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『給料の上げ方』に見る転職の次の展開

 金曜日までの5日間、よく働きましたが、一方で、明けた土・日、友人とランチやら、マッサージやら、昼寝するやら、しました。

 そういう疲れを癒やす行為もしつつ、忙しさのあまり、この2~3週間休んでいた読書習慣を取り戻そうと、本屋に行き、数冊の本を買い求めています。

 この土日で、3冊の本を読了したのですが、それぞれいい本でした。

 日曜日、昼寝をはさみつつ、数時間で読んだ『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』(デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社刊)という本は、なかなか強烈な本でした。

 氏は、1965年イギリス生まれ、オックスフォード大学で「日本学」を学び、1992年ゴールドマン・サックスに入社し、日本在住33年、現在、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社の会長兼社長、また、日本政府観光局特別顧問を務めるなど、ものすごく大変に日本通の方です。

 この著作は、氏がおそらく日本語で認めたものであり、非常に整った筆致で書かれています。

 イギリス生まれの著者がこのようなしっかりした日本語の文章、しかも、理路整然としたものが書けるなんて、驚嘆に値すべきことだと思います。

 少し毛色が違いますが、戦後の台湾総統で、東京帝国大学で法学を学んだ李登輝氏は、日本語の本をよく読むなどしていたそうですが、氏が、日本語で書いた本を読んだことがあります。

 その日本語のあまりの美しさに、私は、心の底からびっくりしたことがあります。

 もしかすると、高い知性の持ち主の外国の方が、純粋に日本を愛し、日本語を学ぶと、逆に日本人よりも、ずっと美しい文章を書いてしまうものなのかもしれません。

 話を戻しましょう。デービッド・アトキンソン氏の先の著作では、日本人の給料水準が、この30年間、全く上昇しなかったこと、それは端的に言うと、人口減少と労働生産人口割合の減少に起因するとともに、この日本には、継続するイノベーションがなかったからだと断言しています。

 他の先進国との間の給料上昇率の差が、年に1%だとしても、30年の間には、とんでもない差が生じてしまうのです。

 「あぁ~。“失われた30年”。」 氏の日本における職歴・在住歴と符合します。

 その解決策はあるのか、と言ったら、日本人各人が、その「現状維持」的性質を取り払い、「このまま給料が低いならば、転職するぞ!!」という実行もともなう意識で、給与交渉に臨むことであると言い切ります。

 どういうことかというと、日本人ならではの勤勉性でもって、転職しない人が多く、そのため、会社の経営層は、もともと聖人君子ではありませんから、その足下を見て、給与を上げないというのです。

 つまり、転職が当たり前の社会ならば、給与水準が低いから、転職するということになり、会社の経営層は、給与水準をイヤでも上げざるを得なくなるというのです。
 ※実際に、世界のデータを見ると、勤続年数の長い国ほど、給与水準が低いと出ているそうです。

 昨今、自分のいる職場でもそうですが、若い人が転職するケースが増えています。労働環境は、必ずしも良好と言える場合ばかりではなく、給与に見合ったものではない、ならば、転職するか、というものでしょうか。

 この傾向は、職場に残される私たちから見ると、一人あたりの業務量が増えるばかりで、問題だと思っていましたが、転職が増えると、経営層はイヤでも、給料水準を上げざるを得なくなるという指摘は新鮮でした。

 昨今の転職増加の先には、給料上昇の波があるかも…、と期待も抱かせる一冊でした。

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