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インスタ映え

豪華な刺身盛りを前にして、友人たちと交わした第一声は「インスタ映えする!」。

皆、携帯を取りだし「いい感じ〜」「横より縦かな」とはしゃぎつつ、それぞれが写真に納めた。

そんな場面が当たり前のようになったのはいつからだろう?
Instagramが登場するずっと前、FacebookやTwitterなどのSNSが始まった頃からだろうか。いや、携帯にカメラ機能が加わったあたりからかもしれない。

時はあらゆるものを変えていく。
人も街も、風景も、習慣も。

店を出て、寒空の下を歩きながら、小さなため息をついた。

久しぶりに訪れた街で、20年前と同じ景色を探してみる。
あの頃、毎日のように乗り換えていた駅のホームに立つ。
けれど、なにが同じでなにが違うのかさえわからなかった。そもそもの記憶が曖昧だ。

変わらないものなんて、何一つない。

変わっていい。それで困ることはなにもないし、ちっとも構わない。なのに、なぜかせつない。

インスタ映えしたこの写真も、見返すことなく、いずれ撮ったことさえ忘れてしまうくせに。

「今、鮮やかなこのとき」に未練はないのに、「過去の色褪せたいつか」を惜しむなんて。

「今」もやがては、「過去」になるのに。

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