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【MLB】ドジャースにとって大谷翔平は"最適解"なのか。

レンジャーズがワールドチャンピオンになり、2023年のシーズンを終えたMLB。
そして、ポストシーズンと同じくらいの熱量で注目を浴びるのが、シーズンオフの移籍市場でもあります。


今年の注目はもちろん大谷翔平。
ノラ、スネル、ベリンジャー、そして日本から山本と、それぞれ$200Mレベルの契約が予想される選手が複数いながら、今オフの移籍市場はすべて大谷と獲得を狙うチームの交渉が落ち着いてからになるでしょう。


今オフも例によって、各メディアでは主要なFree Agentの選手の移籍先が予想されています。


まず、MLB公式では58人の投票結果を紹介。大谷の移籍先はドジャースだろう。


Trade Rumorsでは3人のライターがみな大谷の移籍先をドジャースと予想。契約金は12年$524M。


ESPNの記事でもオルニー氏、ドゥーリトル氏、パッサン氏もドジャースと予想。


昨年オフはトレイ・ターナーとの契約を見送り、カーショウと再契約、JD マルティネスとの1年契約程度の動きにとどまり、予算を抑えていたドジャース。
そして、今季は100勝を挙げながらポストシーズンの地区シリーズでD-Backsにあっさりと敗退し、"失敗"のシーズンとなりました。

ドジャースが大谷翔平にフルベットできる伏線はもうそろっているのです。


さらに、べーブ・ルース以来のカリスマである大谷との契約には、天文学的なサラリーを払える財力があり、かつ、安定してポストシーズンに進出し、ワールドチャンピオンに限りなく近い存在である、となると大谷の移籍先はもはや名門ドジャース以外選択肢はないのでは、とも考えてしまいます。



ただ、ドジャースにとって大谷翔平は”最適解”なのでしょうか。



最優先課題は”先発投手”


レギュラーシーズンで100勝を積み上げたとはいえ、今年のドジャースは先発投手陣が圧倒的な弱みでした。

新しいロサンゼルスのエース候補・ビューラーはTJ手術のリハビリ中のため今季の全休は確定。

ただ、他の投手たちがその穴を埋めることができず、昨季16-1を記録したゴンソリンは開幕から不調で防御率は1年で3点近く悪化し、8月には右ひじを痛め、TJ手術を受けてシーズン終了。来季の全休は確定的です。

また、昨シーズンのナ・リーグ最優秀防御率賞であり、今オフのFAの目玉となるはずでさらなる躍進を期待していたウリアスは、不祥事で8/8の登板を最後に離脱。離脱前も本来の投球とは程遠い内容でした。

FAで獲得したシンダーガードは、本人もドジャースでの魔改造を期待していたようなのですが、結局もう力がないことだけを確認しただけでシーズン途中に移籍。

TJ手術明けだったメイも、シーズン序盤に9試合投げただけで離脱。


結局、今年のドジャースは規定投球回を達成した投手はおらず、最多はカーショウの131.2イニング。他にはミラーやグローブといった若手やオープナーで最低限のイニングを稼ぎ、何とかリリーフにつなぐというやりくりをしていたのが現状でした。

シーズン途中にリンをトレードで獲得し、そこそこの働きをしてはいたのですが、ポストシーズンではチームの先発の弱さが明確に出ました。
カーショウ、ミラー、リンがそれぞれ序盤に大量失点を取られてそのまま3連敗。今季のドジャースの負の面を象徴するような展開でした。


この危機的な状況は来季も同様になります。

ビューラーは復帰すると思いますが、TJ手術明けのため開幕から先発ローテーションに入るかは不透明であり、年間通してもフル稼働はできないと予想しています。

結局今年も大黒柱になってしまったカーショウは左肩を手術し、来年夏までは投げることができません。そもそもカーショウはFAであり、来季もドジャースにいるかは定かではありません。

他の先発候補となるとメイは怪我明け、ミラーはルーキーだった今季はよく投げましたが、来季は上振れ・下振れのリスクが共ににあります。

正直、年間を通して一人も計算できる投手が先発にいないというのがドジャースの現状になるのです。


そんな中でチームの補強の最優先はもちろん先発投手であるはず。
そして幸いにも今オフはノラ、スネル、山本とローテーションの先頭を任せることができそうな投手がFAとなっています。

長期的には大谷はドジャースの先発ローテーションの先頭で投げる能力がありますが、少なくとも来季は全休が確定しており、2025年もいきなり規定投球回数を投げるような活躍ができるかはわかりません。実際、大谷が2018年にTJ手術をして、しっかりと回復してマウンドに戻ったのは3年後の2021年でした。

今オフ、ドジャースにとっては先発ローテーションと大谷の状態を考えると、あまりにもタイミングが悪いのです。


ベッツ、フリーマンの二大看板という落とし穴


先日公表されたナ・リーグMVPのファイナリストに、ドジャースの2選手が選出されました。


ムーキー・ベッツとフレディ・フリーマン。


おそらく、MVPは球史に残る活躍をしたアクーニャJr.でしょう。ただ、ベッツ、フリーマンもともに1.000に近いOPSと、決してアクーニャJr.に引けを取らない成績を残し、年間を通してドジャース打線を引っ張ってチームの得点源となっていました。


ただし、今のドジャースは良くも悪くもベッツとフリーマンのチームです。


そのことが露骨に分かったのは今季のポストシーズン。

D-Backを相手にした地区シリーズで、両選手は3試合で合わせて21打数1安打と徹底して抑えられました。そして、チームは3試合とも2点しか奪えずに3連敗。


ドジャースの打線はベッツとフリーマンに大きく依存しており、ドジャースは今後もこの二人を”健康な状態で使い続け”なくてはいけないのです。


ベッツ、フリーマンはそれぞれ40歳、38歳になるシーズンまでドジャースと契約しています。

ベッツはライトだけではなく、セカンド、ショートを守るなどユーティリティ性を出していますし、フリーマンは今季のゴールドグラブは逃すも守備には定評があります。

今はまだ二人とも守備面でチームにポジティブな影響を与えていますが、契約の晩年、怪我やフィジカルの衰えで守備がネックになる可能性は十分に考えられますが、そんな中でもドジャースは二人をDHとして打線に残しておかなくてはいけないのです。


その時、DHをがっちりと大谷が固定しているとき、チームのバランスは崩れます。チームで守備につけない野手は、どんな実績を残し、どんなにサラリーをもらっていてもベンチにいるしかないのです。


今オフ、JDマルティネスがFAとなり、来季のドジャースのDHは空いています。

ただし、あくまでも”来季”の話。

中長期的にDHが使えないことは、ベッツ、フリーマンというチームの飛車角のバランスが崩れるリスクがあるのです。


大谷がいないと”勝てない”のか


そして最後に、ドジャースにとって大谷は最も”コストパフォーマンスが悪い"と考えています。

大谷が2025年以降、投手としても復活し、毎年のようにWAR 10を記録することは十分考えられます。

ドジャースは毎年100勝を挙げているので、大谷の加入で毎年110勝を挙げるチームになるかもしれません。


ただ、今のポストシーズンのルールでいうと、90勝が進出のボーダーライン。大谷を獲得したところでドジャースはポストシーズンに進出するチャンスが、例えば98%から99%に上がる程度であり、強すぎることで大谷獲得による"劇的な改善"をすることができないというジレンマを抱えています。


ドジャースにとって大谷獲得にチームの予算の大半をフルベットするよりは、資金に余力を残し、毎シーズンのオフにその時その時の弱点を補完するような柔軟な補強ができるようにすること、そして、シーズン途中にはチームの雰囲気にブーストをかけられる旬の選手を獲得できるようにすることがもっとも必要なことであると考えています。



以上のとおり、ドジャースにとって大谷を獲得することは決して最適解ではないのではないかと考えています。

実際、大谷は「勝ちたい」という発言はあるものの、決してチームを出たい、勝てるチームに移籍したいという意図はなかったはずであり、今すぐ勝てるチームへ移籍するというのは我々ファンの希望に過ぎないかもしれません。

むしろ、小中規模程度チームの年間予算に相当するサラリーを一人に払うため、レンジャーズがシーガーを獲得してチームを一気にコンテンダーにしたように、いまはまだまだ未熟ではあるものの、大谷加入がトリガーになって一気にポストシーズン進出に青信号をともせるようなチームのほうが適しているのではないかと考えています。

ただ、ではドジャース以外にフィットするチームはあるのかというと、なかなかそんなチームが出てこないのも事実ですね。


出典、画像引用元
https://mainichi.jp/english/articles/20231109/p2g/00m/0sp/010000c
https://www.baseball-reference.com/
https://www.mlb.com/

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