essay#3 本を読むこと


子どもの頃、家のことや仕事、私以外にも妹たちの子育てで忙しかった両親とあまり話す機会はありませんでした。

その代わり、夕食をとっとと食べ終えてしまえば両親と妹たちが過ごす寝室の本棚に並ぶ本を好きに読み漁ることができたので、部活動もなかった小学生当時、私の唯一と言ってもいい楽しみは両親の蔵書を片っ端から読んでいくことだった気がします。

今でこそご縁あってガッツリ漫画というか漫画家さんに関われていますが、マンガの読み方も割と最近までわからなかったくらいに私は活字しか知らずに育ち、それでも活字が持つ魅力に幼いながらもどんどん惹き込まれていったのです。
小説もエッセイも詩集も好きでしたが、中でも日差しに舞う埃が似合う古ぼけたアンティークのように鈍い輝きを放っていたのが小川未明の作品集とトールキンの指輪物語、サン=テグジュペリの星の王子さまでした。


本を読んでいる間は違う世界に行けるので読書は私にとって一種の逃げでした。

母にとっては義理の両親、そして義理の姉妹(母にとっては小姑たち)との同居…

父にとっては自宅が職場でもあるわけで…


両親にとり、私達賑やかな子どもの存在は何かにつけストレスだったようです。

あんまりこういう事言わない方がいいのでしょうが、父からは事あるごとに馬乗りでブン殴られたり、突き飛ばされたり、頭を壁に叩きつけられたり、首根っこ掴まれて太鼓を貯蔵してある真っ暗な石蔵に閉じ込められたり、お腹を蹴られたりしてきましたし、

母からも「あなたは皆んなと仲良くできていいね…」と悲しそうで悔しそうな声と共に、ちょうど服で隠れそうな部分を強くつねられたりもしてきました。

だから、私にとっては父や母の存在は恐ろしかったし、妹達のやらかしは姉である私の監督不行届きとして仕置きの対象でしたし、
とにかく心休まる時間が欲しかったのです。

夕食後階段を駆け上がり寝室に向かい、両親がそれぞれ不機嫌な足音を響かせながら階段をのぼってくる音が聞こえてくるまで許された、物語の続きを読めるわずかな時間がその大切なひとときでした。


このように動機は崇高なものじゃありませんでしたが、本の世界に親しんでいる間だけは、活字から広がる自分1人のバーチャルな世界がそれはもう楽しくて楽しくて、(アラサーになるまで漫画を読む習慣がなかったので、最近になって漫画すげえなってなってる)たまーーーーに小さくさり気なく挿絵が添えられたりしてると、
【ええ!?こんな感じかよ!!!これが公式!?】
と自分の中で育んでいた世界のイメージとのギャップに驚いたり、喜んだり、それもまたものすごく楽しくて。

活字という二次元と三次元を行き来できる素晴らしいものに、私は間違いなく救われて陶酔していました。


でも中学に入り部活動というものが始まり、下手なりに打ち込むことになりました。
大好きな友人や尊敬できる先輩達がいて、あと何故かその頃漢字検定に凝り出してしまって、高校の入試対策そっちのけで【国璽】とか書けるようになってフフンと満足してみたり(そのくせに高校入試の第一限目、国語のいっちばん最初の問題【次の言葉を漢字にしろ:ヤスらかに眠る】が書けずに滝行した後みたいな汗をかいたものです)、

いつの間にか年間読書数が減り、高校時は周りが秀才ばっかりだったので「いやいやいやいや私なんぞがアナタ様と一緒にこんな崇高な作品を語ってはいけませんて…」と変に遠慮が出てくるようになってしまい、、、

そう、読書量も内容も子供の頃のままでストップしてしまってるのです。

なので私にとって宮沢賢治や小川未明は勝手にマブダチ認定なんですが(失礼)三島由紀夫とか萩原朔太郎とかって、ハードルが高すぎな気がするというか、いまだに『お前ごときに俺の文学がわかるのか?』て言われそうな気がして(多分ご本人はそんなちっちゃいこと言わないんだけど)畏れ多くて、
イケメンと騒ぐのみで(イケメンと騒ぐのは畏れ多くない)今までちゃんと拝読できずに生きてきてこの歳になってしまいました。

なので、ほんと、わざわざ言うまでもなく文章からも漏れてるとは思うんですが、、、素養がない自信は、ありまぁす!!(某S○AP細胞、スマップではない)

でも今年は仕事以外でも自分のために時間をかけたいなと思うようになり、まあ言ってしまうとこないだ引いたおみくじが散々で
【すべてにおいて今は全く見通し立たない靄の中で、結果が残せない。何かしようとしても邪魔も入るし中傷もされる、そしてきっとお前は凹む。自暴自棄になる。だがやがて来る明日に備えて今はひたすら腐らずに辛抱、努力、下ごしらえの時である】
って書いてあったのでそれなら下ごしらえしてやろうと思った次第なんですけどね。
ていうか今おみくじ読み返してるんだけどひどくないか?いやめっちゃ刺さったけどさ!!下ごしらえって料理関係以外で初めて言われたわ!

ちなみに末吉です。私、宇都宮だろうが日光だろうが二荒山神社でおみくじ引くと毎回末吉だな…末吉でコレかい…

なので、買って満足して終わってた本達を片っ端から読了しております。やっぱり本ていいですね!電池切れの心配もないし。

移動中や仕事の合間にも、友人とごはん食べてても本読んでるので、そろそろベルっていうあだ名がついて脳筋バカに求婚されて父が拉致られて呪いのかかったコミュ障失礼王子とよろしく結ばれるかもしれない。ポットとか時計とかローソクと仲良くなれるかもしれない。


えええ…


いいじゃん!

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