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【NYM】ニューヨーク・メッツにとって2023年とは何だったのか。

現地9/21の試合でメッツはフィリーズに4-5で敗れ今季82敗目を喫し、シーズンの負け越しが決まり、翌9/22も連敗しポストシーズン進出の可能性もなくなりました。


さて、メッツにとって2023年とは何を意味したのでしょうか。


昨季101勝を挙げ、ワールドチャンピオンを目指した今シーズン。
大富豪スティーブ・コーエンオーナーのポケットマネーで実績のあるベテランを次々に獲得し、開幕時点の年俸総額は$353Mと2位のヤンキースに$80M近く差をつけ、ニューヨークのシン・悪の帝国となり2023年を迎えたものの、5割付近で戦えていたシーズン序盤から一転、6月に7-19と失速。
一方で同地区のブレーブスは6月に21-4とルーキーの年の上原浩治のような成績を残し、メッツは一気に優勝争いから脱落しました。

結局、夏のトレード市場では早々にリリーフで活躍していたロバートソンをマーリンズに放出から始まり、バーランダー、シャーザーというチームの飛車角エースも放出。シーズン中盤以降、目線はすでに来季以降へと移っています。




構造的に持続不可能だった先発ローテーション


今シーズン開幕前のメッツの先発ローテーションは期待に満ち溢れ、MLB公式でもMLBナンバーワンと紹介されていました。

ところが、開幕前にキンターナが脇腹を故障し、シーズン前半戦を欠場。バーランダーも右肩を負傷し、開幕から1か月を離脱。カラスコはチェンジアップは被打率.220と健闘しているものの、フォーシーム、スライダー、シンカーと投球の大半を占める他の球種では滅多打ちを食らい続け、ほとんど勝負できるボールがないというレベルに。

ディアズがWBCで膝を故障しシーズン中の復帰が絶望であり、先発投手の活躍が必要とされている状況での離脱・不調だったため、チームにとって非常にインパクトが大きいものでした。

ただ、もともとリスクのあるローテーションだったことは間違いなく、当初のローテーション候補は以下の通りピーターソンを除くと30歳以上。ほぼ30代中盤かそれ以上という布陣でした。

  • バーランダー(40)

  • シャーザー(38)

  • カラスコ(36)

  • キンターナ(34)

  • 千賀(30)

  • ピーターソン(27)


バーランダー、キンターナ、千賀は今季新規加入の選手です。ただ、昨季のローテーションからはバシット、ウォーカー、デグロムが抜けたため、新規加入の投手にはこの3人が昨シーズン投げた400イニング分を補ったうえで+αがなくては"戦力強化"にはならず、ピッチングの質だけでなく、"量"も求める必要があり、それに応えるためには年齢的にリスクを含むメンバーでした。

さて、夏のトレードでバーランダー、シャーザーを放出し、シーズン終盤は主に以下のメンバーでローテーションを回しています。

  • 千賀(30)

  • ピーターソン(27)

  • メギル(27)

  • キンターナ(34)

  • ブット(25)

  • ルケーシー(30)


開幕前のメンバーと比べると若返っており、ルーキーの千賀はリーグ屈指の好投手となり、メギル、ブット、ルケーシーも直近の試合ではしっかりとゲームメイクできているのは好材料です。

ただ、来季以降、千賀以降の投手陣でナ・リーグ東地区を勝ち抜けるような先発ローテーションを組めるかは未知数です。

今後は実績のはあるがケガやパフォーマンス低下のリスクのあるベテランというよりも、しっかりとイニングを稼げ、ローテーションの頭を投げられる選手、もしくは今後投げられる可能性のある若手選手をいかに確保するか、その課題が明確になったのが今季の投手陣でした。




スムーズなプランBへの移行

当初のシナリオから大きく逸脱し、結局さんざんな成績となってしまったメッツですが、シーズン中にチームの戦い方をうまく切り替え、将来に向けて若手選手への出場機会創出にシフトできたことは好材料でした。

若手選手の代表格はロニー・マウリシオ(22)。

もともとショートの選手でしたが、リンドーアがいるためセカンド、サードで起用されています。
デービュー戦でいきなりツーベースを放っただけでなく、その後もコンスタントにバッティングで結果を残しており、最高打球速度はリーグ有数の数字を記録しています。


また、ビエントス(23)、ベティ(23)といったなかなか結果を残せていなかった若手選手たちも我慢して起用。
ビエントスは千賀が先発登板した9/20のマーリンズ戦で1試合2HR。

ベティは9/22のフィリーズ戦で9回にキンブレルからバックスクリーンへ同点HR。

二人ともまだまだバッティングは荒いのですが、今季の経験を来季以降の飛躍のきっかけにしてほしいです。

また、MLBデビューした選手以外にもシャーザーとのトレードでセカンドのアクーニャ(21)、バーランダーとのトレードで外野手のギルバード(22)、クリフォード(20)、ロバートソンとのトレードでは内野手のバルガス(18)を獲得。それぞれチーム内でトップレベルの有望株であり、野手に関しては将来性のある選手を多く抱えることに成功しています。

他にもファム、カナ、レオンといった「25年以降にワールドチャンピオンを目指せるチームづくり」という中期計画のタイムラインに合わない選手は整理し、若手へのチャンスを作っています。

当初のシナリオは崩れましたが、来季以降に向けたプランBはしっかりと遂行ができているのが、この2023年というシーズンでした。



守備面での貢献が高いアルバレスの正捕手確立


今季のメッツの中で大きな収穫のひとつはフランシスコ・アルバレスが正捕手として確立できたことです。

アルバレスはもともとバッティング面で注目されており、今季も低打率(.213)ながら9/22時点で23HRを記録。

ただ、バッティング以上にチームへの貢献度が高いのが守備で、特にフレーミングに秀でており、MLB全体でも4位にランクイン。
開幕当初はキャッチャーとしての経験を積ませるためにマイナーからのスタートでしたが、MLBでしっかりとキャッチャーとして活躍できることを証明しています。

また、2塁送球1.94秒もMLB上位の強肩であり、今後守備力の高いキャッチャーとしての認識が高まっていくのではと考えています。



存在感を増すアロンゾ


昨季40HR、131打点と、3倍打点ニキを記録したアロンゾ。そして今シーズンもシーズン中盤に離脱しながらも45HR、115打点と安定して主砲としての役割を果たしています。

ただし、来年オフにFAとなることから、トレードバリューが高いうちに放出されるのでは、なんていう話題が多く出てきました。

既に夏のトレードでブリュワーズにトレード間近という報道があったり、新たに球団のチーム編成最高責任者となったスターンズの最初に対峙する大きな課題としても挙げられています。

ただ、その一方でチーム内でますます存在感を増しているのがこのアロンゾという選手。

ベッティングにフルベットしている一塁手ですが、チャンスでの強さは他を寄せ付けず、今季はランナーなしでは打率.196、OPS .746ながらランナーがいる状況では打率 .245、OPS .930に上昇。得点圏となるとさらに成績が向上します。
そしてそれが一過性ではなくてキャリアを通じてチャンスに強いという、日本のプロ野球でいえばまさしく四番となるべくして生まれてきたRBIマシーン。


また、チームが大失速をした6月も、まさしくアロンゾがデッドボールで故障し離脱したタイミングであり、アロンゾがいないことによるリスクも経験しました。


FAを控えるアロンゾをトレードで放出するか、契約延長するか、客観的でロジカルな意思決定が必要になりますが、メッツのゲームを観ているとアロンゾはチームに欠かせないハード&ソウルであり、どうしても感情的にならざるを得ません。

今後、チームには難しい判断が待っています。

出典、画像引用元
https://www.mlb.com/news/ronny-mauricio-logs-117-mph-double-in-winning-mlb-debut-for-mets
https://baseballsavant.mlb.com/
https://www.mlb.com/
https://www.baseball-reference.com/

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