お江戸スタイルブック no.011
文化文政期(1804〜30)を代表するスーパースター。
『目千両』こと、五代目・岩井半四郎(いわいはんしろう)。
女方は、舞台を降りても女性の装いです。
額の野郎帽子(紫帽子)で役者ということがわかります。
江戸っ子にとって役者はファッションリーダーでもあるので、私服も気が抜けません。
全体的にピンクや紫などを基調にして、フェミニンな雰囲気。
男性だなんて、言われなければ絶対に気がつかない…
どこからどう見ても、目がぱっちりとした絶世の美女。
国貞センパイは、数多の役者絵を残してくれているので、本当に助かる。
それも、特徴をいい感じに捉えている。
適度に美化しつつ、実際にこんな顔していたんだろうなぁ…と、
なんとなくわかる。
三枚続きの浮世絵の、一番右の絵のセンターにおります。
厚着をした冬の日の装い。
五代目・岩井半四郎は、化政期を中心に活躍し
『目千両』と称された美貌と愛嬌に加え、台詞回しにも優れ、
所作事も完璧… というスーパー女方。
なぜ『目千両』と呼ばれるのかは、
なんてったって、このぱっちりお目目のパワーにある!
この圧倒的な目力で、千両稼ぐというのであります。
ちなみに、意外かもしれませんが
江戸時代は立役より女方の方が待遇が上だったそうです。
現代でも人気演目である『お染の七役』の初演を勤めたのはこのお方。
『土手のお六』などの『悪婆』という役柄を定着させたのも、この五代目なのです。
その型が現代にも受け継がれているのですから、胸が熱いですね。
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