彼らと一緒に生きているのかな?……きみとも、一緒に生きて行きたかったな。あはは、食人なんて、柄じゃあないけど。僕の戯言はいいとして、暗くなる前に選んでしまってよ。

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