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ゆずの香りとキムチのご飯

【12月に書いた熟成?下書きを蔵出しします】

冬至にはかぼちゃを食し、ゆず湯に入る。
どんなに忙しくてもやってきた私の習慣。
母の代から続くうちの習慣。

私にも息子にもちょっとヘヴィーな出来事が続いて、
もやっとしたり眠れなかったりで精神的にちょっと参っていた。
今週月曜の冬至の日、かぼちゃを入れたほうとうを食べ、
夜中ゆっくりゆず湯に浸かった。
ああ、あったかい。
何となくささくれ立ってしまっていた気持ちが、まあるくなっていく。
きっと今日はあの子もこうして気持ちが明るくなったんだな。

お湯に浸かってゆずを弄ぶ。
転がる度に立ついい香り。ちょっと爪をたててみる。
また香りがふわっと立ち上る。

ふと、赤ん坊だった息子を抱き湯船に浸かったいつかの冬至を思い出す。
ゆずが浮いているのを見た息子は、ポンポン叩いて遊んだり手に取ってクンクン香りを嗅いだり大はしゃぎしていた。
あの小さかった息子はここのところぐんと背丈が伸び、既に私を超してしまった。時々見せる大人びた表情に戸惑うばかりだ。
それでもあくびをしている顔と寝顔は昔と笑っちゃうほどおんなじで、
それを眺めるのは今の私の密かな楽しみでもある。

外でちょっと嫌な事があったり、困った事柄に遭遇したりすることなんて
生きてりゃ当たり前で、
そんなこんなを経験しながらみんな大人になっていく。
学校で、習い事の教室で、部活で、近所の遊び友達と・・・ちょっとした諍いや誤解から生じる仲たがいや仲間外れ、そして仲直り。。。
私にも、もちろんあったあの懐かしくもヘヴィーな日々。今から思うとなんてことないことなんだけど、当時の私には毎日が真剣勝負だった。

サッカーの練習から帰った息子はあの日、いつもより長く湯船に浸かってホカホカに温まって出てきた。赤くなった身体からゆずの香りが漂っている。
早く寝巻き着ておいで湯冷めするよと声を掛けると、うん、と素直に頷きニコニコにして居間に戻ってきた。その笑顔に不自然さは微塵も無く、呆気ないほど普通で自然だった。

ああ、大丈夫だ。いつものあの子に戻ったな。
ちょっとしたトラブルも経験にして、彼はきっと少し成長したのだろうと思う。私にできることなんてきっとあまり無いのだ。

でもね。
外で何があっても家に帰ったら安心して過ごせる、そんな家でありたい。
そんな母でありたいと思うよ。

ゆずの香りに包まれてホカホカの息子は「あーおなか空いた。ご飯食べていい?」と。いや、サッカー行く前にほうとう食べたんだけどね・・・
まあ2時間も運動すればそりゃお腹も空く。いいよ、と言うと、一人でさっさと冷凍してあるご飯を温め、最近お気に入りの「ご飯がすすむシリーズ」のキムチをとろけるチーズと一緒にその上に乗せ食べ始める。目が合うと「うまい。これ超うまい!」とニコッと笑って親指を立てた。

そう、美味しくご飯が食べられれば大丈夫。

ゆずの香りはキムチの匂いに完全にかき消されてしまったけれど(笑)柑橘類が大好物の息子のこと。
この日はゆず湯に癒されたに違いない。私が癒されたように。

来年も、冬至にはカボチャを食べてゆず湯に入ろうね。こうしてなんてことない日々を積み重ねていくのだ。

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