見出し画像

【NYM】ニューヨーク・メッツはどう生きるか

今季のニューヨーク・メッツのテーマのひとつは、ブレーブスを倒せるか、でした。


昨季、メッツは開幕から好調を維持し、101勝を挙げるシーズンとなりました。
ただ、メッツはシーズン当初からナ・リーグ東地区の首位を走っていた一方、同地区のブレーブスがじわじわと追い上げ、シーズン終了間近9/30からのブレーブス3連戦でメッツはデグロム、シャーザー、バシットという当時のローテーションの先頭3投手をぶつけながらも3連敗。

結局ブレーブスに追い越され地区二位となり、ポストシーズンのワイルドカードゲームではパドレスに敗れあっさりとシーズン終了。


今季はその雪辱を果たし地区優勝、そしてワールドチャンピオン獲得のために打倒ブレーブスを掲げ、オフにはディアズ、ニモと契約を延長し、FAではバーランダー、キンターナ、千賀を獲得。準備は整っている、かに思われました。

ただ、WBCでのディアズの怪我から始まり、シーズンが始まるとチームは低迷。

この夏のトレード市場では売り手に回り、シャーザー、バーランダーというメッツの看板となるはずだったレジェンドデュオをそれぞれレンジャーズ、アストロズに放出し、今季のメッツのシナリオは終焉となりました。


そんな中で迎えたブレーブスとの本拠地での4連戦。

今のチームの調子、モチベーションを映すかのようにメッツは初めの3試合で3連敗(4戦目は千賀の好投もあり、7-6でなんとか勝利)。この3戦の得失点の合計は3-34という、なんだか記憶にあるようなないような数字の、さんざんな負けっぷりでした。



このようにオフの期待から一転、転落をしてしまったニューヨーク・メッツ。

今回はそんなメッツが復活するために、今後どう立て直しをすればいいのか考えました。




持続“不”可能な選手構成へのメス入れ


同地区の王者ブレーブスとの違いは、選手の年齢層にあります。

開幕時点で、ロースターの平均年齢はメッツは31.2歳だったのに対して、ブレーブスは29.8歳。それぞれMLBの中でメッツは最も平均年齢が高く、ブレーブスは上から5番目でした。
平均年齢で比較すると、一見それほどチームの”若さ”に差はないように見えます。ただし、年齢層別の出場状況を比べると以下の通り。

※8/13時点

打者(打席数)
年齢層    メッツ   ブレーブス
- 25        760       971
26 - 30  2,009   2,393 
31 -         1,642  1,129

投手(イニング)
年齢層    メッツ   ブレーブス
- 25        38.1       403
26 - 30  445.2    207 
31 - 35   147.1      162
36 -        398       265

https://www.baseball-reference.com/

打者に関しては、メッツ、ブレーブスともに26歳-30歳の年齢層にボリュームゾーンがありますが、メッツはブレーブスと比べて31歳以上の打席数が多く、25歳以下が少なくなっています。

また、投手に目を向けるとブレーブスは25歳以下にボリュームゾーンがある一方、メッツは26歳から30歳、36歳以上の年齢層の投手の投球イニングが多いことが特徴です。
26歳から30歳という投手として最もパフォーマンスが高くなる年齢層の出場が多く、一見良さげなのですが、この年代のWHIPは1.521と全く結果を残せていません。主力となるべき年齢層の投手が、メッツの投手陣の中でリーダーシップを発揮することができていないのです。

人間が行う競技である以上、定期的にベテランと若い選手を入れ替え選手構成を整えていかないと、チームは確実に老いていきます。
特に30歳前後で好成績を残し、長期契約を結ぶとそのリスクは一気に高くなります。
長期契約した選手は毎年確実に年齢が上がる一方、そのポジションで若手の出場チャンスを奪います。そのため、別のポジションで若手を積極的に活用しチーム全体でバランスを取る必要があります。

基本的に選手全員が開幕時に予想した通りの活躍をすることは不可能です。特に30歳を過ぎた選手は怪我による離脱やパフォーマンスが下がる可能性があり、さらに前年にキャリアハイのような好成績を残したような選手の場合は”平均値に回帰”し、そのリスクもより高くなります。

逆に若い選手については予想以上に高いパフォーマンスを発揮する可能性もあります。

そのため、レギュラーシーズンを戦い抜き、ポストシーズンで勝ち抜いていくためには、如何にパフォーマンス低下が予想されるベテランの依存度を下げるか、如何に若手がチームへのプラスαの貢献をする余地を残しておくかが重要になります。

昨シーズンでいうと、マリナーズとオリオールズ。
マリナーズは新人のフリオ・ロドリゲスを開幕から起用し、4月は打率.206、HR0本とMLBの投手の対応に苦しんでいたものの、5月に打率.309、HR6本と成長。結局シーズントータルで打率. 284、HR28本、25盗塁、OPS.853と活躍し、チームを21年ぶりのポストシーズン進出に大きく貢献しました。
また、オリオールズでは5月後半から同じく新人のアドリー・ラッチマンを正捕手として起用。打率.254、HR13本、OPS.806とキャッチャーとしては十分な攻撃力を残しただけでなく、守備面でも大きくチームに貢献。チームはポストシーズン進出はならなかったものの、前年の2021年から大きく勝ち星を増やし(52勝→83勝)、今季の大躍進の足がかりとしました。


今季のブレーブスは打者ではオルソン(29)、オズーナ(32)というベテランとアクーニャJr.(25)、オルビールズ(26)、ライリー(26)、ハリス(22)といった若手から中堅の選手が打線の中で共存しています。また、今年28歳になるスワンソンはFAとなるも深追いせず(カブスへ移籍)、キャッチャーは34歳になるダーノウに変わり6歳若いマーフィーを獲得し正捕手として起用しています。投手の場合も昨シーズンローテーションに定着したストライダー(24)が今季はエースに成長し、今季はエルダー(24)も新しくローテーションに加わりました。

ブレーブスは勝ち続けながらチームの新陳代謝を絶やしていないのです。

一方で、メッツの主なレギュラー野手の契約内容は以下の通り。
リンドーア(29):  2031年まで10年契約
マーテ(34):2025年まで4年契約
ニモ(30):2030年まで8年契約
マクニール(31):2027年まで4年契約

さらに投手陣では2022年に当時37歳のシャーザー、昨シーズンオフには今季40歳になるバーランダー、同じく30歳になる千賀とも複数年契約。

今後レギュラーメンバーが30歳を超えるベテラン勢に依存することになり、チーム全体としてのパフォーマンス低下は時間の問題でした。

確かにベティやアルバレスといった今季レギュラーとなりうる若手野手はいましたが、ロドリゲスやラッチマンのようなゲームチェンジャーとなるのを期待するのは酷です。

メッツは昨シーズン101勝を挙げながら、選手構成的に持続”不”可能なチームでした。


ただし、この夏のトレードの対価としてアクーニャ(ブレーブスのアクーニャJr.の弟)、クリフォード、ギルバード、バルガスと将来メッツのレギュラーとなりうる野手を獲得。
前述したベティやアルバレスに加えて、ビエントスやマウリシオ、パラダ、ウィリアムズと野手に関しては既にトッププロスペクトが充実しています。

そのため、今後は如何に上手くベテラン達を整理し、若手にチャンスを与えて育成できるかが鍵となります。


白紙に戻された先発ローテーション


メッツは有望な若手野手が揃っている一方で、マイナーだけではなく、メジャーレベルでも頭数が揃っていないのが先発投手。


メッツは2025年、2026年にワールドチャンピオンを目指せるチーム作りをするようです。それがきっかけで、2年後のチームを考えたときに構想外となったシャーザーやバラーランダーはこの夏にトレードで放出しました。


さて、メッツの目玉となるはずだったレジェンド2人が抜け、現在は千賀、キンターナ、カラスコ、メギル、ピーターソンとローテーションを組んでいます。
千賀はフォークボールを武器に、オールスターに出場するなど今ではメッツの勝ち頭であり、チームで唯一規定投球回を投げています。ただし、現在30歳であり、チームが目指す2年後以降の中長期的な時間軸でエースの働きを期待しているかは疑問です。
また、キンターナは7月に復帰後、そこそこの活躍を見せているもののローテーションの真ん中から後ろの投手であり、カラスコ、メギル、ピーターソンは揃ってWHIPが1.60前後とメジャーリーグで先発投手を任されるレベルにありません。

マイナーに目を向けても、バジルという23歳の右投手が来年先発ローテーション入りを期待されているものの、リーグ有数のトッププロスペクトという選手ではなく、将来的に長い期間チームのエースになるところまでは想定できないかもしれません。


このように、組織全体で人材が枯渇し、2025年に向けてほぼ白紙状態なのが先発投手なのです。

もちろん今オフに、チームはFAとなる先発投手の獲得に動くでしょう。
2年後以降を見据えると多少値が張っても若い投手である必要があり、現在30歳のノラ、31歳のスネルには手を出しにくく、27歳のウリアス、今月25歳の山本由伸あたりがターゲットになりそうです。

ただ、それでもローテーションに2枚追加しただけであり、マイナーを含めて如何に2年後のローテーション候補の人材を補充するかは今後の大きな課題となります。


ピート・アロンソについて決断の時


若返りの過渡期にあるチームにおいて、今後重要な意思決定が必要になることがピート・アロンソの契約延長について。

アロンソは2019年にデビューし、いきなり53HRを記録。
2017年にジャッジがマグワイアの新人ホームラン記録を30年ぶりに更新したと思いきや、その2年後に同じニューヨークのチームの選手であるアロンソがさらに更新。

まだ5年目ながら球団内でHRは歴代5位、打点は同10位と、今後球団史上最高の打者となりうる選手です。

また、レギュラーシーズンの数字だけでなく、ホームランダービーで二連覇し、チャンスで強く、愛嬌のあるフォルムでポーラー・ベアーの愛称で地元ファンからも愛されているなど、メッツの象徴となっている選手です。


そんなアロンソは2024年オフにFAとなります。

2025年のワールドチャンピオンのシナリオにアロンソがいるのであれば、もちろん契約延長はするでしょう。
ただし、その場合に大型の長期契約は必須で、既に多くの複数年契約をしているベテラン勢にまた1人選手を追加することになり、若返りの方針とは逆行します。また、決して運動能力が高い選手ではないため将来的にDH専任になる可能性もあり、他にベテラン野手が多いチーム構成ではリスクとなるかもしれません。

一方で契約延長しないとなると、シャーザー、バーランダーのように大きな見返りを求めて今オフにでもトレードで放出するかもしれません。

ただ、チームの顔となっている選手であるため、そのトレードには2004年にレッドソックスが守備力向上を目的としてガルシアパーラをトレードで放出したような”大義”と早期の改善結果必要です。

できれば見返りとして翌年にでもチームのエースになりうる先発投手を獲得したいところです。


最近のMLBでは、身体能力が高いアスリートタイプのフィジカルが強い選手が増えてきました。
そんな時代にクラシカルなタイプのファーストのスラッガーであり、ガッツのあるアロンソは今のMLBではユニークな存在でもあります。

メッツが考える2025年、2026年のチームの中心にアロンソがいるのかどうか、意外と早くその真相がわかるかもしれません。


大谷翔平という選択肢

さて、チームの若返りだの中長期的な視野だの、あらゆるプランを無視しても獲得したい、ベーブ・ルース以来、一世紀に1人のスペシャル・ワンのカリスマがこのオフにFAとなります。

大谷翔平です。

大谷は来年30歳になる選手であり、また新しい契約も10年600億ドルが最低ラインと見込まれており、今後長期間ロースターの柔軟性は失われるでしょう。
さらに、大谷のスキルを最大限発揮するには、先発は6人揃えて中5日で回せるようにしたく、DHも空けておかなくてはいけません。大谷加入でファーストでしか出場できず不良債権化が加速したプホルスの例を考えると、今のベテラン野手が多いメッツにとって、特にDHが柔軟に使えないことはリスクになりえます。

大谷を迎え入れるには、”大谷最適化”されたチームでなくてはいけないのです。

ただし、彼は一世紀に1人のスペシャル・ワン。
チームのゲームチェンジャーになるだけではなく、既にMLBに革命を起こしている歴史上の人物。

メッツにとって投打でMLBトップレベルの選手を獲得できるだけではなく、ビジネス的にも大いなるインパクトがあるでしょう。

これまで旅行情報誌でヤンキースタジアムの影に隠れていたシティフィールドは、スポーツの枠にとらわれずニューヨークのベストスポットになるかもしれません。春先から1年通して、日本人観光客が多く球場に詰めかけ、ユニフォームと二刀流Tシャツ、ぬいぐるみにキャップにフィギュアに、もう大谷とメッツのロゴがプリントされた商品は連日Sold Outになることでしょう。

また、これまで主婦か主夫か、大学生か、ボクしか見ていなかったであろう朝11時に始まる西海岸での大谷出場試合は、今後、試合開始が朝のゴールデンタイムである8時に早まり、日本の多くのファンにライブのゲームを届けることができます。

エンゼルスがそうなったように、来年からはニューヨーク・メッツが日本の国民的野球チームとなるのです。

もちろん、現地アメリカでも大きなマーケットがある東地区の夜のゴールデンタイムで大谷のプレーを観ることができるのです。


この夏のトレードでは完全に売り手に回ったメッツですが、決して再建ではなく、2024年も戦える戦力をある程度維持しながらも本番は2025年、2026年というチーム方針において、来年30歳の大谷はまだまだフィットする選手です。

ここ数年、コレアへのオファーも含めて巨額のオファーを出していたメッツですが、大谷に対してどんなアプローチをするのか注目しています。


さて、以上がニューヨーク・メッツが今後チームどう立て直すのか、注目ポイントです。

厳しい状況でなかなかモチベーションも上がりにくい試合も続きますが、将来に向けてチームの将来につながるようなゲームが観れることを期待しています。













出典、画像引用元
https://nypost.com/2023/08/12/mets-humiliated-by-braves-in-doubleheader-disaster/
https://mlbrun.com/mlb-average-age-by-team-2023
https://www.baseball-reference.com/
https://www.mlb.com/


この記事が参加している募集

野球が好き

free