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10番を背負う男

今日、ブラジル対日本の親善試合で、乾貴士選手が背番号10をつけた。
代表のエースナンバーである。
ハリル監督の采配で後半からの出場だったが、やはり彼は魅せてくれた。

後半42分。カゼミーロからファウルをもらった乾にフリーキックが与えられ、杉本がヘディングを決めた(けれどオフサイドだった)場面。
結局ノーゴールになってしまったが、なんとも美しいフリーキックだった。
彼こそが今のチームで10番を背負う男だと、このとき誰もがそう感じ、納得したに違いない。乾ならきっと、日本のサッカーに風穴を開けてくれる。未来を明るくしてくれるはずだ、と。

10番はどんな試合でもチームを救う、結果を出す絶対的なエースを指す。ピッチに入った瞬間から期待感でその背中を追う選手だ。
そして昨夜の乾選手はその『10番』の責務を、しっかり担っていたとわたしは思う。

今年5月末に放送した『ノンフィクションW 乾貴士~そのドリブルで未到の領域へ~スペインで戦う孤高のフットボーラー』(WOWOW)。
わたしはこの番組の構成とナレーション原稿を書かせて頂いた。

今日はその導入部分(アヴァンといいます)を読んで頂けたらと思う。
ディレクターが何度もスペインに足を運び、エイバルという1部にあがったばかりのチームに所属する乾を取材した。彼の日常と試合をつぶさに追って、作り上げた作品である。

冒頭は放送の数日前に行われた、リーガ最終節のバルセロナ戦(@カンプノウ)。
奇跡としか言いようのない、しかし奇跡ではない2ゴールをあげたときの、乾選手の顔から始まる。

★【ノンフィクションW乾貴士 N原稿】

00‥01     N フットボールの聖地で、奇跡が起きたと人は言う。
00‥08     N 奇跡? 
00‥12     N そんなもんじゃない。
00‥15     N オレは――未来を創ったんだ。
※プレー見せて~

※《黒バック白字》 昨季は3ゴール。
今シーズンは何ゴールを獲るつもりですか?
乾ON「そうっすね。今年は10ゴール行きたいかなと思います」
※《黒バック白字》 10ゴールを獲りたい
練習の声「行けタカ!いいぞタカ!」「タカ!ダイレクトで打て!」
01‥05     N 10ゴールを獲ると、豪語した。
スペインでの愛称は、「タカ」。
乾ON「すごく楽しいんですよ。練習。仮に試合に出られなくても、腐らずに
この練習をやり続ければ絶対に成長できる。だから絶対に手を抜かない」
※筋トレ声「あーっ!」
01‥40     N 乾貴士。(いぬいたかし)。
            所属チームは、エイバル。

01‥49     N 「たとえ日本では一流の選手でも、スペインでは 成功しない」
             先人が阻まれたその壁を破るのは――オレだ。
02‥06     N 世界最高峰のリーグ。リーガ・エスパニョーラ。
※歓声~
02‥13     N 昨シーズンからこの舞台に立ち、
            数々の日本人記録を塗り替えてきた。
            持ち前のドリブルとテクニックで。
※実況「イヌイがボールを奪った!注目だ! なんてゴールだ!日本人選手が
素晴らしいゴールを決めた!」
カルバハルとイスコON「タカシ、彼はすごくいい選手だよ」
シメオネ監督ON「今日のイヌイは非常によかったですね」
02‥55     N 迎えた、2年目のシーズン。
            チームを誇りとする人々の声援に応えたい。
            だから絶対に、手を抜かない。
            たとえ試合に出られなくても。
乾ON「このまま試合に出られないと何回も考えた。言葉も違う、監督の考えも全然違う。サッカーも違う。それを乗り越えるために自分がどうもがくか。必要ないと言われるまでスペインでやりたい」
※《黒バック白字》 必要ないと言われるまでスペインでやりたい

通訳ON「オフの日に連絡が来て『グラウンドを取ってくれへん?』って。
『シュートを決めなきゃいけないし決めたい』と自主練をしていた
03‥44     N 覚悟は、決めている。
            結果を残すために、この場所へ来た。
            たったひとりで。
            大切な家族を、日本に残して。
チームメイト(ゴンサロ)ON「タカのように海外でプレーする選手は、大事なものを母国に残さなければならないんだ」

04‥10     N オレは、走る。
            磨き上げたドリブルを武器に、
              スペインのピッチを駆け抜ける。
            誰も到達したことのない、未到の領域へ―――
〇タイトル
  『ノンフィクションW 乾貴士 そのドリブルで未到の領域へ
            ~スペインで戦う孤高のフットボーラー』

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