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もやもやとカラオケ

いつも絶好調というわけにはいかない。

気にすることでもない些細な、第三者が聞いたら「そんなの大丈夫だよ!」と太鼓判を押すようなことでも、本人にとっては気になってしかたがないときもある。

そして、そうした「もやもや」が生じるのは、往々にして「単純に疲れている」ときだとわたしは思っている。人は生命体なので、体力が消耗すると思考力も低下し、普段なら気にしないことも気になっていくものだ。

昨日は土曜日にも関わらず、朝早くから出かける仕事(原稿書きではない仕事。たとえば取材とか打ち合わせ、VTRのチェック、スタジオでのナレーション録音など)を何件かこなして、帰宅は深夜の0時を過ぎていた。

わたしは基本的に「のんびり」「ぼーっと」している人間である。
今は放送作家をしているけれど、ドラマを書いていた頃も含め、常にハイペースなこの業界の時間軸にはついていけないとよくわかっている(気づけばもう30年近く。よく続けてこられたなあ)。一日3件以上の打ち合わせは入れないことにしているし、徹夜で原稿を書くような事態には陥らないよう調整して、「これは体力的に無理」というお仕事は丁重にお断りするようにしている。

だから普段はわりとマイペースに、ときどき好きなパンを焼いたり、主婦業も楽しめているのだが、ここ数年、年末にかけてのこの時期は、けっこうバタバタしてしまう。特番などの仕事がどうしても重なってしまうからだ。

そんななかで、昨夜は原稿にちょっとしたミスが見つかり、落ち込んだ。
いつもなら決してしない初歩的なミス。具体的にいうと、「正式競技」を「正式種目」と書いてしまった(なんだたいしたことないじゃないか、と思われる方もいるかもしれないが、ゆゆしき間違いである)。幸いスタッフが気づいて事なきを得たので、問題なくナレーション録りは終了した。こういうことはよくあるし、わたしも普段なら「これから気を付けよう」で済むことなのだが、なぜか今回は一日経ってもずっと「もやもや」が続いていた。単純に、ここ数日の疲れが溜まっているだけなのかもしれない。

「カラオケでも行く?」
近所のスーパーで夕飯の食材を買った帰り。夫がふいにそう言った。
冴えない顔で「なんかもやもやしてて」とわたしが口にしたからだ。歌うのは大好きである。そういえば最近、ちっとも歌えていない。
「行く行く!」
両手にずっしりと買い物袋を提げたまま、わたしたちはカラオケ店に直行した。

一時間ほど歌って外に出たら、さっきまで木枯らしに縮こまっていた背中がぴんとしているのがわかった。冷たい風は相変わらず吹いているのに、足取りも軽い。

ストレス発散、というのとは、ニュアンスがちょっと違う。
もやもやがすっかり解消されたわけでもない。でも、「健やか」な気分。

走ったり泳いだり、運動したあとの爽快さに似ている。
やはり身体と心はつながっているな、と実感した。

健やかな身体に、健やかな心が育まれていくのだ。

追伸。いま歌うのはコレでしょ!と練習してみたのは・・・この歌です。

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