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やんばるアートフェスティバルのビジュアルの作り方

総合ディレクターの仲程長治さんからご指名を頂き、今回のビジュアルをチームで担当させて頂きました。今回はその裏話をしたいと思います。
デザインをどこまでするか、というデザインの話です。

まず、結論から書きますが、僕が思うデザイン(ビジュアルデザイン)とは、
「5:5」、モノが5、デザインが5というのが「いい状態(デザイン)」だと思っています。デザインが6でも、4でもダメです。

例えば、美味しくて決して清潔とは言えないよくある居酒屋のメニューが、デザインで整い過ぎていると、残念です。「そこにふさわしいデザイン」の正解はあり、それを考えていくと「5:5」なんじゃないかと思うのです。

もちろん、デザインが4でモノ(例えば居酒屋の様子)が6でもいいと思います。その場合は、皆さんも経験があると思いますが、「せっかく、美味しいのに(デザインがもう少しかっこよければいいのに)」とか、「なんで、この書体なんだろう」というアンバランスさを感じたりします。何度も書きますが、

デザインには「そこにふさわしいデザイン」があります。
デザインを投入すればいい、という話ではありません。デザインの投入次第で、満点になるバランスがある、ということです。

例えば、石川県に本社を置く「北陸製菓(現 hokka)のロングセラー商品「ビーバー」のデザインも担当しました。昔から続くパッケージデザインの「古臭くなった」部分を整えていく。このデザインを格好良くデザインしてしまうのは、正直、簡単です。しかし、しないのが、この商品に「ふさわしいデザイン」


デザインがいいと業績が上がると考えている人がいますが、僕はそれは違うと思います。よく「マーク(CI)を変えたことで、業績が上がった。さすが、有名な先生デザイナーに頼むとすごい」という人がいますが、デザインの力は半分くらいでしょう。残りはその企業の力、努力、製品力です。

つまり、モノのデザインも(当然)よくなければなりません。デザインでは補えるのは5くらい。それ以上補っても、ジリ貧に低迷していくだけです。それをデザインのせいにするメーカー側もいますが、それも間違いです。

意識のあるデザイン事務所は、依頼された企業をよく観察します。どこを観察するかというと「その企業の自立力」です。デザイナーが作ったデザインを「しっかり運用する意識があるか(運用経験がなくてもいいんです。その意識があれば)」です。デザインに頼ったり、活用する意識がないと、一新した当初は話題になったりメディアに取り上げられたりするでしょうが、デザインという他力にすがると、徐々に元気が無くなっていきます。自分ごとにしていないからです。

デザイナーに開発してもらったデザインは、納品されたと同時に依頼者のものになります。例えば「パッケージデザイン」をデザイナーにしてもらったとしても、そのパッケージデザインの話をしていても何にもなりません。当然ですが、自分たちで作っている「モノ」の説明をしやすくするためのデザインです。

京都の一保堂茶舗のパッケージデザインは素晴らしくユニークで、よくメディアの取材を受けるそうですが、その取材の「パッケージデザインはどなたのデザインですか?」には一切答えないそうです。理由は「それを一生懸命に答えても、自社のモノづくりのこだわりなどを説明していることにつながらない」からだそうです。

中身で勝負している、ということです。ステキなことです。

さて、ここから主催者側の許可も頂き、どうやって今回のビジュアルを作っていったかの裏舞台をご紹介します。

普通は舞台裏を見せるのは、素人っぽくて嫌なのですが、この行為も「やんばるアートフェスらしい」と思って書きます。何度も書きますが、「そこにふさわしいデザイン」への思いです。今回の「やんばるアートフェスティバル(以降 やんばるフェス)らしいデザイン」を見つけていく作業です。

まずは、2つのことから始めます。
一つ目は「これまでのデザインと意図を分析する」ことです。
僕らのことは置いておき、いいデザイン事務所は、この「分析力」があります。ここが間違っていると、結果も間違えます。
そして二つ目は「依頼者の今回の気持ちを分析する」です。もちろんどんなフェスにしたいか、していきたいか、収益目標は、などなどです。

これまでの6回のやんばるフェスのビジュアル

もちろん、今回の「やんばるフェス」にも「テーマ・コンセプト」はありますが、僕はそのあたりは意識はしますが、それ以上のものを探します。
「テーマ」に沿っただけだと、なんだか血が通わない気がするのです。もちろん「何を考えているか」という「テーマ」は重要です。いろんな人が参加するわけですから、それがないと「今回のやんばるフェスの方向性」がわからず、アーティストもスポンサーする企業も盛り上がりません。

僕は「コンセプト」というのがどうも好きではありません。企画書を書くのも苦手です。僕にデザインを依頼してくる人がいて、僕らデザイナーがいる。その間に「企業体」やら「世間」やら「収益性」やら「社会性」がある。そこに説明がつくためには「コンセプト」はあった方がやりやすいですが、もっと直球、直感で進めないと、いいデザイン、「そこにふさわしいデザイン」は出来上がらないと思っています。「コンセプト」はなくてはなりませんが、なんでもかんでも「そこに沿ってつじつま合わせをしていく」のは、なんだか気持ち悪いのです。

「コンセプト」は棚の上にあげておき、直感で依頼者と対話しながら作業を進めながら、チラッとたまに見るもの。僕にとって「コンセプト」とはそんな感じです。

さて、そんなヒヤリングでとても重要なキーワードを見つけました。
2つあります。

1つは
やんばるに来て欲しい。そのためのアートとフェス。

もう一つは
デザインで「やんばる」をイメージして欲しくない。
(僕の直訳は「デザイナーの勝手なイメージをやんばるに押し付けない」)

ここから「タタキ」のデザインを作っていきます。

デザインチームと自由に作っていく
沖縄に通う僕にとって「やっぱりヤンバルクイナ、来たか・・・」という感じ(笑)
イメージじゃなければ、リアルな写真かな、とか
文字で表してみる、とか・・・・・

もちろん、これらの他にもあり、また、もちろん、このプランは「やんばるフェス」側には見せていません。デザインチームと僕との対話です。僕の中には主催者側の答えのようなものがあり、デザイナーチームには、僕を通じて現れたキーワードからビジュアル化して「どうだ!!」「これはどうだ!」と、1000本ノックを繰り返します。そこから兆しが見えてきます。

僕の中にあるやんばるはもちろんですが、主催者側から発見したキーワードから、なんとなくですが、骨にあたるものを見つけ出していきます。

そして1案に絞っていきます。

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