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「週刊金曜日」(2024年2月16日号)に飯田朔『「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから』(集英社新書)の書評を書きました。

新しい批評だと感じました。

大学も就活も働くことも、しんどい。だから、抑圧に満ちた世界から〈おりる〉。そんな著者の実感から書かれる批評が射抜くのは、やたらと競争を強いる僕たちの社会です。生き抜くために競い合い、成長し続けることを称揚する世のなかの思考とは違った生き方はないのか。この閉塞感から逃れる思想を作れないか。そこから著者は映画作品を読み解きながら、自分に大切な思想を紡ぎます。

大きい言葉や、強度をがちがちに高めた言葉ではなく、地力で考えていることがわかる言葉遣いで書かれた文章。じぶんの実感を大事にして、そこから紡ぎ出される思考。誰かを救うための誠実な批評。読んでいて、心地よさすら覚える本です。最後の朝井リョウ読解は本書の白眉でしょう。

書評は最後、

憂鬱な社会で、歩く。その足取りは、本書に出会う前後で軽さが違う。とてもいい本だと感じた。

という文章で締めましたが、ここは、著者の文章へのオマージュとなっています。お読みいただければと思います。

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