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スケッチブック -- 心の風景

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自作の短編、詩、心象風景をつづった記事をまとめています。
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記事一覧

作品を解体せよ

失明する前に通っていた小学校の体育館(そこは卒業式の行われた場所でもある)に、級友ととも…

夏のおもいで

垂直に落ちる光はぼんやりと瞼を濡らし浮かぶ残像 父親がパチンコへ行く日曜の昼ごはんはぬる…

雨のまにまに

教科書をわざと忘れたその訳は隣に君がいてくれたから 傘のない濡れる背中を追いかけて影が重…

たんすのお花畑

 たんすの一番下と下から二段目には女の子のお洋服が入っています。  下から三段目と四段目…

夢は語る

夢は語る。 「過去に囚われず、今を生きろ」 夢の詳細は覚えていない。 でも目覚めたとき、心…

モノローグ

自分が劣った人間であるという自覚は、障害を持つ以前から持っていた。 兄の障害、親の低学歴…

また明日

 別に学校が嫌になったわけじゃなかった。むしろ学校は楽しいとすら思っていた。それが突然、夜眠れなくなり、その分昼間起きられなくなって、行きたくても学校に行けなくなってしまった。  しばらくすれば治るだろうと最初は暢気にしていた両親も次第に心配になったようで、僕を駅前にある大きな大学病院へ連れて行った。  結果はさして変わらなかった。長い質問をされたり、知能テストのようなことをされたり、ときには意味の分からない検査もしたけれど、特別重大な原因が見つかることはなかった。  以後

文学の門

どうしてろくに役にも立たない文学など存在するのか。 もしそう聞かれたら、どう答えればいい…

光のうた

目には決して見えぬ 心の奥に潜む 存在の根に揺蕩う 水の調べを聞け 水は遍く宇宙を巡り かな…

未完成のスケッチ

 ドクターTには名前がない。あるいはそれが今の彼の本当の名前である。昔はもう少し普通の名…

はじめてのクリスマス

 ゆかりが眠れなかったのは寒さのせいだけではありませんでした。今夜は生まれてはじめて我が…

花瓶

ざらついた手触り 取り立てた絵柄もなく 実は少し罅が入ってすらいる 嫌で嫌で いっそ叩き割…

私が子供だった頃

 私が子供だった頃、天気予報は気まぐれなものだった。「今日は一日晴れるでしょう」との言葉…

星空の秘密

 掃除当番だった良太は昼休み、教室のゴミを一まとめにし、中庭にあるゴミ捨て場へ捨てに行きました。  小屋の古い木戸を開け、ゴミ袋を奥へ放り投げると、どさりという音がするより前に、背を向けて駆け出しました。ゴミ捨て場はいつも鼻を衝く強烈な臭いがするからです。  花壇のところまで来ると、良太はようやく走るのを止め、ゆっくりと歩きだしました。ちょうど一息ついたそのとき、目の前に蝶がふわふわ浮いているのを見つけました。四枚の羽根が目を引くほどに黒く、それでいて日の光を浴びると、赤