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【MLB】ナ・リーグ地区シリーズ ダイヤモンドバックスはいかにしてドジャースを破ったのか。

現地10/7から始まったナ・リーグ地区シリーズ。
レギュラーシーズンで100勝し、2位に16ゲーム差をつけてナ・リーグ西地区を制圧、地区優勝したドジャースの相手は、その2位のチームであるダイヤモンドバックス。

ドジャースは、もう重労働はできないもののマウンドに立ちさえすれば確実にゲームを作るカーショウを筆頭に、夏場から一気に覚醒したベッツ、フリーマンの1、2番コンビ、経験豊富なブルペンと野手陣を中心にメンバーがそろっており、大方はこのシリーズの勝者はドジャースを予想していたはずでした。


ただ、地区シリーズの初戦の初回にドジャースは先発カーショウの6失点から始まり、終わってみれば相手のダイヤモンドバックスにほとんどプレッシャーをかけることができずスイープ(3連敗)され、敗退しました。


ダイヤモンドバックスはワイルドカードシリーズでナ・リーグ中部地区優勝のブリュワーズに2連勝し、勢いに乗っていたチーム。
一方でドジャースはシーズン最終戦から5日ぶりの試合でした。


この”勢い”の差が、シリーズの勝敗を分けたのでしょうか。


もちろん理由のひとつかもしれませんが、この地区シリーズの3試合から、ダイヤモンドバックスがドジャースを破った理由がほかにもあったと考えています。



勝負は序盤

今季、ドジャースはレギュラーシーズンから先発ローテーションを用意することに苦労していました。
100勝を挙げたチームであるものの年間通算でQS%は33%(MLB平均:35%)、先発投手の平均イニング数は4.9回(MLB平均:5.1回)となかなか先発が役割を果たすことのできない試合が多く、個々の投手イニング数を見てもカーショウの131.2イニングが最多であり、開幕時に想定していたゴンソリン、メイ、ウリアス、シンダーガードはケガ、逮捕、不調でシーズン途中に離脱。経験の浅いグローブ、ミラー、シーハンやオープナー、そしてトレードでリンを獲得し、何とか回していたのがこの先発投手陣でした。

以下は今季のドジャースのイニング別の防御率です。1回、4回、5回は防御率は5点前後であり、この数字からも先発の弱さがわかるかのように、序盤での失点が目立っていました。

1回  4.67
2回  3.83
3回  4.11
4回  4.89
5回  5.22
6回  3.44
7回  3.72
8回  3.39
9回  3.55


逆にドジャースはリリーフが強みであり、そのクオリティはリーグ屈指。レギュラーシーズンでは序盤に得点し、リリーフで逃げ切る、もしくはリリーフが最少失点に抑え終盤に逆転のチャンスをつくるというパターンで勝ち星を積み重ねてきました。


そのため、ダイヤモンドバックスとしては序盤に一気に攻めることが、唯一王者ドジャースに勝てるチャンスだったかもしれません。

特にドジャースはレギュラーシーズンとの間隔があいて試合勘が薄れているということもあり、今考えると初戦の初回は最もチャンスがありました。おそらく、ここで得点ができずにずるずると試合を進めてしまうと、相手ホームの雰囲気とドジャースのペースに飲まれていたかもしれません。

実際、このシリーズの3試合でダイヤモンドバックスは4回以降は3得点しか挙げられていない一方で、3回までには計16点を挙げています。



ベッツの孤立化

今季のドジャースの攻撃はベッツが主役でした。


ベッツは春先は不調だったものの、ぐんぐん調子を上げていき、特に8月は11HR、OPS. 1.355を記録。

試合には負けたものの8/31のブレーブス戦では二本のホームランを放ち、球場全体で追い上げムードを作りだしました。ベッツは一振りで本拠地の雰囲気を変えることのできる選手です。

シーズントータルでも39HR、107打点と、主にトップバッターとして起用されながら得点源にもなっていました。また、後続にフリーマンやスミス、マルティネス、マンシーといった長打力のあるバッターも控えており、ベッツが出塁すると一気に得点を奪われる可能性も高くなります。


ただ、ダイヤモンドバックスはこの地区シリーズで、そのベッツをノーヒットに抑えました。


ベッツはゾーン別の打率を見る通り、ストライクゾーンの中では穴のないバッターです。特に真ん中からインローにかけてはツボを持っており、39本のホームランのうち6割以上がこのゾーンのボールを打ったものでした。また、今季は96個のフォアボールを選ぶなど選球眼もよく、ボール球で誘い出すこともできません。

ゾーン別打率


そのため、ダイヤモンドバックスはベッツに対して、徹底的にアウトコースのストライクゾーンぎりぎりを要求し、投手陣もそれに応え、見事にコントロールできていました。
3試合目の最後の打席でも、インハイの後にアウトコースの変化球で空振りに仕留めています。シリーズを通してベッツのバッティングを崩すことができていました。


また、下位打線をしっかりと抑え、ランナーがいない状況でベッツに打席を回さないようにもしていました。

1番バッターなので初回の1打席目は除き、2打席目以降の全9打席中ランナーがいたのは3打席のみ。そのうち得点圏にランナーがいたのは1打席のみであり、可能な限りプレッシャーのかかからない状況でベッツを迎えることができていました。


ベッツ自身を抑えるだけでなく、下位打線で無駄にランナーをためずにベッツを孤立化すること。

ベッツを抑えることで、ドジャースのオフェンス全体を無力化させていました。


秘密兵器のブルペン

最後に、ダイヤモンドバックスがドジャースを破ったキーポイントとなったのがブルペン陣。先発のケリー、ギャレン、ファードが降板した後の3試合計11イニングを4失点に抑えています。


ダイヤモンドバックスはこのブルペン陣が秘密兵器でした。

レギュラーシーズンでのドジャース戦での登板数はギンケルが5試合あったものの、マンティプリーは2試合、そしてトンプソン、サールフランク、シーウォルドは0試合。ドジャースはポストシーズンのシチュエーションでほぼ初見の投手との対戦が続き、このリリーフ陣はまさしく秘密兵器でした。

トンプソン、シーウォルドはシーズン途中から加入した投手で、サールフランクは9/5にデビューし、レギュラーシーズンでは10試合しか投げていない新人投手です。


ダイヤモンドバックスにとって、ポストシーズンで勝ち上がるためにはドジャースとの対戦は必須であり、もしかしたらこの投手たちは意図的にレギュラーシーズンでドジャース戦での登板を避けていたのかもしれません。これはほぼ全チームが格下となってしまうドジャースではなかなかできない戦略でした。



以上がダイヤモンドバックスが地区シリーズでドジャースを破ることができた要因だと考えています。
今日、もう一方のカードでフィリーズがブレーブスを下したため、ダイヤモンドバックスはフィリーズとリーグチャンピオンシップシリーズを戦うことになります。

もともとの最大のターゲットだったドジャースを下した後、ダイヤモンドバックスはどんな手を打ってくるのか期待しています。



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出典、画像引用元
https://sports.yahoo.com/diamondbacks-sweep-dodgers-head-first-081648700.html?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAJEfSuFctPbRK1EjxTl3j_2m1C3OeeeIFdajzVdg1YfdgoNQFYpRxE2kCeA8YCbuPS98F0-cLDwVRocT7k_t21Ihbx2FbRbpxTjEO1q-j_cj2GXz9G4VvcaEgiApdGSpyp0R4pXabzefjVsEA58_pVW-wiNKyVj-OAitt4pcO2Ln
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