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赤い月の焔

今夜の皆既月食。
『スーパーブルーブラッドムーン』という、青なんだか赤なんだか、とにかくすごく珍しい月らしい。日本では35年ぶりという数字がネットに出ていたが、その頃少女だったわたしは、この月を観たのだろうか?

夜のニュース(NHKの『ニュース9』)でも、番組開始からお祭り騒ぎ。9時51分に月が太陽の影に隠れると、北海道や六本木ヒルズから中継していた。

「スーパームーン」+「ブルームーン」+「ブラッドムーン」=「スーパーブルーブラッドムーン」

この数式をわたしは、次の皆既月食(四年後らしい)まで憶えていられるか自信がない。
そもそも天文学にはめっぽう弱い。地球の影に隠れた月が赤く見えるのは、太陽の光のうちで「赤」だけが影響するらしいのだが、なぜ赤だけなのかもさっぱりわからない。

それでも、風呂上りのパジャマに上着を羽織り、寒さに震えながらも外に出て、SNSに投稿する多くの人々と同じく、携帯のカメラにその姿を収めた。

怖いもの見たさ、に似ている。
赤く燃えるような月は、実際、とても怖かった。

古(いにしえ)の人々が、忌むべきものと畏れたのがよくわかる。
いつもの白い月が真っ赤になるなんて、おそろしいことこの上ない。

天文学の知識が乏しいわたしも、NASAや天文学者たちが今日の月を事細かに説明し、世界中で報道されているからこそ、安心して観られるのだ。
なぜ「赤い」のか、理解できなくとも。

ほんとうに恐ろしいのは、「情報」や「常識」かもしれない。
正しいという保証はどこにもないのに、誰もが信じているのだから。

もし、なにも知らず、なんの情報もなく予備知識もなく、この月を見たら。
わたしはどう感じただろう?

燃えるように迫る、この月を。

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