良い子
私がまだ幼い頃のことだ。父が私に、何か言いつけをする際に言う口癖があった。
「コジ、良い子だから」という、枕詞をつけるのである。
「コジ、良い子だから、机の上のペンを取ってくれないか」とか、そんなふうに。
ごく幼い頃は違和感はなかったが、さすがに、小学校高学年、中学手前になると、おいおい、ちょっと待ってよということになる。
さすがに、今の家族で、そんなことなど言われることはないだろうと思っていたが。最近、家内が、言うようになってきた。
コジくん、優しいから、リモコン取って。
……。
それは、私に何かさせようとして声をかけてくる、ケーシー(注1)の、常套手段だった。ただし、私が幼い頃の。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
「良い子だから」が、「優しいから」に、微妙に変わっているが、な。
父は、悪ガキだった私のことなど、決して良い子だとは思っていなくて。外で「良い子」とは言われないであろうことは、よく知っていて。だからこそ、その言葉で釣ってきた。
ならば、家内は。私のことを、優しいとは思っていないと言うことか……。
解釈が難しい。
家内に、ケーシーの口癖のことを話していたら、知らぬ間に、なぜだか家内の脚をマッサージしていた。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
まんまと、ハマってるな。
……。
まあ、私は、優しいのだから、いいか。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて、平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)ケーシーとは、父のあだ名で。子供たちが出来てから、愛称として使うようになった。
■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。
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