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ジャズ記念日: 8月15日、1957年@ストックホルム

August 15, 1957 “Relaxin’ at Camarillo”
by Tommy Flanagan Trio (Wilbur Little, Elvin Jones) at Metronome Studio, Stockholm for Prestige (Overseas)

痺れる一枚。夏といえども涼しげな北欧ストックホルムにおける熱いトリオ演奏。なんといっても、ほとばしるドラムのエルビンジョーンズのブラシ捌きのテクニックと力漲るドライブ感が生々しく捉えられている。こんな凄みのある演奏をされたら共演者はたまったものでは無い。それを受けて名脇役ピアノのトミーフラナガンがリーダーということもあってか普段よりも前のめりで力強いタッチの演奏を繰り広げる。

この類の作品は目立つ楽器よりも間を取り持つベースに寄り添った聴き方が趣深い。激しくスイングする黒人で編成された東海岸スタイルの粘りと力強さが聴きどころ。

そして何よりもドラムのブラシ捌きが面白い。後ノリのパワーで押して揺らぎとうねりのパルスを送るエルビンジョーンズの超絶的な演奏には恐れ入るばかり。

因みに、ドラムは、これだけ激しいにも関わらず、ワイヤー製のハケ「ブラシ」をスティック代わりに使用している。「シャーシャー」と流れる音がそれで、スネアドラム、いわゆる小太鼓を両手で交互に八の字に擦り付けて演奏するのが一般的。普段はバラード曲等で、しっとりと聴かせる際に利用されるが、敢えてスピーディーで激しい曲に用いて、見事にはめてしまうのが、エルビンの凄さ。

ブラシを操るエルビンジョーンズ

パワーが印象に残るエルビンだが、飽きることない多彩な表現が、変速リズム、強弱や叩きを交えて送り出されており、実はかなり器用なことが分かる。そんな中で、落ち着いたと思いきや2:55秒のような一撃が突然舞い降りるのだからエルビンとの共演は油断できないスリリングさがある。

曲はチャーリーパーカーによるスタンダード曲で、パーカーらしく高い演奏水準が求められるが、それを更に圧倒するようなスピーディーな展開を繰り広げるこのトリオに脱帽。

レーベルはプレスティッジだが、珍しい海外録音。それを受けてアルバム名は「海外」を意味する”Overseas”、その名前にかけてジャケットはトミーフラナガンの名前の横の単語”Over”の下に多数(複数)のアルファベットの「C」が配置されて、”Over Cs”を表すという座布団一枚ものの洒落。

そして、プレスティッジのロゴの入ったリイッシュー時のアルバムジャケットは、こちら。左から二番目がフラナガン。

フラナガンの控え目な立ち位置は
脇役的な演奏同様に性格に起因している?

そのライナーノーツで紹介されているフラナガンの名演が収録されたアルバムからの紹介曲はこちら。どれもジャズの歴史的な価値の高い名演。誰とでも分け隔てなく、どんな作風でもそつなく嫌味なく高品位な演奏ができるところがフラナガンの真骨頂と言える。

ハードパップの完成系、屈指の名盤。

モードジャズの初期の金字塔。

シカゴテナー大御所によるソウルジャズの名作。

因みに録音場所のストックホルムは、昔からジャズと縁のある街で、名演奏が幾つか記録されているのと、スダンダード曲になった”Dear Old Stockholm”という名曲もあるので、そちらは今月、追って紹介します。

ピアノトリオでドラムがブラシの名演奏は、こちらのしっとりとしたピアノに寄り添う華麗な捌きでも堪能できます。

同じ北欧の澄んだ空気感は、こちらのオスロ録音の高音質録音をどうぞ。

最後に、作曲者のチャーリーパーカーに興味を持たれた方は、こちらをどうぞ。

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