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【MLB】ポストシーズンにおける”ワンチャンス”の攻防

今年もMLBのポストシーズンが始まりました。
ワイルドカードシリーズでは4カードすべてがスイープで終わり、今は地区シリーズが行われています。
個人的には東西地区の優勝チームが出てくるこの地区シリーズこそ、ポストシーズンが一気に盛り上がるタイミングだと考えています。


さて、ポストシーズンのような短期決戦で難しいものといえば、継投。


2020年のワールドシリーズで、ドジャース相手に好投していたスネルを交代した後すぐに逆転された出来事は今でも語り草になっています。逆に、2003年のア・リーグチャンピオンシップシリーズ第7戦では、レッドソックスがペドロを続投させたもののヤンキースに逆転を許し、監督交代まで至ったケースもあります。


今季のポストシーズンでも、継投の難しさがわかるようなシチュエーションが何度もありました。



ツインズ対ブルージェイズのワイルドカードシリーズ第二戦では、ブルージェイズは3回まで3安打を打たれながら5つの三振を奪っていたべリオスを早々に降板させ、菊池にスイッチ。ただ、先頭からランナーをためて、コレアに先制、そして結果的に決勝点となるタイムリーヒット打たれました。



ブレーブス対フィリーズの地区シリーズ第二戦では、フィリーズは7回途中まで10奪三振1失点(自責点は0)の好投をしていたウィーラーを、ダーノウにツーランを打たれたタイミングで交代し、継投へ。
後を継いだアルバラードは下位打線だったこともありパワーで押し切るも、続くホフマンがライリーに痛恨の逆転ツーランを浴びました。



逆転には至っていませんが、このポストシーズンでは継投のタイミングでの”ヒヤリハット”も多くありました。


ブリュワーズ対D-Backsのワイルドカードシリーズ第二戦。
D-Backsは好投しているギャレンを6回で交代し、継投へ。3点リードの8回にイエリッチのバントヒットから1死満塁のピンチを向かえます。適地の大きい歓声の中、一発を浴びれば逆転という展開でシールフランクが見事に火消しをました。


アストロズ対ツインズの地区シリーズ第一戦。
アストロズは6回6奪三振無失点と好投していたバーランダーから7回にネリスにスイッチするも、ポランコにスリーラン、ルイスにソロを立て続けに打たれ、5点あったリードは一時1点差まで詰め寄られました。


逆に同カードの第二戦では、ツインズが7回まで無失点と好投していたロペスから継投に入ると、変わったスチュアートがアストロズのアルバレスにツーランを浴びています。6点差があったからよかったものの、僅差だった場合は試合の勝敗を分けていた一発だったかもしれません。



ポストシーズンで、先発投手は序盤から最大限の集中をし、1球1球ベストピッチを続けなくてはなりません。たとえ経験豊富であり、今季レギュラーシーズンで好成績を残している投手であっても、ポストシーズンのゲームでは終盤までに蓄積する疲労は相当なものだと考えられます。

そのため、ポストシーズンだとしても好投している先発投手に120球、130球を投げさせることはまれであり、やはり打線が3巡目に回ってくるあたりのタイミングでどうしても継投に入らざるを得ません。


相手バッターは、これまで手を焼いていた投手が変わることで「なんだかいけそうな気がする」と自信をもって打席に向かわれる可能性があり、特に相手チームホームの場合はバッターへの後押しも大きくなります。


守備側としては、先発投手から継投に入るタイミングは細心の注意を払う必要があります。相手に少しでも勢いをつけないためにも先頭バッターの出塁は避けたく、特にベッツやアクーニャJr.のようなキーとなる選手にはアウトカウントに関係なく要注意です。彼らは盗塁で自らチャンスを拡大するだけでなく、後続のバッターに長打力もあるため、1、2球で一気に得点される可能性があります。

そのため先発から継投する際には、バッターにバットに当てられず三振を奪う能力が高いリリーフを起用したいところです。9回を待たずにクローザーも持ってきてもいいかもしれません。

また、このような場面のプレッシャーを軽減するためにも、ポストシーズンでは特に序盤から中盤にかけて中押し、ダメ押しで相手の息の根をとめておくこともより重要となります。

(3点差の6回にフィリーズ・ストットがまさしく相手の息の根を止めるグランドスラム)


逆に攻撃側としては、継投はまさしく相手が差し出す絶好の”ワンチャンス”。
これまでの自身への攻め方から、相手バッテリーが自分のことをどう認識して、この試合ではどう組み立ててくるのか”仮説”があるはずであり、それが3打席目、4打席目では有利に働くかもしれません。
また、短期決戦とはいえ、リーグチャンピオンシップ、ワールドシリーズでは同一の相手と最大7試合戦うことになり、シリーズ後半ではリリーフ登板したとしても初見ではないケースが出てきます。

昨年のワールドシリーズでのアルバレスの決勝となる逆転3ランも、相手リリーフのアルバラードはこのシリーズで3打席目(3試合連続)の顔合わせでした。やはり、バッターとしてはボールの軌道、タイミングのイメージができていることは大きいです。

加えて、好投した先発投手の後を継ぐことはどんな経験豊富なピッチャーであろうともやはりプレッシャーであり、手元が狂いコントロールが乱れ、カウントを悪くして甘い球が来る可能性も高くなります。



今日行われていたドジャース対D-Backsの地区シリーズ第二戦でも、ドジャースは3点ビハインドで迎えた6回に先発ギャレンから1死1,2塁のチャンスを作り、D-Backsは投手をシールフランクへ交代。シールフランクはレギュラーシーズンで10試合だけ登板した新人投手。ドジャースはフォアボールでさらに満塁とし1点を返すのですが、その後変わったトンプソンに後続を打ち取られ追いつくことができず、その後は反撃の糸口を掴めずに敗戦。

結果的にこのギャレン交代前後のシチュエーションがまさしく”ワンチャンス”であり、それをものにすることができませんでした。


ポストシーズンは力のある先発投手が投げるケースが多く、レギュラーシーズンで圧倒的な成績を残していたとしてもなかなか打ち崩すのは難しく、劣勢になるケースがあります。ただ、ビハインドで終盤を迎えたとしても必ず投手交代のワンチャンスが残っており、このタイミングで如何に勝負に出ることができるか、また、このワンチャンスに向けて如何に点差を広げられずに投手陣が踏ん張っているか、短期決戦ではこの攻防が勝負を分けていると考えています。



※Xでもほぼリアルタイムでつぶやいています。


出典、画像引用元
https://www.tsn.ca/mlb/austin-riley-homer-caps-atlanta-braves-comeback-win-over-philadelphia-phillies-1.2018766
https://www.mlb.com/



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