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漫画を引用してブログを書くことの著作権について整理してみた

これまで、10数本の漫画考察記事を書いてきました。漫画を実際の組織論に当てはめて考察することが好きなんですよね。

でも、「漫画を引用してブログ記事に利用するのって法律的にどうなの?」と気になる方もいらっしゃると思います。そこでこの記事では、漫画を引用してブログを書くことが法律的にどうなのか、著作権侵害にならないよう気をつけることを整理してみました。


著作権法の「正当な範囲内での引用」を満たすかどうかがポイント

著作権法の32条によれば、「公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内であれば引用して利用することができる」とあります。

「公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内」を整理すると以下の通り。これらを守っていれば、漫画を引用してブログ記事を書けるわけですね。

【正当な範囲内での引用を満たす条件】
①公表された作品であること
②出典を明示すること
③引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
④引用部分を改変していないこと
⑤自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
⑥引用する必然性があること

上記のうち、①から④までは簡単にクリアできそうです。

①公表された作品 は、商業的に出版された作品であれば問題ありませんし、②出典の明示 も、引用元を示せばOKです。

③引用部分の区別が明瞭 も、今回想定しているケースでは問題ないでしょう。ブログに漫画を引用すれば、どこが本文でどこが引用部分かが一目瞭然ですので。
④の改変しないこと もそのままの意味で、絵やセリフを改変せずに原作のまま引用していればOKです。

となると、ブログで漫画を引用するときに法律的に争点となりそうなのは、⑤著作物の主従関係 と、⑥引用する必然性 でしょう。これらについて、以下に解説していきます。

ネタバレサイトが著作権侵害なのは、引用部分との主従関係が逆転しているから

正当な範囲の引用を満たす条件の5つ目。著作物が「主」、引用部分が「従」について説明します。

聞き慣れない言葉が使われているので、先日わたしが書いたワールドトリガーの考察記事を例にして説明します。
以下の記事は、漫画『ワールドトリガー』を題材にして、「新入社員が身につけるべき心得」を論じたものです。

条件文のうち、著作物とはわたしが書いた上記の記事を、引用部分とは記事内で紹介している『ワールドトリガー』のコマを指しています。

著作物であるわたしの記事が主であり、引用部分であるワールドトリガーのコマが従であれば、引用してOKという意味なのです。逆に言えば、引用部分である漫画が主になっている場合は引用してはダメですよ、ということです。

わたしの書いた上記の記事では、ひとつの主張・考察に対して引用するコマがひとつかふたつ程度なので、主従関係は逆転しておらずわたしの記事が主である、と理解しています。

引用部分が主になってしまうわかりやすい例は、漫画ネタバレサイトですね。極端な話、「おもしろかった!」と一行だけ書いて漫画1話分をすべて引用していたら、引用部分の方が主になっているのでNGです。

なおこの主従関係は、量だけでなく質的なものも争点になるそうです。ネタバレサイトの例で言えば、「おもしろかった」をひたすら繰り返して分量的には引用部分よりも長い記事を書いたとしても、質的には引用部分が主と判断されてしまうでしょう。

わたしの書いた記事では、「新入社員の心得」という独自の視点・解釈・考察が加わっているので、質的にも主従関係は逆転していないと解釈しています。

その引用、必然性はありますか?

正当な引用要件を満たす最後の条件は「必然性」です。つまり、「そのコマを引用する必要性があるか」が問われるのです。

先に例に挙げた記事では「ワールドトリガーに学ぶ新入社員の心得」という主張や考察をよりわかりやすく伝えるために、引用する必要(=必然性)がある、と解釈しています。

逆に引用の必然性がないケースとは、その漫画について論じていないにもかかわらず、装飾的に引用される場合が挙げられます。

例えば、「私の新年の抱負」を語ったブログ記事に、漫画『ワンピース』ルフィの「海賊王におれはなる!!(※)」のコマを貼る場合などは必然性がないとみなされるかもしれません。
ルフィのあのコマを貼るとことで勢いや覚悟を表現できるので、引用したくなる気持ちはわかります。しかし、必然性なく装飾として使うと著作権侵害となってしまう可能性がありそうです。

※漫画のセリフにも著作権に当たるので、本来であればこの記事で使用する際も引用要件を満たす必要があるのですが、ここまで短いセリフかつ一般的に使われる単語の連なりであれば著作権侵害にあたらないそうです。

以上、正当な範囲での引用を満たす条件について整理しました。これらに気をつけていれば、著作権侵害とならずに漫画のコマをブログに引用できますね。

【正当な範囲内での引用を満たす条件とその対策】
①公表された作品である
→商業的に公表された作品を利用する
②出典を明示すること
→引用元を明示する
③引用部分と自己の著作物の区分が明瞭であること
→どこが引用部分かを明確にする
④引用部分を改変していないこと
→絵やセリフをいじらない
⑤自己の著作物が「主」であり、引用部分が「従」であること
→質的にも量的にも、引用部分を主役にしないこと
⑥引用する必然性があること
→引用することで主張を補強できるなど、必然性を持たせる。脈絡のない引用はNG。

おまけ:作者の許可を得たものを利用する方法

ここまで述べてきた漫画のコマを正当に引用する要件は、作者・出版社から許可を得ていないことを前提にしています。最後に、やや例外的な扱いですが作者・出版社の許可を得たものを利用する方法を紹介します。

作者が二次利用フリーと公言している作品

非常にレアケースですが、二次利用OKと公言している作品もあります。佐藤秀峰先生の『ブラックジャックによろしく』が有名ですね。

佐藤先生は、商用・非商用に限らず同作品を自由に利用していいと公言していて、なんとフリーダウンロードページまであります。こういった、作者が二次利用OKと公言している作品であれば、本記事で述べた正当な引用の範囲を満たさずに利用して問題ありません。

コマ単位でSNS利用可能なコマを見つけられるサイト「アル」

また、けんすうさんが手がけている「アル」というサイトでは、作者・出版社からSNS利用の許可が出ているコマが紹介されています。作品ではなくコマ単位です。
Xで漫画のコマをポストするのは、通常であれば正当な引用要件を満たしません(引用部分が主になってしまいます)が、アルを利用すれば問題ありません。Xで漫画のコマをポストしたいときにはアルで探してみるといいかもしれませんね。

いずれの場合も、実際に利用する際はそれぞれの利用規約を確認してくださいね。

以上、ブログに漫画のコマを引用する際の著作権問題について整理しました。最後までお読みいただきありがとうございます。

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