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納棺師が繁忙期というのは不適切かもしれないが

繁忙期です。

納棺師という職業は人が亡くなる事で業務が発生するので、繁忙期ということは人がたくさん亡くなるということなんですよね。
言い換えればかきいれ時とも……まあ不適切!

まあ、納棺師に限らず葬祭関係は人が亡くなることにより利益が発生する業種なので、感覚は普通の民間企業とあまり変わりはなくてですね……ちょっとだけ利益発生原因が特殊なのと公共性が若干高いくらいで。

そんな訳で今現在、業界的には繁忙期です。
そんでもってたぶんピークタイム突入中。のはず。
例年だいたい11月中旬~翌3月頭ぐらいですかね。
年間の死亡事案の7割くらいはこの間に収まってる感じです、あくまで体感でだけど。

もちろんその年ごとの差はあるので、自分が納棺されそうな勢いで忙しい年もあれば、帰宅後、優雅に夜のティータイムを楽しむ余裕のある年もありまして……今年はどっちかっていうと後者です。
いや夜のティータイムとか嗜む属性ではないけど。

日延べが被る友引とかは目が吊り上がる程度には忙しいけど、それ以外は、あれ?定時に帰れるよ?って日もあったり。年明け急に寒くなった頃はドバっと忙しくなったのですが、現在それもすっかり収束しつつあり……暖かいんだなやっぱり今年は。

ただ、それでも冬ならではの死因はそんな中でも結構な割合を占めていて、この数週間で日に平均1件以上は棺に入った(いわゆる警察案件)故人様とこんにちはをしています。

警察案件といっても事件性はなく、業界?用語で宅没と言われる看取られることなく死亡状態で発見される故人様のことでして。

死因は心筋梗塞、脳卒中とかが多いのですが、季節柄、入浴中や前後のヒートショック起因の確率が爆上がりするんです、どうしても。
寒いもんね、入りたいよね温かいお風呂に……

宅没で亡くなられた故人様は、大抵は一旦警察を経由して遺体検案ののち遺族のもとに戻ってくるのですが、警察に移送される際に納体袋(通称グレーシート)に入れられて移送されてそのまま安置されており、警察にお迎えに行く際に、葬儀社が用意した棺に収めてお連れする場合が多いです。
ちなみにグレーシートの中は基本全裸です。

全裸ですし、状態が変化してることも多いので、この段階で湯灌、納棺オプションを提案されるのがほぼマストでして、必然的に私たちが警察案件の故人様のお世話をすることになるのです……
きちんとおねまき着せてくれる葬儀社さんもあるにはあるけど、あんまりないよね。

そんなこんなで、呼ばれてきた私たちは、棺に入った故人様をそこから出して、お風呂に入れて、着物着せて、顔造ってまた棺に納めるのです……
故人様からしてみたらたらい回しからの、こねくり回されていい迷惑じゃなかろうか…とたまに申し訳なくなったりしますよ正直。
まあ全裸めっちゃ寒そうだから、お衣を着せて差し上げるのぐらいはお許しいただきたいところですが。

ちなみにこの手の案件、数年前から年々確実に増えてるんですよね。体感が~とかでなく実数で。

防ぎようがない部分もあるんですが、もう冬になると憶えてないくらい遭遇するので、数年前から毎年繁忙期の始まりあわせて、独居の母のLINEに「湯船につかるな、夜風呂入るな、暖房入れろ、いいから暖房入れろ」と数日おきに送るようになりました…定型文なのでほぼbot。本人はものすごく嫌がっているのでだいたい既読無視なのだけど。

まあ、でも後悔したくないし、嫌がらせみたいでも注意喚起bot大事よね。


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