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「若いうちに俳句を始められていいね」と言われて

大学を出てしばらくしてから現在の結社に入って、何度この言葉を聞いたことでしょう。

でも20~30代の私は
「俳句を始めるなら30歳前後のほうがよいのでは」と思っていました。

私の周囲をみると、そのくらいの年齢から始めた人の方が新鮮な感性を維持しつつ、言葉と感覚のバランスをよく詠んでいるように見えました。
鑑賞も深みがあって素敵に聞こえました。

もちろん「若い」ゆえに詠める世界もあって、その特質を生かした表現を俳句として残せるという意味なら、生物学的年齢が若い時からやる利点はあると当時は思っていました。

でも今考えると、始めるのは誰でも、いつでもできるけど、そこから「続けられるか」は個人の性格や姿勢、機会などが関係し、年齢は関係ないのですよね。

最初は素敵な作品がたくさんできても
いずれ壁に突き当たるのは(程度の差こそあれ)年齢を問わず皆同じでしょう。

そして技術が身についてきたら、今度はそれが邪魔をして、それまでの作品の魅力や個性が見えづらくなった。
だからか「巧くなったけど面白くなくなったね」と言われたり。
始めてしばらく経つと、そんな経験をされる方もいるのではないでしょうか(私はしました)。

現在、高校生や大学生のうちから進んで俳句をやっている方たちがたくさんいて、
そんな方たちがたまに私のSNSを
覗いてくださっているようで
嬉しく思っています。
当時の私の年齢ですら「ずいぶん早くから俳句を」と言われていたのに、変わったなあと思います。
そして、仲間が増えた気が(勝手に)しています。

そんな中で

大会などで賞を取って、その後に
それを超える作品が作れない。
俳句を続けているけど、外にはもっと
上手な人がいっぱいいて
自信がどんどんなくなっていく。
卒業や進学、就職などの環境の変化、
結社などに入ったことなど、
俳句はもとよりそれ以外の世界も
いろいろと広がった分、
これまでの表現や方法でよいのか。

そんな迷いが生じることも多々あると思います。
その結果「やめよう」と決めたり悩んだ人も
いる(た)と思います(私も何度思ったことか)。

でも、その悩み・痛みは、(どの表現を志しても)ついて回ります。
そしてそのことにも年齢は関係ありません。
「何かを作ろう」という意思がある限り。

そのとば口に立っているあなたは
既に表現者の一歩を確実に踏み出している
と思います。

私が俳句を始めてそろそろ四半世紀。
俳句と出会った頃は
「30代前半で結婚して母親になって辞めて
「昔お母さんは俳句をやってたんだよ」と
子どもに言っているのかな」と想像してたのに。
まさか今、自分の子どもくらいの年齢の方たちに作品や句集を読んでいただけるようになろうとは!(^^;

「若いうちに俳句を始められてよかったな」
そして
「俳句を辞めなくて、本当によかったな」

今回の句集『柔き棘』を出して、
初めて心からそう思えました。
そして、これからも大いに悩みつつ
俳句という「少し距離のある友達」と歩こうと思います。

どうぞ答えやゴールを焦らずに。
時間は時に思いがけない伏線を
張ってあなたを待っていてくれますよ。
そして、私の作品と文章を読んでくださり
いつもどうもありがとう。

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