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ショートショート_一件落着

走らないで歩いてなどいられなかった、学校の廊下。高校になっても、悪ガキの性格は変わらず、落ち着くことは無かった。そんな高校時代に、さわやかな青春などなく、なんとなく燻っていたのを、秋の文化祭シーズンになるたびに思い出す。

小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、木曜日に出る。

そして、今回のお題は、「走らない」から始まる、小説、詩歌、エッセイということで。

今回は、自らの記事を書く前に、山根あきらさんの記事を読んでみた。

山根あきらさんのこの短歌は実に面白い。でも決して受けを狙ったものではなく、淡々と書かれている。「はしらない」は、縦読みの頭に設定されていて。だが、最後の節になると、諦念というか、達観というか、そういうものさえ感じられて、人生、結局は走らないほうが眺めがいいのだろうと、妙に納得してしまう。

山根あきらさん、私のようなものが紹介できる人ではないが、学びの記事を連投される、とんでもない哲人である。



そして、たらはかにさんからのお題は…。

表のお題が「スベり高等学校」で。裏のお題が「壁に少々らっきょう」ということだ。

お2人とも、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって、お題を出すだけでも、大変だと思うのである。

それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。たらはかにさんは、今、インフルに罹っているという。どうか、大事にしてほしいと思う。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。

せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉と、たらはかにさんの裏表のテーマ、3ついっぺんに書くなんて、やはり、お二方に対して、だいぶ失礼なんじゃないかな。



うむ。むしろ、勿体ない。タイトルも勝手につけねばならないしな。


だが。私のサイクルは、日曜日がヘタな創作の日と決めている。小牧幸助さんのシロクマ文芸部も、たらはかにさんの毎週ショートショートにも参加したい。一方、自分のサイクルもできる限り守りたい。そして実力的に、1日に複数作書き上げる力量など無い。だから、昼からお題3つををすべて入れ込んだ荒技で、どうにか書き上げるしかないのだ。



心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

まるで悪ガキ、駄々っ子だな。



うむ。まさに。



そしてもう一度、心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

家族からのお題は、バックアップで書いたの?


まあ、ぼちぼち、な。


さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「一件落着」約410字を、どうぞ。


☆         ☆         ☆

走らないようにと普段は言われていたが、突然の大声にみんなが中庭に走った。

高校での学祭で。カレーに異物が混入していると、客が文句をつけているというのである。

客はどうやら外部者で。いかにもお行儀の良いタイプではなさそうで。対峙している泉は、不手際は無かったと冷静に沈着に対処している。

それでも客は罵詈雑言を浴びせかけ、しつこく食ってかかっていた。

泉は徐にスマホを取り出し、客自身が異物を混入させている決定的瞬間を見せつけた。


勝負あった。


だが客は逆上し、カレーを泉に投げつけた。

その瞬間、人影が瞬時に間に入り、皿ごと受け止めた。何もこぼさず。


暴漢は恐れをなして敗走し、派手に転んで救急車で運ばれる羽目となり。

らっきょうがひとつ壁に張り付いていたが、一件落着となった。


あの、お名前は?

泉が問うと。

名乗るほどの者ではありませんと言い残し、卒業生らしき青年はゆっくりと去って行った。


翌春、涼と泉は大学の文芸部で再会を果たすのである。

☆         ☆         ☆


■追記■
面ゆるって、なに?
それは、これ。西尾さんはじめ、みんな、面白い作品をあげていて。
私は、だいたい土曜日の夜に、そこそこの過去記事をあげています。
もしも、お時間があれば、みんなの作品、読んで頂けたら幸いです。


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