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五感で選べ

ネット注文して、楽しみにしていた本が届いた。最近お気に入りのエッセイストさんの本で、タイトルもワクワクするものだった。これは絶対に読まなくては、今の私に必要なものだ!と確信をもってカートに入れたはずだった。

届いて、すぐに開封し、ページに目を通したら、違った。

これは今の私が欲しているものではないと、直感的に思ってしまった。

今の私は、その人が渾身の力を込めて綴った文章を欲していたのだ。人の内にあるモヤモヤとした形のない気持ちや考えを表す、太陽の日差しも届かない所まで深く深く潜って辿り着いた「これだ!」という光のような言葉に触れたかった。それが私のモヤモヤとしたら気持ちを形にしてくれる言葉であることを期待して。

しかし私は対談本を買ってしまった。

そして、思い出した。一か月前にも同じことをやった。

エッセイストさんは悪くない。この本に罪はない。私が、選択を誤っただけの話だ。ちょっと残念な気持ちになった。

これがネットショッピングの罠なのだろう。もし、本屋さんに行って本を買っていたら…と想像する。エッセイのコーナーを探し、その道の途中で平積みにされているビジネス本を眺める。へえ、今のトレンドはこれか、などと思いながら、参考書コーナーを通り過ぎ、エッセイコーナーに辿り着く。昔好きだった作家さんはどうなっているのかな、と寄り道をしながら、お目当ての本を探していく。見つけて、手に取って、ぱらぱらとページをめくり、「私が今欲しいのは対談本ではない。この人が綴った文章が欲しいのだ」と気付いただろう。その文章を感じ、自分と対話して「これは違う」と思えただろう。そして数冊、そのエッセイストさんの本を手に取り、「これだ」と感じる文章を見つけて、レジに向かったはずだ。途中、ファッション誌や旅行コーナーエリアものぞいて、情報収集と称して立ち読みをしながら。

ご時世柄、気軽に街に繰り出すことは難しい。そのため、ネットショッピングはとても重宝する。クリック一つで家まで届けてくれるのだから、関係者の皆様には本当に感謝している(システム開発者、物流の人、仕組みを維持してくれている人)。だからこそ、利用者がしっかりと使い分けなくてはいけない。ネットショッピングでは通常と比較して、五感で買うこと難しいと理解し、より正確に狙いを定める。ネット上の情報と実際の店舗では、情報の質が違うのだろう。情報の受け取り方、処理方法が違うのだと、失敗しながらでも学習していく。

私はもっぱらの感性人間なので、特に注意しなくてはならないだろう。

狙いを、正確に定める。

それに疲れたら、五感を解放して買い物をしよう。何も買わなくても、見ているだけできっと幸せな気持ちになれる。何かを手に入れるだけが目的ではないし、物質的ではない何かを、もうすでに手に入れているはずだ。それは誰にも奪えない、素晴らしいものに違いない。

もうさすがにコロナ疲れしているので、そろそろ五感をフル解放したい。

ああ、最後はそんな内容になってしまったな。

自己解放したい。


ながいけまつこ


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