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タレ

串カツ田中というお店は、ファミリーに人気だ。12月のことになるが、家内が、テイクアウトで串カツを大量に買い込んできたのだ。

長男が、引越の前に、一時的に帰ってきていた時期である。

串カツ田中、いい店です

家内のこだわりポイントは、ポイ活とクーポンと、節約である。

だが、還元キャンペーンなどがあると、普段は食べないようなものに手を出したりする。子供からのリクエストがあればの、ことであるが。

今回は、次女からのリクエストだった。


たまたま、長男と次女が、外出から帰ってくるタイミングで、テイクアウトで購入して持ち帰るということになった。

長男と次女が帰宅してきて。そして、事件は、起こった。

なんと、タレが入っていなかったのである。お店まで戻り、タレをもらってくるというには、お店は、遠い。長男と次女は、諦めて食べようということになった。


ところが。


家内が、声を上げた。


ちょっと、これは、だめよね。


そして、スマホをとるや、レシートの電話番号に電話をした。


家内は、しばらく次女の部屋にこもって、電話をしていたが、ほどなく、笑顔で出てきた。

そして、こう、言った。

レシートを持ってきたら、同じ内容のものを、タダでお渡ししますって。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。

6,000円以上、買ってたよね。

よく、お店に、そう言わせたな。

女王陛下(注1)。


私は、一応、聞いてみた。

なんて、言ったの?


すると家内は、したり顔で。

串カツ田中は、秘伝のタレあってこそ、最高に美味しいんでしょって、言っただけよ。


ひゅーと、肌寒い風が吹いた気がしたが、気のせいだったのだろう。


翌日。次女が、戦利品を持ち帰ってきた。そして、秘伝のタレを存分にかけて、みんなで笑顔で食した。

これぞ、秘伝のタレ


家内が、あまりにも笑顔で笑うので、私は、1クール(注2)の自主トレ(注3)を申し出た。


家内は、マッサージをすると、上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。


だから。


これで、いいのだ。


存分にタレを使ったが、まだ、余るほど、タレが入っていた




(注1)女王陛下とは、家内のことである。私に、ときどき、ミッションを与える、指揮命令系統の最上位者なので、ときに、家内のことを、そう呼ぶ。

(注2)我が家のマッサージは、家内が録画したドラマやバラエティ番組を見ながら行うことが基本なのである。1クールとは、ドラマ一本分。つまり、1時間を意味する。

(注3)私は、家内のマッサージを、よくする。家内に促されずに、自らの申し出で家内のマッサージをすることを、自主トレと、勝手に呼んでいる。



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