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ジャズ記念日: 9月18日、1966年@モントレー

Sep. 18, 1966 “Forest Flower: Sunrise”
by Charles Lloyd, Keith Jarrett, Cecil McBee & Jack DeJohnette at Monterey Jazz Festival, CA for Atlantic (Forest Flower: Charles Lloyd at Monterey)

新感覚ジャズの名演。カリフォルニア州の海沿いで温暖なモントレーで開催されたジャズフェスティバルでの心地良い海風が流れるような爽やかな演奏。アメリカの東の屋外ジャズフェスティバルの代表がニューポート(以下)だとすると、西の代表はモントレーになる。

レーベルのアトランティックは、ジャズで大成して、その後にR&Bやロックに拡大して一大レーベルとなったように、機を見る才覚がここでも発揮され、本アルバムは人気を博し、のちにジャズロックと形容された。ちょうどこの頃にビートルズのリボルバーがリリースされたという時代背景。

ビートルズもヒッピーな感じ

駐米トルコ大使の息子とアトランティックレーベルを共同創設したパートナーもユダヤ系との事。ジャズの三大レーベルな創設者のみならず、映画を含めた米国エンタテイメント産業の成功者とそれを支える弁護士にユダヤ系人種が多いのは、人種や偏見に囚われない姿勢と戒律に基づく勤勉さが大きな要因の一つと考える。映画産業を見てもパラマウント、フォックス、ユニバーサル、コロンビア、メトロゴールドウィンメイヤーの創設者がユダヤ系というのは偶然の産物では無いと考える。

その人種で言うとアメリカ人ネイティブの血を引くとされる本作リーダーのテナーサックスのチャールズロイドは、フォーキーでアメリカーナ、時にフリーキーなスタイルの演奏者としても、若手発掘としても優れており、ここでは、若き日のキースジャレットとジャックデジョネットを起用している。

テンポが目まぐるしく入れ替わる中で、強弱を付けたジャズの伝統に縛られないフレッシュで煌びやかな旋律と楽譜に束縛されないポリリズムのリズム感が斬新で注目を浴び、二人はその後にマイルスのバンドに起用される。

ロイド自身のスタイルは、唸るようなフレーズと切れ目のない雲が風になびいてフローな感じで自由に流れていくような、メリハリの効いた典型的なジャズとは、若干異なる新しいスタイルが特徴。

ピアノソロでは、1:41から十五秒くらい如何にもキースという他の演奏でも耳にした事があるようなタッチのフォーキーなフレーズが登場。

終始、ロック調ながら奔放なリズムを送り出すデジョネットの4:53からのドラムソロで左スピーカーから聞こえるパーカッションの音がリアルでオーディオ的な聴きどころ。

このモントレーから車で二時間ほどの距離にあるサンフランシスコでは、この頃ヒッピー文化が花盛りで、その自由を追求するマインドに影響を受けるような演奏となっていて、奏者のファッションもスーツを少し崩した自由でクールな感じ。

ちょっとだけモッズな感じの
当時のバンドメンバー

話がそれますが、これらの大物と引けを取らずに対等に演奏しているベーシストは、セシルマクビー。日本の一般人がこの名前を聞いて通常想起するのは、渋谷109を象徴するような若い女性向けアパレルブランドのはず。気になって調べてみたら、山下洋輔さんとも共演歴のある、このベテランベーシストは2000年に同アパレルブランドを商標権侵害で訴えたものの、ミドルネームと認知度が一般的では無いために却下されたという記事を見つけた。

名前の由来はネット上では見当たらなかった

話を戻して、この曲が最後にプツリと切れるのは、ライブで絶え間無く続く二部構成のため。因みに次曲は、本曲の”Sunrise”に続き’Sunset”。

この翌年に同地でジャニスジョプリンやジミヘンが参加した伝説のポップフェスティバルが開催される。そこであの有名なジミヘンがギターに火を放つ演出をするステージが生まれた。先の血筋の話で言うと、ジミヘンにもアメリカ人ネイティブのDNAが流れているそう。

ギターにライターのオイルをぶちまけて
火をつけるなんて、真似したくても出来ない芸当

その歴史的演奏の録音を手掛けたウォリーハイダーが後にサンフランシスコで設立したスタジオでのジャズアルバムは、こちらからどうぞ。

最後に、ロイドが起用して華開いたもう一人の偉大なピアノ奏者、ミシェルペトルチアーニの演奏は、こちらをどうぞ。

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