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メール。 【#2000字のドラマ】

ポケベル、ピッチ、携帯、スマホ、これらの通信機器は10年単位で進歩してきた。

そして各々の時代で、恋愛を、青春を紡いできたとも言える。

「おはよ〜隆司(たかし)!」

隆司「おぅ、おはよ。杏は最近早く学校くるよね。この時間よく会う。」

杏「そ。大会近いから朝早くきて練習してんの。」

隆司「まだ大会ある人は良いねぇ。さすが県大会上位者。」

杏「まぁね、隆司は大会終わったのに、まだこんな早いの?もしかして、、」

隆司「俺は引退したけど、後輩たちと一緒に朝練参加させてもらってんの。」

杏「えっ、、、、、邪魔、、、じゃない?」

隆司「、、、やっぱ、そうかな?」

隆司と杏はお互い中学3年生。

隆司はスポーツ大好きで、勉強は全くダメ。朝には強く、夜にも強く、成長期なのにあまり寝てないせいか、身長が伸び悩んでいる典型的なスポーツ少年だ。

一方、杏はいわゆる才色兼備で勉強は学年で成績トップ、スポーツをさせれば、県で1、2を争う実力を持つ。特に得意競技の走り幅跳びで長い髪をなびかせながら飛ぶ彼女の姿はみな息を飲む。

隆司と杏、二人は幼馴染だ。

学校まで来たら長身のイケメンがこちらを見ている。

「あれ?隆司じゃん。こんな早くに来てんだ。」

隆司「おぉ。涼じゃん。お前も朝練?」

涼「そっ。杏に付き合ってな。」

隆司「えっ?お前ら付き合ってんの?」

杏「ちっ、、違うわよ!私より涼の方が飛ぶの上手いから、今日から協力してもらうの。」

涼「杏に言われたら、協力しない男いないよな〜。昨日メールもらった時はびっくりしたわ。」

杏「ごめんね!夜遅かったのに。来てくれてアリガト。」

涼「いや、杏が全国に行けるかどうかを手伝えるわけだから、いくらでも手伝うよ。頑張ろうぜ!」

杏「うん!」

涼は隆司のクラスメイトで、中学校に上がった時に別の小学校から入ってきた奴。1〜3年までずっと同じクラスで、性格も悪くないので良く絡む方だが、長身でイケメンでモテるが故に周りの男子からは一歩引き目で見られていた。

杏と同じ陸上部で、競技も同じ走り幅跳び。涼も県大会では上位の方だが、明らかに化け物クラスに抜け出ている強者がいるらしく、全国への勝ち上がりは諦めているようだ。そいつさえいなければ、全国に行ける記録を持っている。

杏「隆司、あんまり後輩に迷惑かけちゃダメだよ?じゃあね!」

隆司「分かってるよ、、、」

薄々気付いてた。自分もそうだったから。

隆司はこの日を期に、朝練に顔を出すのをやめた。

ー3日後の夜ー

ヴヴヴッ(メールを受信しました。)

隆司「ん?杏から?」

杏からメールがくるのは久しぶりだった。

From杏:朝練やめたんだね。なんか、ごめんね😭

隆司「ははっ。気にしてんのか。」

隆司は「別に良いよ。自分の時もそうだったのに気付けたわ。むしろ有難う。」と返した。

ヴヴヴッ(メールを受信しました。)

From杏:うぅ😭 あとちょっと相談があってメールさせて頂きましたm(_ _)m

From隆司:気にすんなって笑 どうしたん?

From杏:、、涼に告白されまして(_ _)

From隆司:えっ!そうなん😯 ん?で?杏の気味ちは?

From杏:、、それを悩んでて。涼は良い人だし、特に嫌いなところはないんだけど。

From隆司:そっか。じゃあ決まりじゃない?

From杏:う〜ん。、、隆司は最近好きな人いるの?佳奈ちゃんとか?よく喋ってるよね。

From隆司:佳奈は良いやつだけど、好きとかそうゆう感じじゃないな。

From杏:ふーん。違うんだ。じゃあ好きな人いないの?

From隆司:いや、いるよ!教えないけど。

〜♪

着信:杏

隆司「なんだよ。こんな遅くに。」

杏「ねぇ好きな人って誰なの?!教えてよ!」

隆司「え〜やだよ。言わねぇよ。」

杏「気になるわぁ〜!大会明後日なのに寝れないじゃん!」

隆司「それは涼に告られたからだろ。俺のせいではない」

杏「、、、イニシャルだけでも、、?」

隆司「いや、、分かっちゃうから。」

杏「分かり易いアルファベットって事ね?!え〜誰だろ?誰?!気になるわぁ」

(杏の母)「杏!!うるさいわよ!早く寝なさい!!携帯取り上げるよ!」

杏「やばっ、じゃあまたメールするね!」

隆司「おう。」

それから隆司は杏からのメールを待っていたが、一向にメールがこなかった。

ー翌日学校にてー

杏「隆司〜寝れなかったじゃん。」

隆司「一応待ってたんだけど、携帯取り上げられたの?笑」

杏「そう。ねぇ、誰なの?!」

隆司「言わねぇよ!なんでそんなに気になるんだよ?」

杏「だって、、、」

キーンコーンカーンコーン。始業のチャイムが鳴った。

隆司「やっべ!じゃあ、明日大会頑張れよ!」

杏「隆司のせいで頑張れない!!」

隆司「えっ、、、」

杏と隆司は各々教室に向かった。

隆司(杏、、、)

ーその日の夜ー

ヴヴヴッ(メールを受信しました。)

From杏:で、誰なの?

From隆司:、、、涼とはどうなったんだよ。

From杏:、、大会終わってから答え出すって言った。

From隆司:そっか。

From杏:で、イニシャルは?

あまりのしつこさに隆司は観念した。

From隆司:しつこいな〜、、、A.Aだよ。

From杏:、、、私?

「阿部 杏」が杏の本名だ。そんなイニシャルの女子も学校に一人しかいない。

From隆司:そうだよ。対して嬉しくないだろ。でも俺は杏が好きなんだ。

隆司は内心どきどきだった。フラれたら避けられてしまうとも思ってた。しかし、もう時は戻らない。

From杏:ううん、めちゃくちゃ嬉しい。私も隆司が好きだよ。大好き。

隆司の告白は成功した。

こうして青春の1ページがまだ創り上げられてゆく。

こうした現代ツールの使い方も悪くはないだろう。





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