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【NYM】MLB挑戦1年目、千賀の予想成績はどのレベルなのか。

ソフトバンク・ホークスからFAとなり、MLBのニューヨーク・メッツに5年$75Mの大型契約で入団した千賀滉大。
メッツは今オフ、デグロム、バシット、ウォーカーという昨シーズン先発ローテーションを担っていた選手がFAでチームから離れ、大きくメンバーを刷新。シャーザー、バーランダーの後、キンターナ、カラスコと共に、千賀はローテーションの3番手ないしは4番手としての活躍を期待されています。 

そんな中、FanGraphsで今シーズンの成績予測が発表され、もちろん千賀の成績も算出されており、以下のような内容でした。

34登板(26先発)
156イニング
10勝9敗
防御率 3.73
奪三振 173

ソフトバンク時代のエースとしてのピッチングを考えると、一見、意外と負け数が多いとか、防御率が3点台後半で高いな、なんて思うかもしれませんが、個人的には1年目としては上出来な成績だと思っています。

26先発はほぼ年間通してローテーション守っており、156イニングは規定投球回数まであと数イニング(昨シーズン、規定投球回を達成した投手は45人、各チーム1.5人しかいません)であり、MLB1年目で、(平均)年俸$15Mを考えると十分に稼働することになります。
また、奪三振数もイニング数を超える173個であり、ピッチングのスキル面でも期待通りの活躍をするのではないでしょうか。



さて、千賀のこの予想成績はMLBの投手の中ではどようなレベルなのでしょうか。


標準指標の比較

まずは勝利数、奪三振数、防御率の3指標で千賀の予想成績を見ていきます。

勝利数(10勝)

MLB全体:49位
チーム内:3位

勝利数は投手個人の能力を表現するには十分ではなく、打線との兼ね合いもあるので大きく変動すると思っています。
なので、もし26先発することができれば15勝しても、打線とかみ合わず7~8勝という記録でも不思議ではないです。

あくまで参考記録という印象ですが、10勝はMLBでは49位タイ(他21選手)。30球団あるので、平均すると二桁勝利は各チームに二人程度の計算であり、先発投手としては十分な成績ではないでしょうか。
また、メッツ内ではシャーザー(13勝)、バーランダー(12勝)に次ぐ3位。同じローテーションのキンターナ、カラスコも10勝予想であり、ほぼシーズンを通してこの5投手がローテーションを守るのではと予想されています。

奪三振数(178)

MLB全体:34位
チーム内:3位

奪三振数は178でMLB全体で34位、チーム内では3位。
カーショー(180)、ジオリト(180)、リン(177)、コーテズ(177)あたりの投手と同程度の奪三振を記録すると予想されています。
ちなみに、Top5は上からコール(NYY)、バーンズ(MIL)、デグロム(TEX)、ロドン(NYY)、シャーザー(NYM)であり、ニューヨークに支配的な投球をするピッチャーがそろっています。

なお、特筆すべきは奪三振率(K/9)です。
10.27はMLBの中でも18位であり、シャーザー(10.84)、シーズ(10.82)、レイ(10.32)、バーランダー(10.15)と同程度の奪三振力があると期待されています。

ソフトバンク・ホークス時代の奪三振率は10.37であり、パワーのあるフォーシームと、(お化け)フォークはMLBでも十分通用するという評価でしょうか。


防御率(3.73)

MLB全体:36位(100イニング以上)
チーム内:3位(100イニング以上)

規定投球回未達(156イニング)の予想なので、純粋なランキングはできないのですが、今回は100イニング以上の投手の中での順位を算出しています。
その中でもMLB全体で36位、チーム内では3位。

勝利数、奪三振数、防御率を見ると、総じて千賀はメッツのローテーションの中で3番手の活躍が期待されており、シーズンを通して安定してこの成績を残せるのであれば、ポストシーズンでの登板機会も増えると考えています。


ちなみに、防御率の1位は2.63でデグロム。
昨シーズンの最優秀防御率がア・リーグは1.75のバーランダー、ナ・リーグが2.16のウリアスだったことを考えると、控えめな予想でしょうか。
ただ、デグロムはレンジャーズ移籍1年目に、規定投球回達成(29登板、172イニング)が予想されています。


さて、以上がメジャーなスタッツのMLB内での比較でした。
もう少し深掘りして、予想される2023年の成績から千賀と同程度の活躍が見込まれる投手は、どういう選手がいるのか見ていきたいと思います。



千賀と同程度の活躍が予想される選手は?

今回、投手の活躍度を稼働力支配力の二点で表し、千賀に類似した成績を残すと予想される投手をピックアップします。

稼働力とは投球における量の部分。MLBのシーズンを戦い抜くには、チーム全体で約4,500のアウトを取り、約1,500イニングを守らなくてはいけません。そのため、ロースターのなかに安定してイニングを稼げる投手がいることは非常に重要です。
今回、稼働力はイニング数で定義します。

加えて、質の部分の支配力も必要です。MLBのレベルに達していないにもかかわらずチーム事情から結果的に登板数、投球回が多くなる投手もいますが、与えられたマウンドできちんと相手を抑えていかどうか質の要素を見ることも重要になります。
支配力に関してはK/BB(奪三振数/与四球数)で定義します。三振を奪えるスキルは運や味方の守備力に左右されない投手の能力です。また、武器となるボールをきちんとコントロールし、バッターから逃げずに勝負することがきるか、余計な出塁を許さないかといったスキルも重要で、それは与四球の少なさに直結します。

稼働力(イニング)を縦軸、支配力(K/BB)を横軸に、選手をプロットしたのがこちら(100イニング以上)。

オレンジ色の点が千賀で、イニング(縦軸)は156、K/BB(横軸)は2.92。
右上にいくほど優れたピッチャーであり、今シーズン、サイヤング賞を受賞したアルカンタラ、バーランダー、他にビーバー、バーンズ、コール、ノラ、シャーザー、デグロムといったMLBを代表するエース級が確認できます。


さて、この図から千賀の数値に近い5選手(赤枠内)を紹介します。

ホセ・キンターナ(NYM)


イニング:158
K/BB:2.86
2023年年俸:$13M

2017年のカブス移籍後は、エンゼルス、ジャイアンツとチームを変え、ここ数年は精彩を欠いていたものの、昨シーズンパイレーツに移籍し、プレッシャーから解放されたのか復活。夏のトレードでカージナルス移籍後は12先発し、防御率2.01と活躍しました。もともとホワイトソックス時代はケガもなく、安定感に優れたサウスポーであり、今シーズンもその安定感を発揮できると期待されています。
投球内容は基本的には千賀とタイプは異なり、カーブ、チェンジアップで打たせて取るピッチングであり、三振数は少ないのですがフォアボールも少ない投手です。
キンターナは今シーズンから同じメッツに新加入しました。シャーザー、バーランダーの後で千賀、キンターナの二人が期待通りに活躍すると考えると、メッツは非常に強力なローテーションを構築できます。


ノア・シンダーガード(LAD)

イニング:153
K/BB:3.90
2023年年俸:$13M

年齢(千賀:1993年生まれ、シンダーガード:1992年生まれ)や、パワーのあるフォーシームが武器である先発右腕という点では千賀と似ている投手。
ただし、もともと平均98~99mphあったフォーシームはTJ手術もあり、昨シーズンは平均93.8mphまで低下。昨シーズンに関しては2シーム主体のピッチングでした。
昨シーズンのピッチングは体格やヘアスタイル、ニックネーム(雷神)からの印象とは異なり、キンターナと同じく、三振をバタバタととるのではなくフォアボールが少なく、打ち取らせるピッチングが主体です。
昨シーズンのピッチングからすると千賀とはタイプが異なる投手ですが、TJ手術明けのフルシーズン1年目でしたし、本人は成長のチャンスをつかむために今シーズンドジャースに加入したということもあり、メッツでのデービュー当初のような投球が再びみられるのか注目しています。


ルイス・ガルシア(HOU)


イニング:157
K/BB:3.14
2023年年俸:- (2022年は$1.3M)

2020年デビューのためまだ年俸が低いのですが、大谷と同じア・リーグ西地区のアストロズで特徴的なフォームから日本でも近年知名度が上がった投手です。

フォーシームは特別パワーのあるボールではないのですが、スピン数が高くキレで勝負しています。加えて縦に落ちるカッターが武器で、この2球種が投球の大半を占めています。
アストロズのローテーションの中でも安定感があり、信頼できる投手の一人であり、個人的には予想される成績よりも上昇余地があるのではと考えています。千賀がガルシアと同程度のピッチングができるのであれば、メッツの中で十分な活躍をすることになるのではないでしょうか。


マイケル・ワカ(Free Agent)


イニング:159
K/BB:3.02
2023年年俸:-(2022年は$7M)

今シーズンはレッドソックスの一員として、23試合に先発し、11勝2敗を記録した投手。ルーキーだった2013年のポストシーズンで好投(リーグチャンピオンシップMVP)を考えると、いつかは開花すると思いながらいつの間にかもう31歳。レッドソックスからFAとなり、まだ今シーズンの所属チームは決まっていません。

投球内容はフォーシームとカッター、チェンジアップが中心。スプリットとチェンジアップの違いはありますが、組み立ては千賀と似ている投手かもしれません。

昨シーズンの年俸は$7Mで、今シーズンも28先発、159イニングの予想が出ていることを考えると、非常にお買い得な選手だと思います。


マシュー・ボイド(DET)

イニング:153
K/BB:3.07
2023年年俸:$10M

フォーシームとスライダーが投球の主体であるサウスポー。
2019年には奪三振が200を越え、タイガースに在籍していた当時はトレード要因としてよく名前が挙がっていましたが、その後伸び悩み、昨シーズンはマリナーズですべて中継ぎで13.1イニングの登板に終わりました。
そのため、ボイドの今シーズンの成績がこのような予想になるのはかなり驚きです。
ただ、タイガースが$10Mで契約した当たり、何か直近数シーズンの低調ぶりから復活するようなきっかけを確信しているのかもしれません。


以上が今シーズン、千賀と同レベルの活躍が予想される投手の紹介でした。
個人的にはシンダーガード、ワカ、ボイドは不確定要素が大きく、同僚のキンターナ、最近存在感を増しているガルシアあたりがターゲットになるのではと考えています。



さて、FanGraphsの千賀の成績予想から、MLBの中でどんな活躍が期待されているのかをまとめてみました。
MLB1年目としては総じて高評価であり、奪三振力は特に期待されている部分だと考えています。
ただ、ここ数年は(打球直撃を含めて)シーズン序盤にけがが多く、今回予想されているイニング数のような稼働をしていない点は懸念です。特にシーズン終盤にどの程度本来のパフォーマンスを出すために、時差、長距離移動、気候、言語など環境の変化に適応しながらシーズン通してスタミナのコントロールできるかが、ポイントになるのではないでしょうか。


出展

https://www.mlb.com/
https://baseballsavant.mlb.com/
https://www.fangraphs.com/
https://nypost.com/2022/12/19/kodai-senga-embarks-on-mets-journey-with-big-expectations/


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