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「ゆ」

この連休は、久しぶりに夫婦で一泊の温泉旅行へ出かけた。

旅館に着くなり、通された部屋でお茶菓子を頂くのも後にして、いそいそと大浴場を目指す。旅の目的は「ゆ」である。なにより「ゆ」が先決だ。さあ、のれんの「ゆ」を潜ろうという段になって、ちょっと足を止める。

「ゆ」の文字を品定めしなければ。

下の名前の本名は「有生子」というので、わたしは物心ついたときから「ゆ」の文字に愛着がある。それもひらがなの「ゆ」が好き。だからお風呂の「ゆ」にはちょっと特別な思い入れがあって、「湯」と漢字だったり、「〇〇湯」とか「女」としか書かれていなかったりすると、入る前からひどくがっかりする。

この伊東の旅館は「ゆ」の一文字だった。丸っこくて可愛らしい、好みの字。わたしは大満足で、「ゆ」を潜った。そして期待通りの、とてもやわらかく肌当たりのいいお「ゆ」を、愉しむことができた。

詩人としてのペンネームを考えた当初、わたしは「ゆ」を手放したことが本当に辛かった。「撫子」にしたのは、有生子の「有」と真逆の「無」という字が入っているからだ。これまでの自分とは違う自分になりたかった。

昨日は、そんな「撫子」としてHPを開設し、新たな一歩を踏み出した記念すべき日。

ささやかな「ゆ」の喜びに浸りながら、これからは「な」に執着すべきかと考えたが、まだそこまでのこだわりはなく、のぼせる前にとりあえず考えるのをやめた。

今日、帰りの電車のなかでも再考してみたけれど、ほどよくこだわれる「な」が、なかなか見つからない。

「な」・・・うーん、なんだろう?? 






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