ながやん

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朱き空のORDINARY WAR(32/32)

最終話「エピローグ」  夕焼けの赤が、水平線を燃やして落ちてゆく。  ゆっくりと入水する太陽は、最後の残滓でユアンを照らしていた。  飛行甲板ではまだ、多くのクル…

ながやん
9か月前

朱き空のORDINARY WAR(31/32)

第31話「穿ち貫く軍神の神槍」  二人を別つ、生と死。  今、一つの伝説が終わった。  五十年戦争と呼ばれる長き戦いの末期を、彗星のように駆け抜けた美貌の少女エース…

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9か月前

朱き空のORDINARY WAR(30/32)

第30話「復讐姫が朱に染まる時」  再び希望の方舟は疾走り出した。  一切が謎に包まれた動力による、100ノットを超えるスピードで。  戦後の世界で闇から闇へと、影の…

ながやん
9か月前

朱き空のORDINARY WAR(29/32)

第29話「朱き空の竜神翼」  揺れる機体が崩壊を始めた。  既にエンジンは死んで、蜂の巣になったボディが破綻し始めている。ラステルを守るため、身を盾に割り込んだユ…

ながやん
9か月前

朱き空のORDINARY WAR(28/32)

第28話「捨て得ぬものを得た男、捨てるもののない女」  ユアンが死線を超えて飛ぶ空は、既に彼の支配下にあった。  秘密結社フェンリルの飛行隊は、混乱から立ち直るま…

ながやん
9か月前

朱き空のORDINARY WAR(27/32)

第27話「赤い悪魔の羽撃き」  パイロットスーツに着替えたユアンを、再び激震が襲う。  再度エンジンを全開にして、特務艦ヴァルハラは不規則な回避運動で海面を泡立て…

ながやん
9か月前

朱き空のORDINARY WAR(26/32)

第26話「痛みを止めて」  耳に突き刺さる警報に、艦内の空気が張り詰めてゆく。  ずぶ濡れのままでユアンは、仲間たちと上層の飛行甲板を目指した。こういう時はエレベ…

ながやん
9か月前
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朱き空のORDINARY WAR(25/32)

第25話「休息の一時に濡れて」  名も無き翼のシェイクダウンを仮想現実で行った後に、ユアンには懲罰が待っていた。  エインヘリアル旅団も軍隊なれば、軍規は厳しい。 …

ながやん
9か月前
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朱き空のORDINARY WAR(24/32)

第24話「名も無き翼に、力を」  特務艦ヴァルハラはメルドリン市を出港し、再び外洋へと漕ぎ出していた。市民団体のボートに無言で睨まれる中、楽隊の演奏も市長の見送り…

ながやん
9か月前
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朱き空のORDINARY WAR(23/32)

第23話「無敵の笑顔で」  特務艦ヴァルハラへと戻ったユアンを待っていたのは、喝采と歓声だった。  ただし、自分へ向けられている訳ではない。  艦内の食堂へ顔を出し…

ながやん
9か月前
1

朱き空のORDINARY WAR(22/32)

第22話「翼が染め上げる空の色は?」  長い夜が明け、出港準備中の特務艦ヴァルハラが動き出す。  いまだ港に係留されたままだが、副長のロンはこれ以上の長居を危険だ…

ながやん
9か月前
1

朱き空のORDINARY WAR(21/32)

第21話「名も無き夜に」  訪れた宵闇は、サーチライトの中に巨艦を浮かび上がらせる。  今、特務艦ヴァルハラは首輪で繋がれた猟犬にも等しい。そして、周囲には野蛮な…

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9か月前
1

朱き空のORDINARY WAR(20/32)

第20話「償い贖うために」  無事に特務艦ヴァルハラへと、ユアンは戻ってきた。  彼を救ってくれたムツミは、すぐに艦内の医務室へと運び込まれる。救出部隊は待機して…

ながやん
9か月前
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朱き空のORDINARY WAR(19/32)

第19話「漂白されてゆく空」  妄念を乗せた翼が今、静かに舞い上がる。  瞬間、戦場を支配する空気は戦慄に凍り付いた。  全速力で逃げるヘリが、まるで牛歩の如き遅さ…

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9か月前
2

朱き空のORDINARY WAR(18/32)

第18話「妄執は白く燃えて」  ムツミを両手で抱えて、ユアンは走る。  軍事基地などどこも似たような作りで、それは協約軍も協商軍も変わらない。なにより、ムツミの残…

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9か月前
1

朱き空のORDINARY WAR(17/32)

第17話「絆は鎖に、血は導に」  監禁されたままでユアンは、死を覚悟した。  そして、それを甘んじて受け入れる諦めを拒絶する。  ドアのノックへと背を向けたエルベリ…

ながやん
9か月前
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朱き空のORDINARY WAR(32/32)

最終話「エピローグ」

 夕焼けの赤が、水平線を燃やして落ちてゆく。
 ゆっくりと入水する太陽は、最後の残滓でユアンを照らしていた。
 飛行甲板ではまだ、多くのクルーが修復作業にかかりきりだ。応急処置で辛うじて艦載機を収容したものの、激しい攻撃に晒された痕が痛々しい。
 特務艦ヴァルハラは、迫る宵闇の中でライトの光を幾重にも屹立させていた。
 そんな中、ユアンは甲板の隅で海を見やる。
 先程までの

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朱き空のORDINARY WAR(31/32)

第31話「穿ち貫く軍神の神槍」

 二人を別つ、生と死。
 今、一つの伝説が終わった。
 五十年戦争と呼ばれる長き戦いの末期を、彗星のように駆け抜けた美貌の少女エース……"白亜の復讐姫"の物語は結末を迎えたのだ。
 否、この瞬間からエルベリーデは伝説になったのかもしれない。
 平和な世の中で語られる戦争の美談として、創作物や逸話の中に生き続けるのだ。
 そして、ユアンもまた因縁を振り払った。
 一

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朱き空のORDINARY WAR(30/32)

第30話「復讐姫が朱に染まる時」

 再び希望の方舟は疾走り出した。
 一切が謎に包まれた動力による、100ノットを超えるスピードで。
 戦後の世界で闇から闇へと、影の中で邪悪を討つ……その名は特務艦ヴァルハラ。
 死せる勇者が英霊となって集う、神々の黄昏に備えた力だ。
 そう、ユアン・マルグスは一度死んだのだ。
 憤怒に燃える復讐鬼など、もういない……血涙の赤を纏った"吸血騎士"は死んだ。
 今

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朱き空のORDINARY WAR(29/32)

第29話「朱き空の竜神翼」

 揺れる機体が崩壊を始めた。
 既にエンジンは死んで、蜂の巣になったボディが破綻し始めている。ラステルを守るため、身を盾に割り込んだユアンの"レプンカムイ"は、煙と炎を引き連れ墜ちてゆく。
 否、飛んでゆく。
 降りるべき場所、仲間たちの待つ場所へ。
 アラートが鳴り響くコクピットの中で、ユアンはまだ飛んでいた。
 自分の意思を操縦で伝えて、死にゆく愛機に身も心も重ね

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朱き空のORDINARY WAR(28/32)

第28話「捨て得ぬものを得た男、捨てるもののない女」

 ユアンが死線を超えて飛ぶ空は、既に彼の支配下にあった。
 秘密結社フェンリルの飛行隊は、混乱から立ち直るまでに5機を失った。まるで死と破壊が連鎖するように、赤い翼が引き裂く空に炎が爆ぜる。
 特務艦ヴァルハラへの対艦攻撃が緩んで、その分だけ敵意はユアンへと集中した。
 だが、単機で自在に宙を舞うユアンは、混戦模様の空を朱に染めてゆく。

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朱き空のORDINARY WAR(27/32)

第27話「赤い悪魔の羽撃き」

 パイロットスーツに着替えたユアンを、再び激震が襲う。
 再度エンジンを全開にして、特務艦ヴァルハラは不規則な回避運動で海面を泡立て始めた。格納庫でその振動を感じつつも、至近弾の爆風にビリビリと艦体が震える。
 完全に先手を取られ、ユアンたちは空への道を閉ざされてしまった。
 近接防御戦闘の最中では、艦載機は発艦できない。
 秘密結社フェンリルの部隊は、潜水母艦から

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朱き空のORDINARY WAR(26/32)

第26話「痛みを止めて」

 耳に突き刺さる警報に、艦内の空気が張り詰めてゆく。
 ずぶ濡れのままでユアンは、仲間たちと上層の飛行甲板を目指した。こういう時はエレベーターを待つより、自分で走った方が早い。重々しい扉を蹴破るように押して、そとの非常階段へと躍り出る。
 そこには既に、手すりから身を乗り出す少女の姿があった。
 パジャマ姿でぬいぐるみを抱えているのは、ムツミだ。
 恐らく彼女も、突然の

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朱き空のORDINARY WAR(25/32)

第25話「休息の一時に濡れて」

 名も無き翼のシェイクダウンを仮想現実で行った後に、ユアンには懲罰が待っていた。
 エインヘリアル旅団も軍隊なれば、軍規は厳しい。
 女性主体の女系社会故に、適度に緩めつつメリハリは忘れないのだ。
 当然、艦長であるムツミを危機に晒したユアンには、罰が下される。
 それを皆は、罰ゲームだと笑うのだった。

「驚いた……本当に軍艦の中にこんなものが。悪い夢を見ている

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朱き空のORDINARY WAR(24/32)

第24話「名も無き翼に、力を」

 特務艦ヴァルハラはメルドリン市を出港し、再び外洋へと漕ぎ出していた。市民団体のボートに無言で睨まれる中、楽隊の演奏も市長の見送りもない船出……だが、誰も気にしてはいない。
 ムツミが言う通り、エインヘリアル旅団は死せる勇者の集い。
 いわば影の戦力、秘匿されて当然なのだ。
 人知れず秘密結社フェンリルを追い、危険な武力を武力で撃滅する。
 その誓いを新たにしたユ

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朱き空のORDINARY WAR(23/32)

第23話「無敵の笑顔で」

 特務艦ヴァルハラへと戻ったユアンを待っていたのは、喝采と歓声だった。
 ただし、自分へ向けられている訳ではない。
 艦内の食堂へ顔を出したラーズグリーズ小隊は、あっという間にクルーたちに囲まれてしまった。妙齢の女性から可憐な少女まで、皆が笑顔を輝かせて迫ってくる。
 やはり、ユアン以外の全員に迫って取り囲む。

「ナリアお姉様! さっき、ニュースの中継で見てました! 

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朱き空のORDINARY WAR(22/32)

第22話「翼が染め上げる空の色は?」

 長い夜が明け、出港準備中の特務艦ヴァルハラが動き出す。
 いまだ港に係留されたままだが、副長のロンはこれ以上の長居を危険だと判断していた。秘密結社フェンリルは、この国の協商軍はおろか、市民レベルにまで魔の手を伸ばし、侵食している。
 今も市民団体の声は、沖への航路を塞ぐようにボートの上で叫んでいた。
 現状でヴァルハラは身動きが取れず、艦長のムツミも重傷で

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朱き空のORDINARY WAR(21/32)

第21話「名も無き夜に」

 訪れた宵闇は、サーチライトの中に巨艦を浮かび上がらせる。
 今、特務艦ヴァルハラは首輪で繋がれた猟犬にも等しい。そして、周囲には野蛮な狩猟時代に忌避の感情を叫ぶ市民たちがいる。彼らのために害獣を狩り、平和な食卓に肉を並べるのが猟犬の仕事……その真実を知る者など、いない。
 闇夜で尚も声を張り上げる市民団体たちに、ユアンは甲板上から溜息を零した。

「我々メルドリン市民

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朱き空のORDINARY WAR(20/32)

第20話「償い贖うために」

 無事に特務艦ヴァルハラへと、ユアンは戻ってきた。
 彼を救ってくれたムツミは、すぐに艦内の医務室へと運び込まれる。救出部隊は待機していた班と合流し、引き続き艦の出入り口を固めるようだ。
 港に停泊するヴァルハラは今、一触即発の事態に直面していた。
 協商軍の基地でのテロと、何らかの関係があると思われているのだ。
 そしてそれは、事実でありながらも、隠された真実を語れ

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朱き空のORDINARY WAR(19/32)

第19話「漂白されてゆく空」

 妄念を乗せた翼が今、静かに舞い上がる。
 瞬間、戦場を支配する空気は戦慄に凍り付いた。
 全速力で逃げるヘリが、まるで牛歩の如き遅さに感じる。ユアンはただ、その中で揺られるしかない。ストレッチャーへ横たわるムツミの手を握ってやりながらも、震える彼女に自分の震えが重なった。
 ――"白亜の復讐姫"
 五十年戦争末期の混沌が生んだ、凄絶なまでに美しい死神。
 その血に

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朱き空のORDINARY WAR(18/32)

第18話「妄執は白く燃えて」

 ムツミを両手で抱えて、ユアンは走る。
 軍事基地などどこも似たような作りで、それは協約軍も協商軍も変わらない。なにより、ムツミの残した血痕が教えてくれる。それを追うユアンは、敵意への鋭敏な感覚だけは確かで、そこかしこで走り回る兵士たちをやり過ごす。
 優れた聴覚は遠くで、銃撃戦の音を聴いていた。
 恐らく、ムツミが手配した特務艦ヴァルハラの陸戦隊だろう。
 本来、

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朱き空のORDINARY WAR(17/32)

第17話「絆は鎖に、血は導に」

 監禁されたままでユアンは、死を覚悟した。
 そして、それを甘んじて受け入れる諦めを拒絶する。
 ドアのノックへと背を向けたエルベリーデの、その長い金髪を睨み付けて思考を巡らせる。今、ムツミが大胆にもこの基地に潜入してきた。確か、メルドリン市には協商軍の空軍基地があった筈だ。
 なにか、なにか手が……チャンスが残されていると信じる。
 諦めない限り、チャンスを作る

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