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【MLB】エンゼルスは"アフター大谷"をどう戦うのか。

今オフの最大の関心事であった大谷翔平の移籍先が、ついに決まりました。

一時はジャイアンツ、ブレーブス、そして直近ではブルージェイズが大谷獲得のチャンスあり、なんて報道がありましたが、結局は大方の予想通りロサンゼルス・ドジャースと10年$700Mで契約。

大谷本人のインスタグラムにも、こんなコメントが。

"Until the last day of my playing career, I want to continue to strive forward not only for the Dodgers but for the baseball world."

そう、野球界のために"strive"するためには、グローバルにブランド価値があり、野球以外のファンにも十分に訴求力のあるチームでプレーしている必要があります。ヤンキースが早々に大谷獲得レースから撤退した状況では、もはやプレーするチームはドジャース一択だったようにも思います。


さて、大谷のドジャース移籍によって、日本で国民的球団となったエンゼルスは、またしてもロサンゼルスの"じゃないほう"のチームになってしまいそうです。

エンゼルスは大谷を迎え入れた2018年以降、一度も勝ち越すことはできず、最高順位は2022年の地区3位でした。それにもかかわらず、大谷が所属するチームということで、連日スタジアムには大勢の日本人観光客が訪れ、確実にNHKで衛星放送され、民放のスポーツニューズでも取り上げられ、そしてそれが大谷が長期離脱をしても変わらないという、日本を確実にハックしていた時代は終わりを告げようとしています。


ただし、たかがエンゼルス、されどエンゼルス。

大谷がメジャー挑戦時に選んだChosen Oneのチームです。


この6年間、いくつもの怪我がありながらも試行錯誤しながら二人三脚で二刀流というモンスターを完成させたチームであることには変わりなく、大谷の意思をリスペクトし、プレー環境が整っていたエンゼルスには残留という選択肢も十分あり、事実、ドジャース移籍が決まる最後までその交渉の場にいたはずなのです。

ただし、二度目に選ばれることはありませんでした。

大谷が本気でワールドチャンピオンを目指しているチームを望んでいたことは明らかであり、エンゼルスから出ていくということは、チームの今後のプランに納得できなかったということでしょう。

つい先日には、エンゼルスのGMが主砲トラウトをトレードしないと断言しており、まだまだ”勝ち”にこだわっているチームだ、ということはわかりました。

おそらくベテランを放出して再建の道を進むのではなく、今オフも補強をし、来季のポストシーズン進出に向けた戦略は大谷に提示していたはずなのです。ただし、大谷にとってそれは不十分であったということ。

サンドバルやデトマーズが独り立ちす”れば”、今季デビューしたルーキーたちが無事に成長す”れば”、リリーフを補強でき”れば”、主軸がケガで長期離脱しなけ”れば"・・・。


その戦略には多くの仮定を入れざるを得なかったかのかもしれません。



ただ、大谷がいなくなっても、エンゼルスはプロスポーツチームである以上、MLBで戦い続けなくてはいけないのです。


今回は、大谷が抜けた”アフター大谷”の今こそできるエンゼルスの戦い方を考えました。




DHの有効活用


エンゼルスには働いてもらわなくてはいけない選手が二人います。


ご存じの通り、トラウトとレンドーン。


トラウトはここ数年、ケガに悩まされ続けました。短縮シーズンであった2020年以後は3年連続して規定打席に到達しておらず、今季は82試合の出場にとどまりました。

またレンドンも、(以下略)

なお、英語も話せなくなってしまったようです。


ただ、二人はチームの大部分のサラリーを受け取っており、レギュラーとして活躍してもらわなければいけない選手であることに変わりはありません。


そんな二人は、来季はそれぞれ33歳、34歳と共にベテランの域に突入するシーズン。

エンゼルスでは、これまでは大谷がDHに固定されていたこともあり、守備に就くことができない場合には試合に出場することができませんでした。ただし大谷が抜けDHに空きが出た今、エンゼルスにとってはトラウトとレンドンの健康状態を観察しながら、DHをうまく使って彼らのパフォーマンスを維持することができるかもしれません。

この二人以外にも、キャッチャーのオホッピーはエンゼルスにとっては貴重な攻撃力になります。
今季は開幕早々離脱したものの、9月には9HRを記録。キャッチャーというポジションである以上常時出場は現実的ではないのですが、DHを使えば休養を与えながらシーズンを通してオホッピーをスタメン起用することが可能になります。

エンゼルスは右バッターが多いため、ピーダーソン、ベルト、ギャロのような左バッターをDH専任として獲得し、相手投手との相性、健康状態に合わせてトラウト、レンドン、オホッピーを中心にレギュラー野手の中でDHをうまくローテーションしながら打線の攻撃力を保持することが来季は可能になります。


大谷埋蔵金による補強


FAとなった大谷の獲得レースに最後まで参戦していたということは、少なくとも$500Mから$600Mの予算を用意していたはず。

大谷との獲得を逃したことにより、この予算が一気に浮くことになりました。


もちろん大谷はロサンゼルスに限らず、全米、そして日本で圧倒的なマーケティングバリューがあり、それを鑑みた予算であるのは間違いないのですが、今オフに柔軟に使える資金が手元にあるのは事実でしょう。


その資金の使い先として、トラウトを援護できるバッターを獲得したいところ。


ここ3年、トラウト不在時の大谷の打席では、相手バッテリーとベンチによる思考停止のような申告敬遠をさんざんみてきました。

大谷がエンゼルス打線からいなくなった今、その対象はトラウト本人になるかもしれません。


今オフの打者の目玉は(大谷を除くと)ベリンジャーがいます。


ここ数年は不調だったのですが、カブスに移籍した今季は26HR, OPS.881, WAR 4.4と復活。外野の守備と走塁面でも定評がある選手です。

もともと左の外野手を欲していたヤンキースとの契約がウワサされており、12年$264Mなんて予想もありましたが、そのヤンキースは同じ左バッターのバドゥーゴ、ソトを獲得したことで撤退の見通し。ライバルが減ったことで契約に必要な金額が落ちてくるかもしれません。


現状、エンゼルスの外野にはトラウト、ウォード、モニアックがいますが、はじめの二人はケガのリスクがある選手であり、ベリンジャーの補強はチームにプラスになるはず。

また、ベリンジャーはファーストも守れることが強みです。

エンゼルスは今季ファーストでシャニュエルがデビューしました。ただし、出塁率は高い(.402)ものの、ファーストとしては長打力が低いことがネガティブポイント。年間通して出場した経験のないルーキーでもあり、ベリンジャーとの併用はその補完にもつながると考えられます。


先発5人のローテーション


今季、大谷は全23試合中、15試合で中5日で先発登板していました。

ただし、それを可能にするにはチーム全体が中5日の先発ローテーションに合わせなくてはいけないのです。

このローテーションを維持するには6人の先発投手が必要であり、その分、ブルペンの枚数が薄くなってしまいます。

そうすると先発は100球で交代なんて言わずに確実に5回、そしてできれば6回、7回まで投げてほしいところなのですが、今季のエンゼルスの(大谷を除いた)先発陣にそれを求めることは酷な要求でした。

また、そのような長いイニングを確実に投げられるスキルを持った先発を補強することもかなり難しいのも事実。


今のMLBで、中5日のローテーションを維持することは、なかなかのミッション・インポッシブルなのです。


大谷がいなくなり、エンゼルスは中4日のローテーションに戻すかもしれません。その場合、リリーフを厚くすることができ、それほど多くのイニング消化を計算することができないような先発投手であっても補強もしやすくなりました。

例えば、今季サイヤング賞のイアン・スネル。

今季は180イニングを投げたものの、1試合あたりに平均すると5.6イニング。もともと長いイニングを投げるタイプの先発投手ではなく、キャリア通算では5.1イニング程度です。2020年のワールドシリーズでも、好投しながらも試合中盤での投手交代が話題になりました。

中4日のローテーションで長いイニングを期待しなくてもいのであれば、リスク覚悟でスネル獲得にベットすることができるかもしれません。


他の候補はモンゴメリー。

今季はカージナルスとレンジャーズで合わせて188イニングを投げたものの、もともとヤンキース時代には何とか5回を投げていたような選手でした。


今季のポストシーズンを見る限り、先発投手として確実に試合を作ることができる選手は2.5人(絶対的な二人と、上振れ下振れ覚悟の一人)必要だと感じました。

例えば、レンジャーズではイバルディ、モンゴメリー、そして0.5人枠はシャーザー。

ダイヤモンドバックスはギャレン、ケリー、そしてファード。

フィリーズはウィーラー、ノラ、スアレス。

アストロズはバーランダー、バルデス、ハビエア。


まずは試合を作れる先発を二枚を確実にそろえ、あとは既存のメンツからうまく見極める、もしくは夏のトレード市場で柔軟に選手を獲得することで、不確実性の高まるポストシーズンでは十分戦えるのかもしれません。




以上が”アフター大谷”だからできるエンゼルスの戦い方でした。


幸い、ア・リーグ西地区は絶対王者が存在しません。

確かにレンジャーズはワールドチャンピオンになりましたが、もともとはワイルドカードでのポストシーズン進出でした。
また、アストロズは地区優勝したものの、結局はレンジャーズとシーズン最後までワイルドカード第3枠目を争っていたチームです。マリナーズは後半戦追い上げたものの、シーズン終盤まではエンゼルスより下位にいて、夏場はむしろ”Sell”側のチームでした。来季以降も.540のルールにのっとり、爆発的な強さにはならないかもしれません。

今のルールではポストシーズンの進出ラインは90勝です。今季のエンゼルスは73勝だったため、大谷がいない中でのチャレンジですが、あと17勝の上積みが必要になります。


大谷と契約延長していたとしても、少なくとも来年、もしくはリハビリ明けの2025年は大谷は満足に投げられないかもしれず高額なサラリーの選手をDHに固定しなくてはなりません。

その場合、ほかにも穴が多くある今のエンゼルスにとって、もしかしたら”短期的”には。この大谷の移籍がプラスになるのかもしれません。



出典、画像参照元
https://theathletic.com/5125084/2023/12/09/angel-stadium-shohei-ohtani-vigil/
https://www.baseball-reference.com/
https://baseballsavant.mlb.com/


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