裏シャンクの延期とCoccoと自粛生活

(ファンにはもう慣れっこの)数年間に渡る音信不通状態からの突然の絵本、アルバムの発売、個展、ツアー”スターシャンク”の開催、そしてその終了後に発表された”裏スターシャンク”ツアー。

これまで行ったことのないところ・小さな箱で&”裏”・dark side queenというコンセプトだったので、これは是非行かねばと、ぎりぎり休みが取れそうで、先に予約を取ってしまっていたニュージーランド旅程とも重ならない長野と秋田公演のチケットを押さえていた。

しかし、コロナウイルス感染者の増加と共に、大阪のライブハウスでのクラスター発生報道もあり、さらに、公演翌日に出勤しなければならないため終演後に夜行バスで帰宅する予定だったのもあって、どう考えても行くべきでない状況になってしまった。

もちろん行きたいんだけれども、たとえ開催されたとしても行けないかな、本当に残念・・・と思っていたところ、2月の終わりに公式からも、まずはツアーはじめの公演の延期が発表された。

中止でなく延期というのは嬉しかったけれども、既に振り替え日程が決まっていた長野公演は6月で、ウイルス流行の状況が良くなっているとは思えなかったし、休みや(安全な)移動手段の手はずを整えるのが難しかったので、泣く泣く払い戻しをした。

その後も感染者の増加は続き、(私はニュージーランドにも行けなくなり、居残りのまま)4月に入る直前、秋田公演の延期が伝えられた。こちらもまた振り替え日程が微妙なところになってしまった。

本当に聴きたい楽しみなツアーだったのに。残念すぎる。というのもあるんだけれども、絵本発表後のCoccoはかなり精力的に活動をしようとしていて、まあ、いわゆる”ハイ”状態。それが釘を刺された状態になっているわけで、時勢的にも塞ぎ込んだりしてしまわないかなというのが一番心配だった。

一見元気そうでも、必ずしもそれと心身の状態が一致しないのがCoccoだし、素晴らしいツアーを見られたとしても、次のツアーが発表されたとしても、「その次」が望めるか否か、いつもこれが最後になってしまうのでは・・・という不安と隣り合わせでいるのがCoccoファンの常。

楽しみだったツアーに参加できなくなるかもしれないというショックよりも、その心配のほうが大きい日々だった。

しかし。そのうち彼女はofficial chancelから、新曲動画をアップし始めた。しかもそのペースがかなり早い。あれよあれよという間に、既に10もの「おうちdemo」なるものがシェアされている。

見て&聴いていると、意外にも彼女は柔軟に、それなりに楽しみながら自粛送っているようだった。

この時期特有のこと、時期によらない日々のこと、周りの風景、人々、愛、絵、歌。

結婚式ができなくなってしまった後輩(?)に送る歌だったり、母の日の歌だったり、退屈している子ども達のための絵本の読み聞かせだったり、クレヨン絵の描き方教授(?)だったり・・・

Coccoは、今の自分ができること、人々に与えられるものを自覚して、惜しみなくシェアしてくれている。とても強くしなやかだ。

私は今、そのギフトを、ありがたく受け取っている。元気でいてくれるCoccoの姿は救いでもあるし、自分とは違う”サバイバー”なんだけれども、アダンバレエの頃に感じた寂しさのようなものは、何故か不思議と、”スターシャンク”でも、今の”おうちdemo”でも感じない。

今の彼女は、とても良い。”サバイバー”なんだけど、”dark side queen”も自称しているところ、両方が、程よいバランスで拮抗しているとでもいうのだろうか。

置いていかれている感じがしない。昔のような痛みや棘は、直接的に投げつけられることはなくなったけれども、無くなったわけではないし、むしろそれらの角が取れて溢れ出ている慈愛に、途方もない強さと温かさを感じる。

今の彼女は受け入れている(ように見える)。自分が愛され、必要とされていることを。勿論できないこともあるけれども、昔みたいに猛烈に無力感に苛まれたりするのではなく、できることを、うまく探して、意識的に、向き合い、自分が紡ぎ出せるもので、愛を力を届ける、そういう方向性なんじゃないかと思える。

スターシャンクも、おうちdemo曲も、だからこそ響く。


嗚呼。今度、生で彼女の歌を聴けるのはいつになるんだろうか。

この先感染者数が少なくなったとしても、クラスター発生場所として認識されるようになってしまったライブハウスにおける「密」なライブ開催はかなり厳しくなるだろうし、何より、そういう状況下で、ライブハウスの存続自体が危うくなっている。


全く先が見通せない、というかむしろ悪い方向でしか見通せないのはつらいけれど、しなやかな自粛生活を送っているCoccoを見ていて、私も自分にできることをするしかないよな、と思って、日に日に成長していく草花を愛でている日々です。

(今はイチゴの収穫ラッシュで、鳥と我慢比べをしながら赤い実を摘んでいます。笑 あと、数年越しではじめてクワが実をつけたのも嬉しいところ!)

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