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ハンマー

時の流れは早いということで。次々と、会社の同僚達が、現場を去ってきている。

私の職場は、営業部門で。半年に1度、デモ機材の廃棄をするのである。

取り扱っているのが業務用の機器で。大きさが、かなりある。

それを、ひとつひとつ、この手で壊していくのである。

証拠写真の、廃棄前プレート

デモ機ということで、必要以上に稼動し、使い果たしているとは言え、まだ使える。だが、モデルが変わると廃棄せねばならず。廃棄は、ほんとうに、勿体ないのだ。だから、関連部署などに下取りを募り、なるべく継続して使ってもらうのだが。どうしても、行き先のないものを、仕方なく廃棄する。

今まで、廃棄の時は、職場の同僚と役割分担をして臨んでいた。

若い、元気なものは、機材の運搬を。先輩格は、記録や、写真係で。年配者は、廃棄分の分別を。そんなふうに。

我々は、自らをデストロイヤーズと名乗り。体力を使うその日一日、怪我の無いようにと祈りつつ、なるべく愉快な話をしつつ、作業を進める。

一番の花型は、デストロイヤーズ・レッドという、ハンマー係である。

デストロイヤーズ・レッドの秘密兵器

機材に致命傷を与え。そして、廃棄物としての証拠写真を撮る。

その、レッド役をやっていたのだが、去年から交替し。とうとう、若手に譲った。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

なんだか、流れ的に、寂しいじゃないか。



うむ。諸行無常だな。


だが私は、いつも。機材にトドメを刺す前に、祈りつつ、ハンマーを打ち下ろす。

これが、せめてもの、この世に生まれてきたデモ機材に対する、敬意なのである。


この日も、夕刻、仕事が終わった。そして、宵の月に祈りつつ、帰路についた。



そんなこんなを家内に語ろうとして。後ろを振り向くと、家内が笑っていた。


代替わりを報告すると、家内は、お疲れさま。でも、マッサージマンは、まだまだ廃棄しないから。と、私に喝を入れてくれた。


マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて、平和である。



だから。


これで、いいのだ。

このパネルを貼られるのも、そう遠くない未来だ



■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。





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