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映画「クソ野郎と美しき世界」をみた。

私はSMAPのファンではないのだが、この映画は劇場で見てきた。SMAPファンの友達が「前売りのムビチケ買ったけど流石に2週間で4回も観に行く暇がない」といってチケット譲ってくれたんだけど、そうでなくてもお金を出して観に行く気はあったのだ。

他には誰が出演してるか、とかも事前には全く知らなかったんだけど、監督として園子温が参加するという話を小耳に挟み、(最近のは知らないのだが)PFFで大賞をとってデビューした頃の映画だけ観たことのあった私としては「ほぇー、園子温とアイドルって、どんな映画になるんだろ?」と興味があったのだ。

期間限定公開だし、ものすごく混んでるのかしらと思って予約してみたけど、案外あっさり中央席も取れて拍子抜け。SMAPファンはライブにいっても映画とかは観ないのかしら…?と訝しみながら劇場へ。

映画はオムニバスで、園子温の監督作は一番最初の稲垣吾郎主演パート。観てみて、なるほどこれはSMAPのファン層がリピートするには厳しいかもしれん、と思った。良くも悪くも20世紀末ムービー感がすごい。私はこういうナンセンスなテイストがめっちゃ懐かしくて、普通に楽しんじゃったのですが。

私が劇場で見たことのあるたぶん唯一の園子温作品は「自転車吐息」という1989年の作品で、考えてみたらもう30年近く前の映画ということになる。正直内容はよく覚えてないが、映像の疾走感がすごく良かったのだけ覚えている。で、今回の映画でも、園子温は延々役者を走らせていた。相変わらずだなぁ、と思ってちょっと笑ってしまった。内容は他愛ないが、この徹頭徹尾バカバカしいパートは、コメディ俳優として傑出したタレントを持つ稲垣吾郎でなければこなせなかったろうなと思う。

ファンタジックな香取慎吾パートはファンなら一番グッとくる部分だったのではないだろうか。歌を喰われた歌手、という物語設定も挑発的。本人の描いた絵も出てきて、あー本当に多芸多才な人なんだなと思った。このパートの相手役の女の子が三白眼の美少女で、すごくいいなと思ったら、小学生なんですってよ!中島セナちゃん。将来が楽しみ。

昔のオリーブとかに載ってそうなモデルさん。いいなぁ。

草なぎ剛パートはハードボイルド風味のロードムービー。彼はダークな役やらせるとすごくいいので、これもピタっとハマっていてよかった。一番普通の映画っぽいパートだった。相手役で尾野真千子まで出てくるとは驚き。太田光はタケシに続く芸人監督になるのかしら。

総じて脇役が贅沢で、ナルシー登場のエンディングも豪華キャスト総出で全力でふざけてるし、一言で言えばめっちゃゴージャスな自主制作映画って感じなんだけど、とにかくこの人たちが闘ってるんだな、ということは感じた。

SMAP時代にひと財産作ってるだろうし、どのメンバーも別にアイドルにこだわらなくても食べていけるタレントだ。そもそもアラフォーのおじさんなんだし。でも、この人たちは敢えて新しい道を切り拓くことにしたんだなぁと、ちょっと感動してしまった。

私はSMAPが最も「国民的」アイドルだった時期に、ちょうど離婚やら子育てやらの忙しい時期が重なっていて、強い思い入れを持つほど活動を見てきたわけじゃないのだが(ファンではない、というのも、嫌いという意味じゃなくて、単にピーク時をよく知らないのだ)、それでも曲を聴けばなんとなく聞き覚えのあるものばかりだ。

その有り余る持ち歌をアラフォーにもなって全部封じられたところから新しい歌を歌いはじめるって、なんかすごいことじゃないか。

平日夜の女性が多い客席に、唯一男性一人で見に来てた三十路か四十路ぐらいのサラリーマン風の客がいたのが印象的で、そうか、しがらみだらけでままならないことの多い中年サラリーマンにとっても、この人たちは勇気をくれる星なのかも知れんなぁなどと思った。誰かに頑張る元気を与えることがアイドルの仕事の本分なのだから、実際この人たちはプロのアイドルなんだなぁ、としみじみしてしまった。

基本的にはB級映画だけど、いろんな意味で同時代性を感じさせる脚本もなかなか巧みだったし、テイストの違う三人の監督の作品を、よくねじ伏せて一作品にしたな、という点でも面白かったので、私は自分でお金出しても損した気にはならなかったと思う。この先彼らが何をやるのかも楽しみだな。

#映画 #新しい地図 #クソ野郎と美しき世界

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