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Kaoリセッシュ関連特許の本質を掴む。

 こんにちは。nabです。いわゆる企業弁理士として中小企業に勤務しています。今回は、J-Pratpadの審査経過書類を参酌しながら、kaoリセッシュの発明のポイント(本質)をJ-Pratpadの審査経過書類を参酌しながら、確認していきたいと思います。今回のようないわゆる目に見えない化成品に関する発明は、どこがポイント(本質)になって登録されたのでしょうか❓️ 

発明のポイント(本質)を知ることは、特許調査、侵害判断、アイデア創出などの場面で役立ちます😃

※この記事の「ポイント(本質)」とは、従来技術との相違点を指します。特許権を取得するためには、前記相違点と、その相違点によって、起こる効果が重要になります。

 審査経過書類へは、J-Pratpadのホーム画面で、対象の特許番号(今回は5695288号)を打ち込んで検索ボタンをクリックすると 、画面の右部分に『経過書類』が表示されますので、そこにアクセスすることで、拒絶理由通知書、手続き補正書、意見書などの審査経過書類を確認することが出来ます。以下の操作をご参照下さい。

特許番号打ち込み

『経過書類』の表示

審査経過の確認

※今回は、2回目の拒絶理由通知のやり取りによって、従来技術との相違に関する29条関係(新規性・進歩性)の拒絶理由が解消されていますので、2回目の審査経過に注目します。

 ①拒絶理由通知書の確認 

拒絶理由が新規性違反 or 進歩性違反かを確認する。

 拒絶理由通知書を確認すると、新規性違反及び進歩性違反の拒絶理由が通知されています。特許権を取得しようとする発明が従来技術と同じだったり、大して違いのない発明は登録されない決まりになっています。

②手続き補正書の確認

補正部分を確認、ポイント(本質)を大まかに掴む。

 下線部分が補正(修正)箇所になります。出願人は、前記進歩性違反等を解消しよう、つまり従来技術との相違を明確にすることを目的として、補正(修正)を行っているわけですから、その補正部分は、発明のポイントとなっている場合が多いです。冒頭で述べましたが、特許権取得の可否は、従来技術との相違があるか否か、そしてその相違によってどのような効果があるのかで決まるといっても過言ではありません。

 請求項(出願人が求めている権利範囲)には、(1)香料物質(青枠)と(2)香料物質を用いてトリメチルアミン及び/又はピリジンを低減させる方法(赤枠)が記載されており、(2)中の「トリメチルアミン 及び ピリジン」に下線が引かれています。どうやら、今回の特許は、内容物に関するものであり、特定物質を低減させる方法にポイントがあるようですね。

※ちなみにウィキペディアによれば、トリメチルアミン及びピリジンは、悪臭物質で、トリメチルアミンは、低濃度では魚臭、高濃度ではアンモニア状の匂いがするそうで、ピリジンは、腐り果てた魚の匂いがするそうです。

③意見書の確認

意見書で従来技術との相違点、その効果を確認する。

 意見書によれば、香料物質(ヌートカトン、ゲラニルアセトン、メチルへプテノン、シスジャスモン)は既に従来技術で公知だけれども、その香料は、特定のにおい成分(トリメチルアミン 及び ピリジン)を低減させるものであることの示唆は従来技術に記載していないと出願人は主張しています。

 今回の発明は、何か物質を合成したり、混合させて新しい物質を作り出したというよりは、既存物質が、特定のにおい成分であるトリメチルアミン 及び ピリジンを低減させるというの新たな効用を発見したことにあるようです。このような発明を用途発明といいます。

※特許庁審査基準によると、用途発明とは、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することに基づく発明であると定義されています。

出願人の主張が認められ、特許査定がされています。

④明細書(図面)

具体的な構成や効果を確認する。

 明細書中の実施例において、出願人は、今回の香料(ゲラニルアセトン、ヌートカトン、メチルへプテノン、シスジャスモン)がトリメチルアミンの低減に寄与していることを確認しています。なお、ピリジンについても、同様に確認を行っています。今回は、目に見えない化学系の発明のポイントについてでした😆

最後まで、お読みいただきましてありがとうございました!!

※今回の一連の情報は、あくまで特許出願情報の簡易的な把握を目的としています。審判段階及び裁判所におけるやりとりについては、一切参照しておりません。いわゆる判例研究等の情報については、他の弁理士さん等がされておりますので、そちらをご参照ください。

※また、特許発明の本質をより深く理解する為には、明細書の精読に加え、従来技術の把握が必要になりますので、時間に余裕がある方は是非確認してみてください。



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