見出し画像

総合的な学習の時間〜教員7年目の考察〜 3 探究のプロセス編


1 はじめに

「総合的な学習の時間(以下総合)って正直、しんどくないですか?」

と聞かれれば、みなさんどのように答えますか?
もし、教員1〜3年目くらいの私が答えるとなると

「・・・はい。」

涙目で答えると思います。

その最たる原因は、何をすればいいのか分からなかったからです。


特に初任の頃は全く何をすればいいか分からず、

週に2回ある総合が怖くて仕方ありませんでした。


初任指導の先生に、
「今週の総合で何をすればいいかわかりません。
 どうしたらいいですか?」
半泣きで聞きにいっていたくらいです。


今考えてみると、

全体像が見えていなかったことが

1番の原因だっと思います。

その当時の私は、総合の全体像を

①体験に行く

②体験したことを劇などで発表する

③ふりかえりをする

としか認識していませんでした。
簡単にいうと、

まあ、前年度と同じようなところに体験に行って発表会をするもの

だと思っていました。

しかし、そうではなくちゃんとした「全体像」があったのです。

全体像がある程度わかっていれば、初任の頃にもあんなに総合を恐れずに済んだのかも知れません。

総合の基本的な進め方、「探究のプロセス」について今回は書こうと思います。


2 「探究のプロセス」の正体

総合の単元をデザインするときに、「探究のプロセス」を知っていると、ハードルがグググっと下がります。

その正体をずばり書くと 

①課題の設定
②情報の収集
③整理・分析
④まとめ・表現
⑤振り返り

という基本的な学習の流れ。

となります。

学習指導要領解説には、

総合的な学習の時間における学習では, 問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく。

『学習指導要領解説 総合的な学習の時間』,2019,文部科学省

これを探究的な学習と呼ぶと明記されています。

探究的な学習をする時間が総合の時間です。

探究的な学習の過程(探究のプロセス)も学習指導要領解説で詳しく説明されています。

探究のプロセスは、この図で表されることが多いです。

つまり、


①課題の設定
②情報の収集
③整理・分析
④まとめ・表現
⑤振り返り

①'課題の再設定
②'情報の収集
③'整理・分析
④'まとめ・表現
  ・
  ・
  ・
と繰り返されていくもので、

という基本的に、この学習の流れ(プロセス)で進めていれば、探究的な学習になりますよ。

という道標のようなものです。


このように繰り返されていく過程を「探究のプロセス」と呼びます。  

指導要領解説には、このように書かれています。

児童は、
①日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて、自ら課題を見付け
②そこにある具体的な問題について情報を収集し、
③その情報を整理・分析したり、知識や技能に結び付けたり、考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み、
④明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し、
そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。
要するに探究的な学習とは、物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営みのことである。

『学習指導要領解説 総合的な学習の時間』,2019,文部科学省

この「探究のプロセス」のひとつ一つについては、また違う記事で詳しく触れるとして、今回は、私が考える「探究のサイクル」の良さについて書いていきます。


3 「探究のプロセス」って何がいいの?


 なんだか、全体像が見えてきたような、余計にややこしくなったような…。
 という感じでしょうか。

 ここらかは、探究のプロセスがあることでよかったなあと思うことを挙げていきます。

 よさ1 授業者が、見通しをもつことができる。

私にとってはこれが最も大切な利点でした。

教科書も指導書もない、この総合という授業。

初任の頃の総合は、

灯りを持たずに、夜の暗い森の中に入っていくようなものでした。

真っ暗でした。

地図もありません。

ゴール(目的)もわかりません。

一歩先の道もわかりません。

そんな暗闇を照らライトの役割をしてくれたり、「こっちだよー」と目標の看板になってくれたりするのが、この「探求のプロセス」でした。

探究のサイクルという言葉に出会ったときは、難しさももちろんありましたが、

それ以上に「こうしておけばひとまずOKなんだ。」と安心することができました。

頼りになる道筋があるかないかで、私の気持ちは大きく変わりました。

 よさ2 子どもたちも、見通しをもつことができる。

教師が見通しをもつことができれば、子どもたちも見通しをもちやすくなります。

教科書がないので子どもたちも、次どのように進めればいいのかがわかりません。

教師よりもわかりません。

しかし、子どもたちが見通しがもてないとまずいのがこの総合という授業です。

なぜなら、「自分たちで見つけた課題を、自分たちで調べ、解決して表現していく」ことが総合だからです。

教師が教えるというよりも、

課題について、教師と子どもたちが同じ方向を向いて、一緒に進めていくというイメージです。

ですから、常に子どもたちと見通しを共有しておくことが大切です。

子どもたちはまだ未熟で、見通しを常に持ち続けておくことが難しいからです。

しかし、子どもたちが自分たちで見通しをもてると、出てくる意見に現実味が増してきます。

情報の収集の行き先を決めるときには、
「〇〇に行きたいけど、季節的に外れているから、△△の方がいいかなあ。」

まとめ・表現の手段を決めるときには
Aさん
「大きくポスターを作りたいけれど、ポスターは持って帰ってもらえないから、ポスターとチラシを作りたい。でも制作の時間が足りたりないなあ。」
Bさん
「じゃあ、ポスターを大きく作って、それを小さく縮小してチラシにすればいいと思うよ。」

などと、いついつまでにこれを完了する見通しが共有されていると子どもたちの中にも、タイムリミットが設定されてそれ向けてできることを選ぶようになります。

見通しを立てるための基本的な学習の流れが「探究のプロセス」です。
「探究のプロセス」に則って計画を立てると比較的簡単に見通しを共有することができます。

 よさ3 プロセスを多少崩しても良い。

基本的には、

①課題の設定

②情報の収集

③整理・分析

④まとめ・表現

の順番ですすめていきますが、必ずしもこうでなくてはいけないという決まりはありません。

学習指導要領解説にもこのように書かれています。

この①②③④の過程を固定的に捉える必要はない。
物事の本質を探って見極めようとするとき、活動の順序が入れ替わったり、ある活動が重点的に行われたりすることは,当然起こり得ることだからである。

実際に総合をやっていると

情報の収集で2箇所に体験に行く計画を立てたとします。

しかし、2週間の間が空いてしまいました。

その間は、体験はどうしても時数が多くなるので調整のために、別の授業に当ててもいいです。

しかし、おすすめは、

忘れないうちに、整理・分析をして意見をある程度見やすく整理しておくことです。

1箇所目の情報が整理できて、2箇所に行くと観点が整理されているので、体験から得られる情報の質も上がります。

他のにも学習指導要領解説には、

①課題の設定

②情報の収集

③整理・分析

④情報の収集

④まとめ・表現


と、整理・分析をして、どうしてももう一度インタビューしたいとなれば、もう一度情報の収集を入れるのもいいとされています。 

ですから、

「探究のプロセス」の順番じゃないといけない

でなはく

あくまで基本的な学習の流れの一例に過ぎないので、

子どもたちや地域の実態に合わせてカスタマイズしてください。



4 終わりに

中々長い記事になってしまいました。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

「探究のプロセス」という言葉に出会ったのは4年目でした。
この流れが、全くわかっていなかった初任からの3年間の総合は本当に苦しいものでした。
しかし、「総合にも教科書的な道標があるんだ」と思えると、少しずつですが、子どもたちと一緒に進めることができる用になっていきました。
実際は、大いに泥臭く、たくさん悩みながらでしたが、初任の頃とは違うしんどさでした。
初任の頃は、「次どうすればいいの、、、(困惑)
でしたが、
知ってからは、「次は整理・分析は、どのように進めような」
と解像度がかなり上がりました。

さて「探究のプロセス」の次は、いよいよ単元デザインに話を進めようと思います。
いきなり、①課題の設定ではなく、「4月にこれしておいて〜」というのがあるので、それを書きたいと思います。

お読みくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?