見出し画像

俺たちのandymori、永遠に

音楽が好きだ。ロックバンドが好きだ。

クリープハイプに前頭葉をフルスイングで殴られてからずっとずっと音楽を聴いてきた。好きな人に振られた時も、一発逆転お付き合いできた時も、体育を休みまくって保健室でひたすら寝ていた時も、私には音楽があった。

今やサブスクリプション等で誰でも音楽が聴ける時代。音楽好きなんてものは特別珍しくはなくなった。だから私もあんまり「音楽が好きで〜へへへ」とは言わなくなった。辛いものが好きです、ビールが好きです、美容室に行くのが趣味ですと言った方が話はずっと広がる。


そんな大音楽時代な世の中でもまだかなりの頻度で聞かれる質問がある。

「何系の音楽が好きなん?^^」

これである。なんか悪意ある感じになっちゃったけどこの質問をしてくる人のテンションって大体こんな感じじゃない?個人的にはこれ聞いて「TWICEですかね!」とか「LDHがマジで好きで!」とか言われたら何も喋れないのであんまりできない質問だと思ってる。(私がその界隈に無知なのでという意)

勿論ある程度相手の好きなジャンルが分かってて、自分もその辺の話題にある程度ついていけそうなら私もする質問だし、『「何系の音楽が好きなん^^」って聞く奴死ね』という話がしたい訳ではない。


この質問に答えるのめちゃくちゃ難しくね〜〜?という話がしたいんだよ。


これマジで難しいと思う。もう世界一、この音楽しか愛せない!というものがあれば楽だ。あるいは90年代ロックなら全般好きだぜ!みたいなのも話しやすいだろう。そのどちらにも当てはまらない場合みんな結構悩んじゃうんじゃないかな〜と思っている。

私も音楽が好きだし、音楽系の部活動や習い事をずっとしていることもあって、この手の質問は割と聞かれる。聞かれるたびに悩んできた。私を表す音楽ってなんだ。

だけど最近、andymoriこそが自分の好きな音楽そのものなのではないかと思うようになった。


andymori、アンディモリ。皆さんご存知ですか。今はもうこの世に存在しないバンドです。私が好きなバンドはみんな解散してしまう。

andymoriは2007年に結成されて2014年に解散した。解散を発表した直後、ボーカルの小山田壮平が約4.5mの高さから川に飛び込んだ。一命は取り留めたものの、解散ライブは1年後に延期となり騒動の中でandymoriはおしまい、二度とこの世からいなくなってしまった。


本当に凄いバンドだった。


こんなの最初のドラムでノックアウトだろ。ステージ上にはギターとベースとドラムだけ。andymoriはスリーピースバンドだった。疾走感。とにかく音がデカい。ベースが一生弾き続けている。バスドラムもデカい。コーラスの声もデカい。

これでボーカルの声がウルフルズとかそういうガテン系な感じだったらここまで心を鷲掴みにされることはなかったと思う。ボーカルの小山田壮平の声が、この声がandymoriの最大の魅力だった。この誠実で優しくて寂しそうな声が、彼らをandymoriたらしめていた。

みんながandymoriに熱狂していた。ラブシャの会場をパンパンに埋めて、3人だけのステージで演奏していた彼らは本当に最高だった。


冷蔵庫の前でなんだかつまらなくなって
散歩してみたけど
それでもやっぱり沈んでしまう日は
クラブナイト / andymori

andymoriというバンドの曲は寂しさの解像度が高すぎる。理由もない、ただ寂しい夜って冷蔵庫を意味もなく開けてみたりしませんか?別にそこには食べたいものもないし、そもそも何か食べる気分じゃない。でもあの青白い光を見るためになんとなく冷蔵庫を開ける夜。

その次が散歩。落ち込んでいる時は、家から一歩でも出れば何か変わるような気がしてしまう。実際は何も変わらないのに。

冷蔵庫と散歩。寂しいという単語がなくてもその2つがあるだけで、この曲は誰もが必ず感じたことがある鬱々とした気持ちに寄り添ってくれる。

そういう漠然とした悲しさとか寂しさとかって、私たちにとって失恋よりもずっと身近なものなのに歌にされるのは失恋の方で。でもandymoriはこういう寂しさを分かってくれている。歌にしてくれる。それにどうしようもなく助けられた日が何度もあった。


大好きな曲。私は18歳の時、いろんなことが重なって上手に眠ったりご飯を食べたりすることが難しくなってしまったことがある。今思うと本当に危ない状態だったし、もっともっと自分を労わるべきだった。でもその時は自分の状態が正常に認識できなくて、めちゃくちゃなことばかりしていた。苦しかった。

何にも考えなくていいよ
投げKISSをあげるよ
銀河の果てで彷徨う君に
投げKISSをあげるんだ
投げKISSをあげるよ / andymori

あの頃布団の中で丸くなってこの曲を何度も聴いた。当時の私は「銀河の果てで彷徨う君」そのものだった。出口の見えない暗闇のような絶望感をそう歌ってもらえたことで、私は救われた。自分がいるところは暗くて汚い泥沼だと思っていたけど、それは真っ暗だけど綺麗な銀河なのかもしれない。そう思えたことはどんなファイトソングを聴くよりも嬉しかった。


私は4年前からベースを弾いている。思えば高校生の時にこの曲に出会ったことで、ベースが私にとって特別なものになった気がする。

正直ベースという楽器は目立たない。これを読んでいる人の中にも自分の聴いている音楽のどれがベースか分かる人はあんまり多くないと思う。でもandymoriのベースは、他のどんなバンドよりも存在感があった。

めちゃくちゃ難しいフレーズを弾いている訳でもスラップを多用している訳でもない。スリーピースバンドらしい無骨なベーシストだ。でもなぜか存在感がある。それが本当にすごいと思う。

「ベースマン」の冒頭と間奏、アウトロにはベースソロがある。これはandymoriとしてはすごく珍しい。彼らの曲はあまり各楽器のソロがない。3人で底から押し上げるような音楽を作るバンドだ。でもこの曲だけは違う。普段必要以上に目立つことがないベーシスト藤原を最大限に活かした、曲名通りベースのための曲なのだ。

行こうぜベースマン
3m隣で鳴らす夢の続き
ベースマン / andymori
愛してるなんて まさか言わないぜ
風と共に行くだけさ
ベースマン / andymori

最高じゃん。

大学時代からずっと一緒にやってきた小山田さんと藤原さんの関係はこれなんだよな。ボーカルにとっていつでも3m隣に居てくれるのがベーシストなんだよ。

ベースは目立たない。でもいつも最高にカッコいい。それを改めて実感させてくれる曲だと思う。ギターとベースの違いも分からないような方にこそ聴いてほしい曲かもしれない。みんなでベーシストになろうぜ!


私は歌詞が好きなバンドを好きになることが多い。でもandymoriだけは、なんていうか一音目から全部好きなのだ。彼らが鳴らす音ひとつで細胞がびりびりと痺れるのを感じる。出会って何年経ってもその感覚は変わらない。だからやっぱり私はandymoriが好きなんだと思う。

別に誰もが自分が1番好きな音楽を決めなきゃいけない訳じゃない。でもせっかく音楽好きに生まれたなら、死ぬまでずっと大好きだろうなっていう音楽があれば最高だと思う。andymoriというバンドはもう新曲が出ることはないけど、それでも私にとっては死ぬまで褪せることのない大好きなバンドなのだ。

そして私だけでなく、他の誰かの1番にもなり得るバンドだと思っている。「何系の音楽が好きなん?^^」という質問にお困りの皆さん、是非andymoriを聴こう。彼らは永遠です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?